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万華鏡

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第三話 部活その五


 先輩達は琴乃の前でだ。今度はこう言ったのだった。
「月宮さんよね」
「はい、月宮琴乃です」
 琴乃も自分の名前も言って答える。
「宜しくお願いします」
「貴女の発声ちょっと荒削りだけれどね」
 だがそれでもだというのだった。先輩達は。
「元気がいいわね」
「それに体力もあるわね」
「ランニングの時も元気だったし」
「何かスポーツしてたの?」
「バスケットボールしてました」
 中学の時の部活のことをだ。琴乃は話した。
「一年の頃からずっと」
「ああ、それでなのね」
「それで体力あるのね」
 琴乃自身の話を聞いてだ。先輩達も納得した。
「それでなのね。動きにもバネあるし」
「リズム感もあるわね」
 琴乃につてもこう話していく先輩達だった。
「じゃあ貴女はもうちょっとスマートな発声にしてね」
「後はどんどん頑張って」
 そうしろというのだった。
「やっぱり体力が第一だからね」
「やり過ぎにも気をつけながらね」
「やり過ぎにもですか」
「そう。気をつけてね」
「やり過ぎると喉を痛めるからね」
「だから気をつけてね」
「その辺りはね」
 先輩達はその観点から琴乃に注意もした。
「怪我しない為にも」
「いいわね」
「わかりました」
 琴乃は素直に頷いて返した。
「そのことは」
「貴女ギター兼ヴォーカルでしょ」
 先輩達はもうこのことを知っていた。
「だったら余計によ。喉には気をつけてね」
「利き腕もよ」
 それもだというのだ。
「ギターを使う手もね」
「気をつけてね」
「はい」
 先輩達のその言葉に頷く。そうしてだった。
 バンドの練習の中でだ。こう他の四人に言うのだった。楽器の演奏の打ち合わせの時間も用意されているのだ。
 その中でだ。こう言ったのである。
「喉に気をつけろってね」
「喉ね。やっぱりね」
 景子がそれを聞いて言う。その手にギターを持ったままで。
「ヴォーカルはやっぱりね」
「喉なのね」
「喉が潰れたらね」
「それで終わりよね」
「終わりじゃないけれど」
 だがそれでもだとは言うのだった。
「危ないわよ」
「やっぱりそうなのね」
「そう。歌手は喉が命だから」
 プロなら商売道具だ。それだというのだ。
「琴乃ちゃんも気をつけてね」
「あまり歌い過ぎない様に?」
「それもあるけれど」
 無理な練習は禁物だというのだ。オーバーワーウにはだ。
「あと声域に合わない歌を歌うのも」
「声域?」
「そう。声にはそれぞれ高さがあるでしょ」
「あっ、そういえば」
「ソプラノとかは習ったわよね。小学校の授業で」
「そういえば何か」
 その授業を思い出しながらだ。琴乃も応える。
「言われたわ」
「一応覚えてるのね」
「うん。ソプラノは確か」
 自分のギターを指で動かしながらだ。琴乃は景子に話す。今五人はそれぞれの楽器にスタンバイしながら囲んで話をしているのだ。 
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