万華鏡
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第一話 五人その八
「バンドの名前は」
「ううんと。それは」
「バンドを組んでもいいけれど」
それでもだとだ。彩夏は言うのだった。
「問題はそのグループ名ね」
「そういえば」
「グループ名も決めないと駄目だから」
彩夏はまた里香に言った。
「どういった名前がいいかしら」
「格好いい名前がいいんじゃない?」
最初に言ったのは琴乃だった。
「そうした感じで」
「格好いいグループ名?」
「うん。イギリスみたいな感じでね」
琴乃は彩夏に対してにこりとした笑顔で話す。
「そうね。ビートルジュースとか」
「何かそういう名前の映画だったわね」
「こう言う名前どうかしら」
「ううん。悪くはないけれど」
それでもだとだ。彩夏は首を捻りながら琴乃に返した。
「何か違わない?」
「違うの?」
「女の子のグループらしい名前じゃないっていうか」
「女の子らしくない?」
「そう思うけれど」
彩夏はこう言うのだった。
「私はね」
「そうかしら」
「ネーミングセンス自体は悪くないけれど」
琴乃のそうしたセンスは認めた。いいとだ。
「その名前はね」
「よくないの」
「男の子のグループの感じじゃないかしら」
そのだ。ビートルジュースという名前はだというのだ。
「だからね」
「別の名前?」
「それにしない?他に何かある?」
「ううん、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「何か私達の名字って」
琴乃が次に言うのはこのことだった。
「月に水に」
「月に水?」
「それに火に木に金じゃない」
「曜日ね」
「うん、一週間のうち五つじゃない」
それだというのだ。
「かといってもウィークじゃね」
「ぱっとしない感じよね」
「うん。だからね」
琴乃はさらに言う。
「これは私も却下で」
「そうね。私もそれがいいと思うわ」
今は彩夏が琴乃の相談役だった。
「その名前もね」
「却下ってことで」
「けれど。私達の名前ね」
「五つね。それでだけれど」
「星じゃないの?」
景子が言った。
「私達の名前って」
「そういえばそうね」
「星にしたらどうかしら」
景子はこう琴乃に話す。
「星にね」
「星って?」
「そう。何かこのままだと」
「ううん。しっくりいかないから」
「そう。琴乃ちゃんのセンス自体はいいわ」
景子も琴乃のネーミングセンスは認める。
「けれどね」
「それでもよね」
「そう。合う名前と合わない名前があるから」
「バンド一つでも」
「私達に合う名前があるわ」
「だとすればどんなのがいいかしら」
琴乃は首を捻りながら話していく。
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