| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十四話 成果その二


「今一つ点が取れないのよ」
「そうなの」
「何か地形とか地名が覚えにくくて」
 それでだというのだ。
「苦手なのよ」
「あっ、地理の覚え方もコツがあるから」
「じゃあそのコツ教えてね」
「うん、わかったわ」
「地理とか世界史ね」
 景子は世界史も話に出した。
「日本史もだけれど」
「社会科駄目なのね」
「哲学とか政治経済はそれ程じゃないけれど」
 そうした暗記が特に重要な科目はだというのだ。
「暗記だけって何か苦手なのよね」
「それじゃあ今度ね」
「お願いね」
 二人は笑顔で約束した。そして。
 今度は美優が琴乃に言った。
「まあ琴乃ちゃん元々頭悪くないよな」
「そうかな」
「だってよ。数学確かによくなくてもな」
 それでもだというのだ。
「赤点じゃなかったしな」
「うん、中学でも成績は三だったよ」
「五段階でだよな」
「うん、なかったから」
 そこまで悪くなかったというのだ。実際琴乃は成績は五段階で二を取ったことはない、これはどの教科でも同じだ。
「小学校の時からね」
「三だったらな」
「問題ない?」
「補習二からだからな」
 それでだというのだ。
「あたしも補習は受けたことないけれどな」
「美優ちゃんもなの」
「ああ、あたし今回のテストは平均七十五だったよ」
「私もよ」
 彩夏も言ってきた。
「補習とかはね」
「受けてないよな」
「うん、ないよ」
 彩夏は美優の言葉を聞いて頷いて言った。
「そういうのはね。一度も」
「追試受けなかったら全然いいだろ」
「そうなのね。とりあえず私補習まではいってないから」
 琴乃は走りながら少し俯いて言った。
「じゃあいいのね」
「いいだろ。ただな」
「ただって?」
「琴乃ちゃんもっと成績あげたいか?」
「ううん、数学の成績あがったし」
 このことにかなり満足しているのは事実だ。かなり満ち足りた気持ちだ。
「大学に入られたら」
「それでいいんだな」
「うん、そう思ってるけれど」
「じゃあいいんじゃないか?」
 美優はこう言う琴乃に返した。
「琴乃ちゃんがいいっていうんならな」
「志望大学は前も言ったけれど」
「八条大学の語学部英語学科だよな」
「うん、そこよ」
「そこに入られたらか」
「いいけれど。ただあの学科の偏差値も調べないと」
「この学校で平均点七十五だと大丈夫よ」
 今琴乃に言ってたのは彩夏だった。
「安心していいわよ」
「そうなの」
「私も八条大学志望してるけれど」
 行きたい大学は彩夏も一緒だった。
「文学部志望なのよ」
「彩夏ちゃんはそこなの」
「日本文学科ね」
 彩夏の志望はそこだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧