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万華鏡

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プレリュードその十一


「使ったことないけれど。ただお家にはピアノがあって」
「あっ、里香ちゃんのお家ピアノあるの」
「お母さんがピアノの先生なの。大学のね」
「八条大学とか?」
「そこの音楽部のね」
 里香は自分の母親の仕事のことも話した。
「先生だからピアノがあるの」
「じゃあ里香ちゃんもピアノするの?」
「時々遊びでね。してるわ」
「ふうん、そうなの」
「けれどバンドはね」
 それはだ。どうかというのだ。
「知らないのよ。音楽は聴いてもね」
「あたしもだよ」
 里香は自信のない顔で言うとだ。新入生が笑顔で言ってきた。
「バンドの経験はないさ。けれどないならないでね」
「やってみるの?」
「最初から」
「誰でも最初は初心者だしね」
 にこりと笑ってだ。彼女はこう二人に話す。
「思いきってやってみるよ」
「ううん、凄いわね」
「凄くないって。ただの空元気さ」
「けれど凄いわ。じゃあ」
「ええ、そうね」
 琴乃の言葉に里香も頷く。それでだった。
 二人はだ。こう決めたのだった。
「バンドね」
「それしてみましょう」
「じゃあ三人で行くか。ああ、そういえばあたしの名前言ってなかったよな」
 新入生は今度は明るい笑顔になって二人に言ってきた。
「あたしは木山美優。宜しくね」
「木山さん?」
「木山さんっていうのね」
「ああ、美優でいいよ」
 この少女美優もだ。笑顔でこう言うのだった。
「気軽にね。堅苦しいのは苦手だからね」
「じゃあ美優ちゃん?」
「そう呼んでいいのね」
「そう呼んでくれよ。じゃああんた達の名前も教えてくれるかな」
「ええ、私は月宮琴乃」
「水木里香よ」
 二人も美優に自分達の名前を言った。こうして三人はお互いの名前を覚え合った。そのうえでだ。
 バンドを探した。するとだった。 
 すぐに目の前にバンド、女五人のそれを見た。その演奏の横にだ。
 丁度勧誘用の席があり男子生徒、先輩が一人いた。そこには軽音楽部とある。
 その先輩にだ。琴乃が三人を代表して言った。
「あの、いいですか?」
「ああ、うちの部に入りたいのかな」
「はい。それでこの部活バンドやってますよね」
「そうだよ。バンドをやるのは軽音楽部だよ」
「そうですか。じゃあ私達三人入部ということで」
「いいよ。それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
 琴乃は先輩のその言葉に頷いてだ。それからだった。
 里香と美優と一緒に入部届を書いた。先輩はそれを受け取って言うのだった。
「じゃあ今日の放課後早速ね」
「顔合わせですね」
「うん、それがあるから」
 先輩は笑顔で琴乃に話す。
「宜しくね」
「わかりました。ぞれじゃあ」
「初心者大歓迎だし」
 先輩は琴乃にこのことも話してきた。
「わからないこと言ったら何でも聞いてよ。ただね」
「ただ?」
「俺もう彼女いるから告白とかは受け付けてないから」
「先輩彼女おられるんですか」 
 まだ名前も知らない先輩にだ。琴乃はその目をしばたかせて尋ねた。
「そうなんですか」
「そうなんだ。実はね」 
 先輩は笑顔で琴乃だけでなく里香と美優にも話す。 
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