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八条学園怪異譚

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第四話 ターニングポイントその九


「だから幽霊もね」
「いるのね」
「私はそう思うけれどね。それでね」
「それでって?」
「愛実ちゃんはどうしたいの?」
 愛実の目を見てだ。聖花は問うてきた。その問う言葉は。
「その水産科の海軍の人の幽霊をどうしたいの?」
「どうしたいのって?」
「だから。いるかどうか確かめたいとかしたいの?」
「ええと。実は」
 そう言われるとだ。愛実はというと。
 首を傾げさせてからだ。こう言ったのだった。
「そこまで考えてなかったけれど」
「どうだったの」
「幽霊がいるんだったら」
 愛実は少し怯えた感じの顔になってこう言った。
「いるかどうか確かめたいかなって思うけれど」
「好奇心ね」
「うん、それもあるから」 
 実際に愛実の中にはそれがあった。このことは否定できなかった。
 だがそれでもだ。愛実はこうも言うのだった。
「ただね」
「ただって?」
「幽霊よね」
 だからだとだ。愛実は眉を曇らせ怯えた顔でこう聖花に言ったのだった。
「それってつまりは」
「怖いの?」
「取り憑かれたら大変じゃない」
 だからだというのだ。その怯えた顔での言葉だった。
「しかも短剣持ってるみたいだし」
「それで斬ってくるとか?」
「昔の兵隊さんだから刀も出しそうじゃない?」
 今度はそれを言うのだった。日本軍のイメージはやはりそれになる。実際によく持っていたかどうかは別でイメージだ。
「だからね」
「斬られるか心配なのね」
「そうならないかしら」
 愛実は真剣にその場合を心配していた。
「首をばっさりとか」
「それじゃあホラー映画じゃない」
「そうならないかしら」
「ううん。いるかどうかこの目で確かめたくても?」
「そう、それでもね」
 怖いというのだ。どうしてもだ。
 愛実はこう言う。その彼女にだ。
 聖花はそっと言った。
「一人だと凄い怖いわよね」
「ええ、どうしてもね」
 愛実は極端ではないが普通の女子高生位に怖がりだ。だから今も幽霊を怖がっているのである。だがだった。
 聖花がその愛実にこう言ったのである。
「じゃあ私も行くから」
「聖花ちゃんも?」
「そう。私も一緒に行っていい?」
「水産科の兵隊さんを見に行くの?」
「そうしようと思ってるけれど」 
「けれど。刀持ってるから」
 愛実は何時の間にかその幽霊が刀を持っていると決めていた。そのうえで聖花に対して話したのである。
「無茶苦茶危ないわよ」
「首をばっさりね」
「日本軍って一回の戦いで百人斬ったんでしょ?敵軍に踊り込んで」
 愛実は怯える顔でこんな話も出した。
「それで柔道で百万人殺したとか」
「それどっちも有り得ないわよ」
「えっ、そうなの?」
「日本刀で百人も斬れないから」
 実際はそうである。一人か二人斬られればいい位だ。
「それに柔道で百万人殺すって」
「無理?」
「特撮とかアニメの主人公じゃないから」
 少なくともそこまで達している話だ。 
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