髑髏天使
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第五十六話 使長その八
「そういう人だからな」
「しかも何歳だった?」
「百歳だろ?」
「あれっ、百八じゃなかったか?」
「百十五だろ」
博士の年齢はだ。実は誰も知らないのだった。
「第一次世界大戦の頃は生きていたんだっけ」
「日露戦争その目で見たんじゃなかったか?」
「日韓併合の時ソウルにいたって聞いたぞ」
最早百年以上前の話だ。日韓併合という神武開闢以来の失政、第二次世界大戦ですらそれと比べたら些細な過ちでしかないそれからもう百年なのだ。
「実際の年齢もわからないからな」
「怪人って思ってたからな」
「いや、リアルで怪人だろ」
「そうだろ」
「だからな」
その怪しさがだ。原因であったのだ。
「博士のことってな」
「幾つかわからないってせいでな」
「何者かすらな」
「だからなあ。ちょっとな」
「怖かったんだよ」
博士のそうしたことがだ。博士自身を誤解させていたのだ。
しかしだ。それがなのだった。
「いざ御会いしてみたらな」
「それが全然違うからな」
「そうそう。気さくでな」
「色々と教えてくれるしな」
「生徒にも礼儀正しいしな」
「いい人だよ」
博士の人間性についてはだ。肯定的であった。
「だからな。研究室行くのもな」
「いいよな」
「お菓子だけじゃないしな」
「博士自身もな」
「行くといい」
牧村はその彼等にまた告げた。
「博士も喜んでくれる」
「ああ。何かいつも変な面々一緒にいるけれどな」
「ありゃ小学生か?」
「博士のお孫さんじゃないのか?」
「曾孫だろ」
「いや、やしゃ孫だろ」
とりあえず妖怪達はだ。上手く化けていたのである。
「何か育児所みたいな研究室だよな」
「そんな感じにもなってるよな」
「ちょっとな」
そんなことも話される。
「アットホームっていうのか?」
「秘書の人も奇麗だしな」
「だよな、あの人も」
「何ていったっけ」
今度はろく子の話になる。ただし誰も彼女が妖怪だとは知らない。
「ええと、ろく子さんか?」
「変わった名前だよな」
「美人さんだけれどな」
「何か前はうちの学生さんで?」
「博士のお孫さんの一人だったってか?」
「そうだったか?」
社会的にはそうなっているらしい。牧村もはじめて知ったことだ。
「あの人にも会えるしな」
「それ考えたらな」
「やっぱりいいよな」
「博士のところに行くのな」
「本当だよな」
「いいのか」
ここでだ。牧村はこう言ったのだった。
しかしだ。友人達はだ。その彼にむっとした顔でこう返したのである。
「御前にはわからないよ」
「そうだよ、彼女持ちにはな」
「絶対にわからないよ」
「こんな話はな」
「俺は別にだ」
だが、だ。また言う彼だった。
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