髑髏天使
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第五十三話 怪地その六
「身体中カビだらけになるんだ」
「やはりそうか」
「うん、それわかったんだ」
「カビが生えるまではわからなかった」
「けれど何かあるのは」
「それはわかった」
そうだったというのである。
「察した」
「凄いね、その勘は」
「妖怪は楽しむものだな」
「そうだよ。それはもうよくわかってくれてるし」
「それだ。それでだ」
また言う牧村だった。
「それでだ。その豆腐が楽しみで差し出したならば」
「絶対に何かあるっていうんだね」
「毒はあるとは思わなかった」
それはなかったというのだ。
「だがそれでもだ」
「うん、毒は無いけれどね」
豆腐小僧もそれは保証する。
「けれど。そういうことだから」
「仕掛けてあったか」
「その通りだったんだ。豆腐小僧はそうしてカビだらけになるのを見て楽しむんだ」
「悪戯か」
「別に悪質な悪戯じゃないよね」
そのことは牧村にも確認した。
「そうでしょ、別に」
「いや、カビだな」
「うん、カビだよ」
「結構悪質だと思うが」
牧村は実際に彼にこう言った。
「後で始末が大変だからな」
「ああ、お風呂で身体を拭けばそれで落ちるから」
それだけでだというのだ。妖怪は笑いながらこう話した。
「それか乾燥させたらね」
「それだけで終わりか」
「別にインキンとかタムシにはならないから」
その心配はないというのである。
「だからね。安心していいよ」
「そうか。それならな」
「特に悪質じゃないでしょ」
「インキンやタムシにかかったことはない」
牧村はだ。その経験はなかった。
「だが辛いらしいな」
「水虫もそうらしいのう」
博士はこの病気の話もしてきた。
「昔よく聞いたわ」
「昔か」
「そうじゃ。軍隊では付きものじゃからな」
それでだというのだ。とにかく軍においてはインキンに水虫は付きものである。それからはどうしても離れられない組織なのである。
「特に海軍さんはそうじゃった」
「今で言う海自だな」
「海自さんもそうらしいがのう」
結局名前だけ変わっても働く場所は変わらない。それではだった。
「インキンに水虫はじゃ」
「切っても切れない縁にあるか」
「職業病じゃ」
そこまで至るというのだ。
「あそこではな」
「そうだったのか」
「だから自衛隊も自衛隊で大変なのじゃ」
また言う博士だった。
「痒さとの勝負じゃ」
「僕そこまでしないから」
豆腐小僧がここでまた言った。
「インキンなんて酷い病気にはさせないから」
「それはか」
「うん、ただカビだらけにするだけ」
まさにそれだけだというのである。
「そんなのになったら大変だよ」
「そうそう。三年苦しむってね」
「そこまでいくからね、インキンと水虫ってね」
「本当にね」
妖怪達もそれを話す。
「タチ悪い病気だからねえ」
「本当にね」
「あれの特効薬を作ればじゃ」
ここでまた話す博士だった。
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