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ヘタリア大帝国

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TURN53 ハワイの戦いその九

 両軍は砲撃をはじめた。先陣に来ていたフィリピンが命じる。
「あの敵の先頭を狙おう!」
「ヴィクトリーですね!」
「あの艦を!」
「そう、集中攻撃だ!」
 明らかにネルソンが指揮官だった。フィリピンはそれを見抜いたのだ。
 そうした意味で彼の判断は妥当だった。彼はビーム攻撃はヴィクトリーを重点に行なうことにした。
「敵の頭を潰せば」
「今度は向こうがですね」
「向こうがその番ですね」
「指揮系統が乱れる」
 そうなってしまった軍程脆いものはない。それで一気にだというのだ。
「一斉砲撃、それから水雷攻撃も仕掛けて」
「それでイザベラ提督と機動部隊の仇を討ちましょう」
「絶対に」
「そうしよう。何としてもね」
 フィリピンは太平洋軍の先頭にいるヴィクトリーを見据えていた。そしてそのうえでだった。
 その攻撃を集中させる。無数の光の矢がヴィクトリーに突き刺さる。だが。
 それは全て弾かれる。弾かれあえなく消え去っていく。フィリピンもそれを見てすぐに気付いた。
「くっ、バリアか!」
「それもかなり強力です」
「我々のビーム攻撃を無効化しています」
 戦艦の大出力のその砲撃すらだった。
「ただバリア艦を置いているだけではないですね」
「あれは」
「攻撃はヴィクトリーに専念させて」
 そのうえでだったのだ。
「防御はバリアで完全に固める」
「そうしてきましたか」
「日本は」
「考えたものだよ」
 フィリピンは思わず感嘆の言葉さえ漏らした。
「ビームでも備えてくるなんてね」
「見れば敵にはバリアを装備している戦艦もありますね」
「通常戦艦の他に」
「うん、こうしたことも読んでいたね」
 ガメリカ軍のビーム攻撃の強力さも考慮してのことだった。ガメリカ軍の最初の攻撃は彼等の予想よりも遥かに低い結果に終わった。 
 今度は太平洋軍だった。ネルソンは部下達に対して言う。
「よし、それならだ」
「はい、反撃ですね」
「今からですね」
「そうだ。ビーム攻撃だ」
 彼等のそれをするというのだ。
「既に攻撃目標は定めているな」
「既に」
「定めています」
「よし、それならだ」
 それならと言ってそうしてだった。
 ネルソンのヴィクトリーも他の戦艦達も主砲の照準を完全に定めて攻撃を放つ。ガメリカ軍の戦艦達は次々に光の矢を受ける。
 今度は戦艦達が炎をあげる。そしてその中では。
 フィリピンの乗艦も炎をあげていた。それでだった。
 フィリピンは苦い顔でこう将兵達に言った。
「ううん、この状況は」
「まだ艦は動きますが」
「どうされますか?」
「やれるだけやるかな」
 フィリピンにもいつもの軽さはない。警報音が鳴り響く艦橋の中で言う。
「ここはね」
「はい、それではここは」
「最後の最後まで、ですね」
「戦おう。まだ負けた訳じゃないからね」
「では陣形を再編成して」
「そのうえで」
 将兵達も頷く。こうしてだった。
 フィリピンは先陣を指揮し続けミサイル、そして水雷攻撃にあたる。ミサイル攻撃からはキャロルとアメリカも予備戦力を全て前線に出し全軍であたった。
「もうね、悠長なことは言っていられないわ」
「そうだな。ここはな」
 アメリカも強い顔でキャロルの言葉に頷く。
 
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