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学園黙示録 Highschool Of The Dead ~壊れた世界と紅の狼~

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壊れていく世界と壊していく狼

~真紅狼side~
下では、今、女子四人が仲良く風呂に入ってる。


「今こそ、お約束の時だ!! 勇者小室、蒼騎よ!!」
「平野、お前が逝って来い」←俺
「俺はまだ死にたくない」←孝


俺達の反応は、全くもって正反対だった。
でも、まだ孝の返答の方が有情か。
俺のは処刑フラグ直行便だな。
料金は安いよ?
ほんの一瞬だけど、女性陣の艶姿を見れるが行き先は地獄だけど。もちろん、代金は自分の命と精神に肉体的ダメージが少々。
俺はどんなに金を積まれても絶対に頷かないけどね。


「弾があるってことは、銃の一つや二つある筈だが………」
「そうだね。無いわけないもんね」
「これでなかったら、キツイな」


俺達は、先生の友達の私物のロッカーを壊していた。
というか、武器調達の為、致し方なし。


「「せーの……!!」」


孝と平野は、釘抜きでロッカーをこじ開けた。


バガンッ!


反動で二人ともこけた。
そして、目に飛び込んできたのは、三丁の銃だった。


「お、イサカにスプリングフィールド、ナイツ‐SR25か。この状況下では、悪くない装備だな」
「まったくだね。蒼騎はどうする?」
「俺は自前のがあるから、それを使うさ。平野達が使えよ。そういや、サイクロプスはどうした?」
「持ってるよ。しかし、蒼騎。これをどこで手に入れたんだい?」
「蛇の道は蛇ってやつだ。……………と言っても、世界がこれじゃあ言っても意味がないし、簡単に言えば、裏ルートから調達して来た。あと、そのサイクロプス、平野、お前にやるよ」
「え、本当!? これ、貰っちゃっていいの!?」
「おう。ほれ、ローダーが六セットしかないから、大事に使え」


俺は平野達に見えない様に、“王の財宝”を開き、サイクロプス用の弾とローダーをあたかも懐から出したように手渡す。


「取り敢えず、マガジンに弾込めるか」
「そうだね。小室も手伝ってよ、実は弾を込めるの意外と面倒なんだ」
「ああ」


チャチャチャッ…………


俺と平野は手慣れた作業で弾を込めていき、孝は最初は手間取っていたがだんだんと慣れていった。


「それにしても、真紅狼はとにかく………平野はよく慣れてるな」
「勉強したからね」
「エアガンでか?」
「まさか、本物だよ」
「実銃かよ!?」
「アメリカに行った時に民間軍事会社のインストラクターに一カ月教えてもらったんだよ」
「ほーお、そりゃ役に立ったな」


俺はすでに弾込めを終えており、ライオットに弾を込めていた。


「蒼騎のライオットの弾の種類は?」


平野が俺のライオットを見て、訊ねてくる。


「スラッグ弾。貫通力最強の弾。だから、広範囲重視じゃなくて、密度が高い場合は強いな」
「確かに………<奴等>の密度が高い時には強いけど、吹き飛ばすにはちょっと向かないか」
「どういうことだよ、平野?」
「いいかい、小室。ショットガンには二種類の弾があって、通常は複数の弾が発射される一般的な散発銃(ショットガン)。小室が持っているヤツだね。だけど、広範囲というメリットを捨てて、破壊力に特化された散発銃(ショットガン)が蒼騎の一発弾(スラッグ)だ。このタイプの弾は、広範囲に弾をばら撒くことは出来ないが、その分一発の弾が大きくて、破壊力が凄いんだ。人間の身体を真っ二つに出来るほどの破壊力がある。………だけど、先程も言ったようにメリットをほとんど捨てて、極限まで破壊力に特化されているから使う人はあまりいないんだ。クセのある弾だからね」


平野は、孝に分かりやすく説明してくれた。
さすが、インストラクターに教えてもらった事だけはあるな。


「でも、蒼騎のタイプもそれほど弾数が入らないんじゃ………?」
「あ、その辺は改造して、最大八発を十二発まで弄くったから、問題はない」


キャッ………キャッ………!!


下から聞こえてくる女性陣の楽しそうな声。


「さすがに騒ぎ過ぎなんじゃ………」
「別に構わねぇだろ。一番うるさいのが、あそこにあるんだからよ」
「確かに、こっちの通りにはまだ<奴等>はいないな。あっちの通りは酷いけど………」


孝はベランダに出て、双眼鏡で床主大橋を覗く。
すると、孝がテレビを付ける様に促してきたので、俺達はテレビに注目した。
~真紅狼side out~


~麗side~
真紅狼達は、二階で装備を整えている間に、私達女性陣はお風呂に入っていた。


「くうぅ、先生、おっきい!!」
「うん、よく言われるのよ~」
「くやしいぃぃ~~」
「そういえば、宮本くん。蒼騎くんと二人っきりだったわけだが、どんなことがあったかい?」


毒島先輩が別行動していた時のことを訊ねてきた。
それなりに合ったが、まぁ、話しても大丈夫よね。
私はたった一日ではあるが、私と真紅狼が体験した内容を皆に話した。
もちろん、真紅狼が転生者であることは除いてだ。
すると、皆は突然黙ってしまった。


「ど、どうしたのよ、一体?」
「いや、蒼騎くんは“生者”を殺めたことから、罪悪感を背負ってるのではないかと思ってね」
「そうよ。あの蒼騎でも“人”を殺せば………「ちょっといいかしら? 宮本さん」………静香先生?」


静香先生が、突然深刻な顔で、沙耶の声を遮った。


「先生、どうしたの?」
「蒼騎くんが人を撃つ時、どんな表情をしてた?」
「うーんと、至って普通でしたよ?」
「………苦しそうな表情とかまったく見せていなかった?」
「はい。むしろ、口元は嗤っていましたけど………」


先生は、「そう」と呟いて黙ってしまった。


「先生、どうしたんですか?」
「あのね、皆。推測だけど、蒼騎くんの心はすでに壊れてると思うわ」
「「「はい?」」」


どうして、そんな結論に至ったのだろうか?


「あのね、普通、人間は“人”を殺したりしたら、罪悪感で辛くなったりして苦しそうな表情を見せるのが当り前なの。だけどね、私から見ても、宮本さんから見ても蒼騎くんが辛そうな表情を見せた覚えがない」


確かに、真紅狼はいつも笑ったり愉しんだ表情を見せていた。
辛い表情は一度も見せていない。


「………そんな状態になる原因とかはわかりますか?」


毒島先輩が、不意に訊ねる。


「よほどショックな出来事を体験したか、それとも“人”を殺すことに慣れてしまい、心が壊れたかのどっちかと思うわ」
「まぁ、どちらにしろ蒼騎自身に訊ねてみないと分からないわね」


沙耶がその言葉で締めて、私達は湯船に浸かった。
~麗side out~


~真紅狼side~
テレビの映像ではデモが行われており、橋の封鎖解除と<奴等>の事を“人”と主張し、さらには『殺人病』に侵された患者だと主張までし始めた。


「やれやれ、連中がここまで頭のイカレた連中になり下がるとは………警察の頑張りも無駄になりそうだな」
「真紅狼、そんな言い方は………」
「なら、なんて言えばいい? 必死に市民を生かそうとしている警察に対してこいつらが浴びせるのは批判、暴言、怒り。これじゃあ警察が可哀想じゃないか」


俺は小室に訊ねる。
すると、小室は返答に詰まる。
俺はベランダに出て、出掛ける準備をした。


「蒼騎、どこに行くつもりだい!?」
「ちょっと連中に現状を分からせるついでに、暴れてくる」
「そんな勝手な行動は………!!」
「安心しろ、連中が追ってこれない様に、道を塞ぐさ。そんじゃ、行ってくる。心配なら、テレビでも見てろ」


そう言って、俺は屋根を伝って床主大橋に向かっていった。
屋根伝ってピョンピョンと跳ね、入口となる道に誰にも乗っていないその辺の車をバリケードにして入口を塞いだ。


「こんなモンか。さてと………」


俺は再び屋根に登り、警察が封鎖している鉄橋の上に降り立った。


『警察の横暴を許すなー!!』


おうおう、コイツ等は本当にのんきだねぇ。
よくもまぁ………死がそこまで迫ってんのに、ここまでのんきな奴は始めてみるよ。
小室達には、『現状を分からせてやる』と言ったが、本音はただ殺したいだけなんだよね。
こんな素晴らしい世界なんだから、もっと楽しまないと人生がつまらない。
しょせん、人生なんてどれだけ自分を自己満足出来るかだ。
自己満足が少なければ、それはつまらない人生だろう。
まぁ、それも人それぞれだが。
取り敢えず、鉄橋から降りよ。ここ、案外寒かった。


「どーも、お邪魔しまーす」
『なっ!? 一体どこから………!!』
「キミ!! ここは危険だから下がりなさい!!」
「どこが………」


俺は両腰のホルスターから“真紅の執行者”と“深蒼の断罪者”を引き抜く。


「………危ないって?」
「キミの様な青年が銃を手にすることなど………」
「アンタ、バカか? 今まで法が通用する世界なんざ、すでに滅んだんだよ。今は法や子供だからなんて言葉は通用しない。この新世界で生き残りたけば、誰もが武器を持って<奴等>を殺せ。それがこの世界で生き残れるたった一つの方法。………それと、<奴等>を殺す為には頭をブチ抜け。身体に当てても意味はない。刃物なら首を切り離せば、<奴等>は死体に戻る」


俺は水際対策してる警官達に告げた後、批判デモを行ってるリーダーらしき男に向かった。


「よう、アンタ。ちょっといいか?」
「なんだ、兄ちゃん? 兄ちゃんもデモに参加する気かい?」
「いやいや、俺はむしろ警察側の人間だな」
「お前達はァー!! 日本とアメリカが開発したァ、生物兵器の事実を隠しィ、一方的な圧力をかけているゥ!! 帰れ! 帰れ!!」


しょうがない、俺流(・・)で現状を分からせてやるか。


「あ、おねーさんもちょっと着いて来てくれる?」
「え、ええ」
「はい、ちょっと、そこのバカ、こっちに来い。おねーさんも一緒に着いて来てくれ」
「なんだよ、お前!! 離せ!!」


俺は強引にデモリーダーとアナウンサーのおねーさんを防壁を越えて、警察官たちが張っている場所と同じラインに立つ。
その時、向こう側から子供を抱えた母親が声を上げて、向かってくる。
だが、明らかに子供の様子はおかしかった。


『やめてぇ! 撃たないでっ!! 私もこの子も生きてるわ!! 生きてるのよぉ!!』


ちょうどいい、現状を分からせる為になっても貰おう。
母親が動いてるのを見て警察官たちは発砲をやめたが、次の瞬間、子供は目が見開き、瞳孔も完全に開いた眼で母親の首元に噛みついた。


グジュッ!!


勢いよく血を噴き出して、倒れる母親。
その倒れる母親の肉を貪る子供。
俺はその光景をデモリーダーの頭を掴んで、じっくり見る様に促した。


「オイ、よく見ろ! お前はこれでも殺人病だと言い切るか? 瞳孔は完全に開いて、肉を喰らう現状を見ても? おねーさんはどう思うかい?」
「あ、わ、私は、殺人病ではないと思います………」
「これは、殺人病だァー!! 患者達を殺すなァ!!」
「はぁ、直接見てもらって少しでも考えを改めるならよかったんだが、しょうがない。………存分に患者達を止めて来い!!」


俺はそいつの襟を掴んで、<奴等>の元に投げ込んだ。


ブンッ!!


「ほーら、殺人病患者を保護すんだろ? お前等が言う一方的な暴力じゃなくて話し合いで解決してみろよ」


デモリーダーは、<奴等>を前に逃げるが、虚しく<奴等>に捕まり、噛まれ<奴等>になり下がった。
俺は、デモリーダーだった男を撃ち抜き、そこから母親、子供、女、男、老人、とにかく近くに居る<奴等>全員を撃ち抜いた。


「しばらくは<奴等>が来るまで、時間がある。その間にコイツ等を引っ込ませろ。被害を大きくしたくなければな」
「……キミは、一人の人間を殺したのだぞ!?」
「だから、どうした? 元より、人なんざ大量に殺してる俺には関係ねぇ。倫理観を問うよりも自分の命の確保を優先することをお勧めするよ」


警察官の一人が俺に詰めかけ胸元を掴んだが、俺はそれを弾き飛ばし黙らせた。
そして、デモ隊の前に行き………


「さてと、お前らも殺人病って叫んでる連中の仲間だろ? ほら、患者を助けたいんだろ? 行けよ」
「わ、我々は警察の………「行けよ! 早く!!」………うわあああぁぁぁ!!」


有無を言わせない口調で言ったら、デモ隊の連中は一人また一人と散っていくが、その中の一人が噛まれた。


「ギャアアアアアアアアッッ!! 痛いッ!! あがぁあああああああああっっ!!」
「げっ!? 噛まれた奴がいやがる!! こりゃ撤退した方がいいな。こうなる前に教えてやりたかったんだが………」


仕方がない、逃げるとしよう。


「おねーさんはどうする? 一人ぐらいなら連れていけるぜ?」
「私は、パートナーが居るから!」
「そうかい。じゃあ、よいレポートを」


俺は、おねーさんを一時だけ安全な場所に置いた後、そこで別れた。
屋根の上に登り、生者に見えない様に孝達への元に戻った。


「ただい……………なんだ、コレ?」


ベランダから入り、中に入ると平野の魂が飛んでいた。
~真紅狼side out~


~孝side~
真紅狼に言われたとおりに、テレビを付けて向こうの映像を見ていると真紅狼が鉄橋の上に居ることに気が付いた。


「どうするつもりなんだ、真紅狼は?」


すると、真紅狼はデモリーダーの男の前まで行き、アナウンサーの女性とその男を掴んで、警官隊の水際まで連れて行き、惨状を見せつけた。
その時、ちょうど母親が手に抱えた子供に噛まれて、<奴等>と同類になったところだった。
デモリーダーの男は、この現状を見ても、未だに『殺人病』だと言い張った。
すると、真紅狼の表情が変り、デモリーダーの男を<奴等>が居る所に投げ捨てた。


「おいおい………!!」


突然投げられ、デモリーダーの男はまともに受け身も取ることが出来ず、地面にたたきつけられる。
そして、音にする方に<奴等>は寄っていく習性があるため、デモリーダーの男は何も知らず声を出してしまい、逃げようにも肩を掴まれ<奴等>に噛まれた。
<奴等>に噛まれている所を、市民やデモ隊は目を背けていたが、真紅狼だけは、平然と普通に眺めていた。
そして、真紅狼はデモリーダーであった男をなんなく撃ち殺し、さらには周りに居る<奴等>も普通に殺していく。
その行動は、そこが地獄だと言う事を忘れるほどにカッコ良かった。
血風が舞っているにもかかわらず、自身の服を汚さず歩く姿がとてもかっこよく見えたのだ。
その後、真紅狼は未だにデモ連中の元に向かい、一言二言言った後、デモに参加している連中は全員、まるで怖い物を見たかのように逃げていった。
だが、その時にはすでに遅く、デモ隊の連中の中に一人噛まれていたヤツが居たらしく、悲鳴を上げるとそこも混乱が生まれてしまった。


そこで俺はテレビを消した。


「………平野は、真紅狼の行動をどう思う?」
「世間的に見たら、狂人そのものにしか見えないと思うけど………ああいう奴等に現状を分からせる為なら、もっとも効果的だと思う」
「何故だ?」
「ああいう奴等は、現状を体験しないと認識しないからさ。いつまでも目を閉じていたって前に進むことは出来ない。なら、いやでも前に進まなければならない状況を作ればいい。蒼騎はデモリーダーの男を使って、それを実現させたのさ」


………真紅狼の行動を深く考えていたら、後ろからいきなり抱きつかれた。


「うわっ!?」
「小室くーん!」
「し、静香先生!!?」
「んふふふ♪ あー、コータちゃんだぁー!」
「え、“ちゃん”?」


その後、流れる様に平野の頬にキスした。


チュッ♪


数秒間の沈黙が流れた後、平野は鼻血を噴水の如く噴き出し、魂までもが飛んだらしい。
顔がニヤけまくってる。


「平野、見張りを頼む」
「あ、うん。うん(◎o◎)」


俺が、静香先生を背負って階段を降りようとした時、ようやく真紅狼が帰ってきた。
~孝side out~


微妙に助かった気がする。 
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