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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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帰国

 オーストラリアは以前は英連邦加盟国でしたが、ISが登場して以降はイギリス本土との位置関係と周辺国の情勢によりほぼ独立国として世間一般には認められています。
 その要因は国際IS条約(アラスカ条約)締結後に発足された豪州、東南アジア条約機構、通称『赤道連合』の誕生によるところが大きいです。
 内容を簡単に言ってしまうと東南アジア周辺国全てに十分な数のISを回せないので、それならばいっそEUのように連合を作ってその中でやりくりしてもらおう、っていう内容です。
 そのためオーストラリアのIS保有数は25機と世界でも有数のIS保有数を誇りますが、南シナ海までの周辺諸国の海上警備、周辺諸国への一定状況下のISの貸し出しが義務付けられています。
 またそれによりオーストラリアのみが有利にならないようにオーストラリアのIS関連の企業には加盟している国々から一定人数以上技術者を雇い入れること、また国家IS代表者、代表候補生も他の国から選出することが義務付けられています。まあ当然技術が相応でなければ拒否はできるのですが、つまりはオーストラリアが代表としてISを一手に預かるけど他の国も必要に応じてISを使えますよって言う条約です。

 参加国は現在オーストラリア、を中心にインドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、ニュージーランドの6か国とISを保有できない群島諸国数国で構成されています。

「それにしてもよくもまあここまで壊したものね」

「す、すいません」

 そして私は今オーストラリア首都キャンベラ、ジャクソン社開発局の局長室にいます。
 ジャクソン社は オーストラリアに存在するIS専門の国営企業で、基本的に赤道連合のISは全てこの企業に属していることになっています。
 第2世代を赤道連合の中でほぼ研究しつくして、現在は第3世代ISの実験開発の段階にまで入っている状況です。
 条約によって人材を能力だけで判断する体系を取っているためなのか、他の国、企業よりも一般人に近い身分の人たちの割合が多いです。その分様々なアイディアを取り入れてきたため、私の『デザート・ホーク・カスタム』にあるような他国のISに無いような装備が多めですね。『ユルルングル』なんてその最たるものです。

 話が逸れましたね。
 少し狭いくらいの局長室にあるのは、大きなデスクとそこに座る白衣姿の白髪の女性。IS開発局長にして私の母親、アイシャ・カスト。
 でもその顔は親ではなくて、あくまで開発局長としての顔で呆れ返っている。
 夏休みに入って初日に学園に迎えが来てそのまま空港から専用機で本国へ、その後本社へ直行し今に至るわけですが……今私は絶賛苦言の真っ最中。

「パッケージの内1つが大破、しかも正式発表も前の段階から世界にお披露目の大奮発」

「あう…」

 的確な嫌味を言われて私は返す言葉もありません。

「でもま、言うほどでもないか。あの束博士の新型『紅椿』の映像データにアメリカの『銀の福音』の戦闘データはこれからの赤道連合ISの発展に非常に役に立つわ。パッケージ2つ潰した価値はあったというものね。お疲れ様」

「は、はあ。ありがとうございます」

 そう言って母さんが微笑んでくる。この人は色んな意味で人の扱いが上手い。子供の私ですらその笑みに少しドキッとすることもあります。

「出来ればその織斑一夏と篠ノ之箒に会いたかったけど……そこまで贅沢は言えないわね。どちらも代表候補生でもないのに専用機を持っている段階で問題なのに、特定の国が招いたなんて知られたら国際問題に成りかねないし」

 母さんが呟くように言っているのが聞こえる。まああの2人は誘ってもどこかの所属になるとかは今の段階では言わなさそうですけどね。

「そうそう、ニュースで知ってるかもしれないけど、赤道連合の加盟国が増えたわ」

「え、ええ。それは一応……」

 私が頷くのを見ると母さんが投影型のディスプレイを弄って私に画面を見せて説明を始めた。

「オセアニア州に属するほとんどの群島諸国、今まで参加を拒んでいたシンガポール、中国と国境を接していて参加できなかったラオス、カンボジア、ベトナムも参加を表明したわ」

「そ、そんなに!?」

 私の言葉に母が少し呆れたように言葉を続けてくれる。

「ISは1国じゃどうしようもないのよ。EUでさえ『イグニッション・プラン』を組んで技術面で手を組んでいるし、例外なのはアメリカや中国、ロシアと言った大国くらい。ここら辺のような島国やアフリカの様な小国の集まりはもう連合でも組まないと技術も数でも他国に負けてしまうから、って感じかしらね」

 ディスプレイの世界地図を回転させていた母さんがそれを止めて日本をタッチする。すると一夏さんと箒さんのデータが映し出される。当然その横には『白式』と『紅椿』がある。そこから更にフォルダを開いて福音戦の映像データを映し出す。私が持って帰ってきたISのデータ。映し出されているのは『銀の福音』ではなく『白式』と『紅椿』だ。

「その上あの篠ノ之博士お手製の第4世代の登場。彼らも気づいたのよ。一人で意地張っている場合じゃないってね」

 それだけ言うと画面を閉じてため息をつきながら、隣にあった辞書ほどある紙の束を引き寄せる。

「ま、でも当面の問題は……こっち」

 その紙の束を私に投げてきた。見ろってことらしい。
 一番上の白紙を捲って内容を確認……ってこれ!
 私の反応を見てから母さんが言葉を発する。

「見て分かる通りこの赤道連合にも抗議が来てる。非公開とは言え、貴方が全世界に晒したあのパッケージのせいでね」

 紙の束はからの抗議、説明要求の束だった。
 水中戦特化奇襲型パッケージ『ディープ・ブルー』……ISを使う上での条約で軍事利用は禁止されている。そして現在公式の世界大会はモンド・グロッソでは水中競技なんて無い。
 つまり……水中戦なんてものはISでは想定する必要すらなく、それを開発するのは軍事利用以外あり得ない。というのが抗議の内容。
 海底作業用と言い訳も出来なくないけど水中でしか使えない超音波(フォノン・メーザー)砲を武装として搭載している時点でその言い訳も通用するかどうか……

「EUはフランスとドイツが人道的問題で、アメリカとオーストラリアはそのISの運用の仕方についてかなりの方面から抗議が来ている。つまり今は世界中相手への牽制と威嚇で大騒ぎってこと」

 しかもこの分厚い辞書みたいな紙の束だけで一国分。他の国も合わせれば一体どれだけの抗議が来たのか想像すらつかない。

「確かに功績はある。腕もある。でもケジメは必要…………カルラ・カスト少尉!」

「は、は!」

 いきなり階級付けで呼ばれて私は姿勢を正し敬礼を返す。

「貴殿のISを一時ジャクソン社へ返還! 以後はこちらの監視の下自室で無期限の謹慎を命じる! 以上!」

「へ、返還!?」

 返還って……そんな!

「復唱!」

「は! カルラ・カスト少尉! 本日を持って本国へISを返還、自室で無期限の謹慎を行います!」

 母のあまりの剣幕に私は立場上逆らうことが出来ず、了解してしまう。

「さがりなさい」

「はい!」

 私は渋々自分の首から鎖ごと待機状態の指輪を外すと母さんの前の机に置いた。一瞬、本当に一瞬だけど指輪が寂しそうに光った気がした……気がしただけかもしれないけど……
 それを確かめることも出来ず私は踵を返して部屋を出るしかなかった。

「はあ……」

 部屋を出て扉を閉めた途端ため息が出てしまった。無意識に手を首にやってしまう。一年以上肌身離さず身に着けていた自分の一部になっていたIS。それが無いのがひどく不安だ。
 でもそれも仕方ない。自分はそれだけの失敗をして祖国に迷惑を掛けた。そのケジメはつけなくてはならない。もしこのまま代表候補生から外されて専用機を剥奪されることがあろうとも、それは自分の責任だ。
 予想していた最悪の結果は避けられたわけなんだけど……
 そうなんだけど……

「……はあ」

 深い深いため息の後自分の部屋に歩き出す。ジャクソン社は会社の中に国家代表者、代表候補生の部屋があり寝泊りが可能になっている。しかもそこら辺のホテルよりも豪華な拵えの部屋。
 廊下を何度か曲がった後私の部屋の前に軍人らしき人が二人いる。多分この2人が監視、ってことだと思う。

「お疲れ様です」

 私がそう言うと二人は無言のままドアを開けてくれた。どうやら会話も禁止されているみたい。
 部屋に入り込むと私はそのままベッドに直行して倒れ伏す。柔らかいスプリングが私の身体を押し返して少し跳ねてから止まる。

「よう、随分へばっているみたいだな」

「ふえ?」

 どこからか聞こえた声に顔だけ左右に巡らすと……

「よ」

 窓際に人がいた。太陽の光が反射して顔が見えないけど声で誰か分かる。
 その人はこちらに近づいてくると私の上に覆いかぶさってきた。

「ちょ、クロエ!?」

 鮮やかな金髪に至近距離で見える綺麗な碧眼が私の顔を映し出している。セミロングの髪を横側だけ編み上げていて、それ以上に目立つのが左目下にある泣き黒子が特徴的な白人の子。クロエ・アシュクロフト。
 ニュージーランドの代表候補生で現在はジャクソン社所属の代表候補生。同い年だけど、私のIS操縦の先輩。

「何でここに?」

「細かいこと気にするんだな」

「細かくないから聞いているんですよ?」

「カルラが帰ってくるって聞いてからずっとここで待っていただけだよ。別に何も言われてないし、大丈夫大丈夫」

 この細かいことを気にしない性格が今は羨ましい。
 クロエはそのまま私の上から退くと隣に仰向けで倒れこんだ。またスプリングが跳ねて私の体が少し揺れた。ふかふか……気持ちいい。

「で、IS学園はどうだった? 例の男には会ったんだよな?」

「んー、まあ、ね」

「何か歯切れ悪いな。私も日本に一回は行ってみたいんだが?」

 一時は私とクロエの両方にIS学園の誘いは来ていましたが、ようやく完成した第3世代『デザート・ホーク』はその当時まだ赤道連合には1機しか存在せず、既に『デザート・ウルフ』の扱いに長けたクロエには後進の育成に当たってほしいということで私が学園に行くことになったんですよね。うーん、でもとりあえず言えるのは……

「とりあえずクロエには日本は向いてないと思いますよ?」

「何で?」

「臨海学校でカワハギっていう魚を生で食べましたから」

「おえ……」

 クロエが生魚って言葉を聞いた瞬間にベッドから起き上がった。なんでも昔から生魚がダメらしい。だから日本の食生活はかなり合わない。臨海学校のカワハギも多分焼く。一夏さんと会わせたら食生活のことで揉め事になるのが目に浮かぶ。あ、箒さんともか。

 それにもう一つ日本が向かないことがある。クロエは家が両親ともに軍人で厳格だったため、その反動でかなり散在家な面がある。日本の夜にやっている通販番組なんて見た日には多いはずの手当ても一日で無くなってしまうんじゃないでしょうか。

「そうだよ。日本人ってどうして生で魚食べられるんだ? あれか。胃の作りが違うのか?」

「私も食べられるからその言い方は失礼ですよ」

「おっと、そうだった。でも私はミートパイの方が好きだな」

「そもそもクロエはそれが一番の好物じゃないですか」

「うむ! ミートパイに勝る食べ物は存在しないのだよ! というわけで出かけよう。食べにいこう」

 そう言って起き上がったクロエが私の手を引っ張って起き上がらせて部屋の外へ連れ出そうとするので慌てて声を出す。

「だ、ダメですよ! 私謹慎命じられているんですから!」

「命令? ってアイシャさんか?」

「う、うん。そう」

「あー、まあ例の一件でこっち大騒ぎだもんな。親子と言えどもケジメは必要ってか」

 クロエはそう言うと私の手を離してつまらなそうに頭の後ろで組んだ。こういうところは理解があって助かるんですけどね。

「じゃあ私が買ってくるよ」

「別に私はいらないんですけど……」

「私が食べたいからいいんだよ」

「そうですか……」

 ふふ、クロエのミートパイ好きにも困ったもの……

「というわけでお金下さい」

 …………です?

「クロエ……貴方まさか、また……?」

「あ、あははは……うん、また」

 私の睨みにクロエは苦笑いをしながら頭を掻く。
 こ、この散財馬鹿……!

「前から言ってるのに何でお金使っちゃうんですか!」

「しょうがないんだよ! 欲しいのあったら買っちゃうんだから!」

「生活費どうしてるんですか!」

本社(ここ)にいたらいらないからな!」

 うわー……ダメ人間がここにいる……
 確かにジャクソン社の本社はIS操縦者用に私が今いるような居住スペースがいくつもありますし、料理も食堂でお金取らないで出てきて美味しいし、掃除とか洗濯とか出しておけばやっておいてくれますけど! くれますけど!
 なんか、本格的にクロエは日本に行っちゃいけないし行かせてはならない。

「いい加減その癖直さないときついですよ?」

「わ、分かってるよそのくらい!」

 私は呆れながら財布からミートパイ2つ分だけのお金を渡します。

「さっすがカルラ! じゃあ待ってろ! とっておきのやつを買ってくるからな!」

 言った瞬間にはクロエは部屋を走って行ってしまった。

『うお! なんだ!?』

『あ、ごめん。急いでるから!』

『ちょっと待て! 中で何を!』

『何にもしてないよ気にするな!』

 扉の辺りから見張りの人の声が聞こえたけど……まあクロエなら大丈夫だと思う。ていうか代表候補生だしこの本社でなら融通がきく。
 クロエがいなくなったことで急に部屋が寂しくなってしまった。ベッドに寝転がった状態で何となくテレビをつけてみる。

『先日に複数の国家が赤道連合に加盟を表明したことにより、発足わずか10年足らずで世界最大規模となりつつあり……』

 ニュース……

『ドイツには引き続き国際IS委員会から調査団が派遣されるとされていますがその後の進展は……』

 ニュース……

『唯一の男性IS操縦者の織斑 一夏氏は未だにどこの国に所属するか決めておらず国際IS委員会からの……』

 ニュース……

『フランス政府は今日、正式にデュノア社に資金援助打ち切りを打診し、これによりデュノア社は……』

 ニュース……

『イギリス政府の発表では今後EU諸国との繋がりを維持すると共に……』

 ニュース……

『米国は現在、一部で上がっている軍事ISの開発については一切の関与を否定しており……』

 思わずテレビを切ってしまう。代表候補としては見なきゃいけない内容ばかりなんですけど、今は明るいものを見たい気分。でもこういう時に限ってニュースしかやってない……
 こうしている間にも世界情勢は刻々と変わっていく。そして赤道連合は私のせいでかなり劣勢に立たされているのは言うまでもない。どうにか挽回する機会がないかなあ。このまま牢屋行きって可能性も否定できないし……
 ダメだー。一人だと負の感情が無限ループ……
 クロエ早く戻ってこないかなあ。

 その時扉のノックされる音が聞こえた。

「クロエ……?」

 って、そんなわけないよね。クロエはノックなんてするわけないからこれは違う人。

「何だ、クロエが来てたのか?」

「父さん!?」

 入ってきたのは筋骨隆々のスーツ姿に赤い短髪と無精ひげの……うん、私の父さん。でもその顔はいつもの笑顔ではなくて、どこか暗い表情を浮かべている。
 というより顔色も相当悪い。眼の下なんかすごいクマ出来ているし、パッと見ただけでも数日はまともに寝てないと分かってしまう。

「父さん……最近寝てないの?」

「うん? ああ、これはみっともないところを見せたなあ」

 父さんはそう言うとぎこちなく笑みを浮かべながら椅子をベッドの近くに持ってきて座った。
 しばらくは私も父さんも無言で………5分位してから父さんが口を開いた。

「すまんな」

「ううん、気にしてないよ」

「そうか」

「うん」

 父さんのせいじゃないよ。運が悪かっただけ。
 偶々臨海学校で暴走事件が起こって、偶々一回目で『スカイ・ルーラー』を壊して、偶々本国から命令が来て、偶々その時使えるパッケージが『ディープ・ブルー』しかなかっただけ。
 うん、ちょっと落ち込んできたけど大丈夫。うん……

「だって命令だったんだもん。私はオーストラリアの代表候補生だよ?」

「命令……?」

 え、なんでそこで首を傾げるの?

「うん、『デザート・ホーク・カスタム』に個人秘匿通信で本国からそういう命令が………」

「何?」

「う、うん。母さんのところに置いてきちゃったからあっちのログには残ってると思……」

「すまん! 少し外すぞ!」

「え!? と、父さん!?」

 私の言葉を聞いた父さんが物凄い速度で部屋を飛び出していってしまった。
 え、一体何が……そもそもISに関しての命令は本国からジャクソン社の通信部を通して送られるはずだから本社の人なら知ってないはずは無いし、間接的に外交問題にも直面する内容だったから父さんが知らないはずはないんだけど……
 その父さんが知らない?
 おかしい………

 もし、もしもあの命令が本国の名を語って出された偽の命令だとしたら……私はまんまとそれに嵌ったことになる。
 となれば当然私への罰はもっと重いものとなる。

 でもでも! あの命令はちゃんと本国のものだったしあの後確認したISの通信履歴にも残ってる! 認識もちゃんと通ったし暗号も全部本国のものだった。偽物なんてはず、ない!

 じゃあ何で? 何で父さんが知らなかったの?

 後から後から疑問が沸いてきてしまう。そ
 私の中で仮説が成り立っていく。どれも確もそも何故『銀の福音』は暴走したのか。それ以前に何故私達が臨海学校の時に暴走したのか。それ以前に何故合同開発の時期と私達の臨海学校の時期が重なったのか……証は全く無いけど……ある人が、あの人だけがそれを可能とする技術を持ってる。

「篠ノ之……束……?」

 私の口から搾り出された言葉は、今までの事象全てに説明がつく。2国間合同のIS開発の時期を操作し、ISを暴走させることも開発者のあの人なら可能でしょう。そして臨海学校で見たあの技術を持ってすればどこの国のメインコンピュータにも入り込んで偽造の命令を出すことも可能……のはず。

「あーあ~」

 大きく息を吐いてベッドに倒れこむ。
 所詮私の中の仮説でしかないですし、証拠も無い。仮に全て束博士のお膳立てだったとしても実際に動いたのは私。
 実際私が動いても動かなくても状況に変化は無かったでしょう。でも動いた。それは間違いなく私の意志。ということは原因がどうあれ、やっぱり責任の一端は私にあるということですからね。

「おーい! 買ってきたぞ!」

 丁度考えが終わったところにクロエがミートパイの入った袋を下げて入ってきた。ほら、やっぱりノックなんかしない。

「クロエ、ノック」

「細かいこと気にするな」

「細かくないですってば」

「禿げるぞ」

「禿げません!」

 そろそろ本気で怒るよ!
 
 

 
後書き
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