ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜
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閑話ー現実と仮想の演舞ー
28.ゲームでも現実三昧
前書き
第28話投稿!!!
半仮想世界の完全攻略に挑むシュウとリーファ。
果たして2人は完全攻略できるのか?
「スグ、スイッチ!!」
「うん!」
スグが長剣を振るいゾンビようなの体勢を崩させ、俺と入れ替わりゾンビのような敵に斬り込む。
現在は二階フロアから三階に通じる階段のすぐ手前。強行突破すれば行けるかもしれないが階段の前に大量のゾンビが群がる。
「どうする、スグ。強行突破するか?」
「確かにできそうだけど、難しいと思うよ」
背中合わせとなりあたりを見渡す。あたり一面ゾンビだらけ.......マジでキモイな.......
「でも、強行突破しか手はなさそうだな.........それじゃあ行くか!」
少し呆れたような顔をしたのち笑顔でスグは大きく頷く。
階段に今一度視線を向ける。そこには、約二十体のゾンビが階段の前を埋め尽くしている。
「.........それなら.....」
片手剣を両手で持ち、刀身をやや下に向け後ろに引く。そしてそのまま床を滑るように二十体のゾンビに突っ込む。
片手剣突進技《スライドウォール》
前の方で構えていたゾンビの五体が光となり消滅。
「スグ、スイッチ!!」
俺が作った少しの隙間にスグが入り込み、剣道の胴を打つように相手の懐に侵入し、同時に三体を斬り裂く。
「集也くん!」
「おう!」
続けて片手剣を肩に担ぎ、床を蹴り上げ、階段に向けて突進する。
片手剣基本突進技《レイジスパイク》
基本突進技を放ったと同時に左手でスグの手を強く握りしめ、その勢いを使い階段へと突っ込む。
目の前で何体ものゾンビが消滅するのを横目で見ながら階段へと侵入した。階段に侵入すると後ろにいるゾンビはこちらを襲って来ず、消える。
「ふぅ〜、とりあえず二階は突破したな。.........ああ〜、疲れたぁ〜」
「う......ん、そ、そうだね。それよりも、集也くん.......その.....手を........もうそろそろ」
スグは顔を赤らめながら俯く。
「ご、ゴメン」
慌てて手を離す。
(なんで付き合って結構経ってるのに、手繋ぐぐらいでドキドキしてるんだよ)
沈黙........沈黙........沈黙........
沈黙が続く中、耐えきれなくなっった俺は口を開いた。
「そ、そろそろ行こうぜ......」
「う、うん.......」
俺とスグはその後何も話さないまま、三階へと向かっていく。
階段を抜け、三階に差し掛かった瞬間、体を刺すようなとてつもない殺気を感じる。この殺気はさっきまでのゾンビのものではない。
これは確実にアインクラッドのボスの気配と同様の気配だ。
つまりーーこの部屋は.........
すると暗闇に包まれていた三階が光を灯す。そこにはこのゲームがクリア不可能と言われていることを表わすような絶望的な光景が広がっていた。
そこに広がる光景は.......三階のフロアの半分を覆い尽くすほどのゾンビの大群。その後ろに構える両手用の巨大な大剣を持つ猿の顔をした巨体のモンスター。
「なっ........」
「嘘......でしょ」
思わず声が漏れてしまう。それもそのはずさっきの二階は入り組んだ迷路のよう構造をしていたが、この三階は何もない。何もないただただ広い空間。障害物も何もない空間に大量のゾンビと猿のモンスターが待ち構える。
「..........行くぞ、スグ」
「.......うん」
静かに口を開く。
猿のモンスターが咆哮した瞬間、俺とスグが駆ける。
「スグ、ゾンビたちは任せていいか?」
「うん、任せて!」
大軍のゾンビどもに向かい俺とスグは斬り込む。
片手剣基本突進技《レイジスパイク》
片手剣単発技《ホリゾンタル》
片手剣突進二連撃技《クロスレイヴ》
この世界において技後硬直というものは存在しない。ソードスキルというものも存在しないが二年間、剣の世界に伊達にいたわけではない。ソードスキルの型など嫌でも体が動きを憶える。
そしてゾンビ大軍から猿のモンスターにあと少しでたどり着く。
「集也くん、スイッチ!!」
スグの声に俺は後ろに下がり、それと同時にスグが前方のゾンビに向かい斬り込む。
スグの剣がゾンビを貫いた瞬間、道が開けた。
「今だよ、いって集也くん!!」
「ありがとう、スグ!」
その一瞬の隙間に向かい駆け抜け、刀身を下げ、猿のモンスターの前で一気に振り上げる。
片手剣単発技《バーチカル》
だがその攻撃は猿のモンスターに当たるのではなく、振り下ろされた猿のモンスターの大剣と激突する。
だがその瞬間、体にとてつもない衝撃が走る。
「グッ.......!」
とてつもない衝撃に耐えきれず床に倒れこむ。
「え........?」
(ありえない.........こんなこと.......
どうなってるんだ!?)
俺が今見ている光景はアミュスフィアが作り出した仮想の映像。
そして俺が今いる世界は現実の世界。いくらこの世界が半分現実だとしても、このアミュスフィアが仮想世界に飛ばしてるのは、視覚、聴覚、そしてあっても痛覚ぐらいだ。
触覚が飛ばされてない以上仮想の剣の重みを感じるわけがないし、第一、触覚が飛ばされれば人の体が普通に歩けるわけがない。
(つまりこれは..........)
「アツヤ、危ない!!」
スグの声に今自分がおかれている状況を今一度把握する。
猿のモンスターから今にも振り下ろされそうな大剣が俺の視界に映る。ギリギリで横回転で床を転がり回避。すぐさま俺は立ち上がり猿のモンスターとの距離をとる。
「スグ!!」
俺は叫びながらスグの元へ向かい背中を合わせ止まる。
「どうしたの、集也くん?」
「剣を俺に渡して階段まで走ってくれ。道は俺が切り開くから」
「えっ........?」
当然の反応だ。
「あとで事情は話すから今は俺の言うことを聞いてくれ、スグ」
少し沈黙が広がる。
空気を読んでいるのか、俺たちとの間合いを考えているのかゾンビたちも襲いかかって来ず、その場で止まっている。
「大丈夫.....なんだよね?」
「ああ」
「危険じゃないんだよね......?」
「ああ」
「帰ってくるよね.....?」
「もちろん!」
スグはこちらを振り向き持っていた長剣を俺に渡して微笑む。
「絶対だよ!」
するとゾンビが急に襲いかかってくる。
「スグ、俺の後ろから絶対に離れるなよ」
「うん」
階段の方向に体を向け、二本の剣を肩に担ぎ上げ、二本の剣を前へ突き出し一気に突進する。
片手剣基本突進技《レイジスパイク》を二本の刀で同時に放つ。ゾンビたちは、二本の突進技で一筋の道がひらける。
「走れ、スグ!!」
スグは階段に向かい走る。
スグが階段に到達するまで見続けた。階段に向かう途中にこちらを少し振り向くが俺が見ているのを確認すると再び前を向き階段向かう。
スグが階段に到着したのを確認すると俺はゾンビの大群と猿のモンスターに二本の剣を向ける。
「さて..........狩りの時間だ!」
ゾンビの大群に二本の刀を使い斬り込む。二本の刀を振るいゾンビの大群を次々と切り裂く。
二本の武器を使うことはあってもキリトのように二刀流で戦ったことはない。一度だけ、ALOに出現したアインクラッドの第一層のボス戦でキリトがやられそうだった時にキリトの剣を拾い上げて使ったぐらいであとは現実世界の剣道でやったぐらいだ。
(だが、俺が二刀流を扱えないわけじゃない!!)
「うおぉぉぉ!!邪魔だ!!」
右の剣の突進と、それにコンマ1秒遅れで左の剣で突進する。
二刀流突撃技《ダブルサーキュラー》
突進後、続けて二本の剣を逆手持ちに持ち替え、体を一回転させる。さらに右、左、右、左と交互に剣撃を繰り出し、ゾンビを斬り裂きながら再び猿のモンスターに向かう。
「このっ!いくら倒してもきりがねぇ......」
さっきよりも壁が厚くなっている。
(それなら.........)
俺は右の片手剣を普通に持ち替え、肩に担ぐ。長剣を逆手のまま後ろに引く。そして、ゾンビに向かい突撃。
片手剣基本突進技《レイジスパイク》
さらに突進後、逆手の剣を一気に振り上げる。一気に振り上げられた長剣からは衝撃波のような光が出現し、ゾンビを吹き飛ばし、猿のモンスターへと続く道が開ける。
長剣を普通に持ち替える、二本の剣の刀身をやや下げ後ろに引き、そのまま床を滑るように猿のモンスターに向かい突進。
片手剣突進技《スライドウォール》
巨大な大剣で突進を防ぐが、二本で放ったスライドウォールを防ぎきれず、猿のモンスターは少しよろける。続けて右の片手剣で猿のモンスターの腹部へと突き刺すし、そこからコンマ1秒遅らせて、左の長剣で突進。
二刀流突撃技《ダブルサーキュラー》
猿のモンスターはうめき声をあげながら大剣で俺を薙ぎ払おうとする。それを二本の剣で受け止めるが吹き飛ばされる。
「クッソっ!!」
かなりのダメージだ。
(ここまで痛覚が起きるってことはやっぱり..........)
俺は再び猿のモンスターへと駆ける。猿のモンスターは巨大な大剣を振り下ろしてくる。それに合わせるように二本の剣の刀身を落とし、そのまま振り上げ、大剣に激突させる瞬間、相手の大剣に沿うようにし、体勢を少し屈め懐に侵入。
その勢いを利用して猿のモンスターの胴体に二本の剣が斬り裂く。
「ぐおおぉぉぉぉ!!」
猿のモンスターが悲鳴をあげ、膝を着き倒れそうになるが大剣を床に刺し持ちこたえる。
「これでトドメだぁぁ!!」
二本の剣を肩に担ぎ、後方からそのまま突撃。
片手剣基本突進技《レイジスパイク》
二本の剣が猿のモンスターを貫き、オブジェクトの光の欠片となり消滅する。
すると空中にPerfect Clear!の文字が浮かび上がる。そして目の前から次々とゾンビが消えていく。
「.........倒した.......のか......」
すると急に体から力が抜け、そのまま俺は意識を失う。
同時刻 半仮想世界コントロール・ルーム
暗いコントロール・ルーム内に二人の男がモニターを確認している。
「いや、さすがだね......彼は」
「まさかこのゲームを攻略するなんてありえないスよ!」
「彼のおかげでいいデータがとれた。さすが茅場先生が選んだプレーヤーだ。...........いつかまた、会えるのを楽しみにしてるよ。...........シュウくん」
「ん.......?」
まだ視界がぼやけてハッキリと見えない。手を伸ばすと何か柔らかいものにあたる。それを握る。
「なんだ?.......これは?」
「きゃぁぁぁ!!」
女の子の悲鳴とともに俺の頬にとてつもない衝撃が走りそのまま飛ばされる。
「グッハ!」
「だ、大丈夫、集也くん?」
地面に倒れる俺を覗き込むスグの姿が。
「あ、ああ、大丈夫だ」
上体を起こし、状況を整理する。
確か、さっきまで半仮想世界のゲームを攻略してて、スグの剣を持ってゾンビの大群に斬り込んでって.........そのあと何が起きたっけ?
「スグ、あのゲーム、結局どうなったんだ?」
「えっ!覚えてないの!」
「お、おう」
スグから聞く話によるとあのゲームは俺が攻略したらしい。だが、ボスを倒すと俺は急に倒れ、そのまま気を失ったそうだ。
スグ曰く、このあとの方が大変だったそうだ。このクリア不可能と言われたゲームをクリアしたことでそこにいたスタッフや観客から拍手が鳴り止まずなかかな外に出られず、さらにはそこに《MMOトゥデイ》の記者がいてインタビューやらなんやらで中々帰してくれず、そのまま隙を見て逃げるようにスグはその場から立ち去ったそうだ。
「なるほど。ゴメンな、スグ......俺のせいで」
「ううん、いいよ。楽しかったしね」
スグはいつもの笑顔を俺に向ける。
「なぁ、スグ。一つ聞きたいことがあるんだけど......」
「ん、なに?」
「俺たちがゲームに入ってからクリアするまでだいたい何分くらいでクリアしたかわかるか?」
「う〜ん、確か入ったのが一時二十分頃で、クリアしたのが.......四十分頃だったと思うよ。それがどうしたの?」
「いや.......何でもない」
気づいてないなら知らせない方がいいな。
あの世界で俺たちは確実に二十分なんて時間でクリアなんてしてない。
.......体感時間だけで言ったら俺たちは、あの世界に三時間は確実にいた。
「ねぇ、それよりも早くご飯食べに行こ。もうお腹ぺこぺこだよ」
スグが俺の手を引っ張り、さっきの食べもの通りを目指す。
「はぁー」
思わずため息が漏れる。
「どうしたんだい、お客さん。今日は元気がないようだが」
カウンターの中でグラスを拭く、肌茶色の体格の大きい坊主の男が聞いてくる。
「聞かないでくれ。マスター、バーボンロックで」
カウンターの向こうからグラスではなく、本が滑り俺の前で止まる。
「その本、今日発売した《MMOトゥデイ》なんだが、そのページに面白い記事が載ってるぞ」
そのページには忌々しいことが書かれている。
「お前、ふざけてるだろ。エギル」
そのページには、こう書かれていた。
【クリア不可能と言われた半仮想世界をクリアした、片手剣使いと長剣使いのカップル!男の方は、二本の剣を操り次々とゾンビを倒し、さらにボスをも撃破!!その強さはまさにチート!!】
「チートだってよ、シュウよ」
エギルはニヤニヤとした俺を小馬鹿にしたような顔で見る。
「にしても、お前が普通のゲームで本気を出すなんてどういうことだ?何かあったのか?」
エギルは次に真剣な顔になって俺に問う。それもそのはず、俺は新生ALOでメッタなことがなければ槍剣と手刀で戦ったことはない。
ちなみに新生ALOでは、全てのユニークスキルは廃止されたが《手刀術》だけはユニークスキルから通常スキルに変わったのだ。だから全プレーヤーが手刀を使えるようになったのだ。
「そうだな。.........エギルには話すか」
俺も真剣な顔になりエギルに話す。俺が感じた違和感を。
「つまり........あの世界は脳を操作してるって言いたいのかお前は」
「ああ、まあ、だいたいそういうことだ。じゃなきゃ、俺が仮想のあいつに飛ばされた理由が説明できねぇんだよ」
「ボスのモンスターだけが仮想じゃなくて現実の何かだとしたらどうだ」
「それはないな。あとで聞いたが、スグが避難してから一回アミスフィアを外してみたらしい。するとそこにいたのは、二本の剣の柄の部分を持った俺しかいなかったそうだ」
「なるほどな。つまりあのゲームにこれ以上いるとマズイと判断したから二刀流で戦ったってわけか」
「ああ、そういうことなるな」
《MMOトゥデイ》のページをペラペラとめくるとそこには、このアミュスフィアの開発者の姿と名前が載っていた。
「........比嘉タケル...........何を考えてるんだ.....」
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