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ソードアート・オンライン~豪運を持つ男~

作者:
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悲しい現実



   *   *   *


「ありがとう。じゃあ、しばらく宜しく。僕は《コペル》」

「俺はジン。それでさっき話していた奴がキリトだ、まあよろしくな。」

  と俺が説明し、お互い軽い自己紹介を済ます。そんなかんだで俺達は、コペルと協力して《花つき》出現のためのリトルぺネント乱獲作戦を開始した。

 なんかコペルが、「キリト………あれ、どっかで聞き覚えが………」
といって首をかしげていたけど気にしない。

 たぶんキリトは《元βテスター》だから、その時に何らか間接的に会ったか他の人に聞いたりしたのだろう、と俺は推測する。



 キリトはあもむろに、
「たぶん人違いだよ。さぁ、がんがん狩り尽くそうぜ!。他のプレイヤーが追いついてくる前に《胚珠》を二個出さないと」
といって話を強引にそらしている。

 コペルもその強引な姿に、
「う…うん、そうだね。頑張ろう」
と少し引き気味である。
 《βテスト》の時になにかやらかしたのだろうか?
 少し気になったジンであった。(笑)とりあえず話をしていても拉致があかないので、「了解。」とだけ返す。

 そんなかんだで俺たちは互いに静かに頷き合い、近くに存在していたリトルネペント向かって駆け出した。




SIDE ジン

 元βテスターであるコペルが参加してくれたことで、ネペントの乱獲はさらにスムーズとなった。
 乱獲をするにつれて、コペルが最初にネぺントのタゲを取り、俺とキリトが弱点部位を全力で攻める連携パターンが何時の間にか生まれ、三人で続々と現れるネぺントの群れを着実に撃破して行く。

 だが、その中にはSAOの現状についての話は無かった。誰かが口を開いてもそれはクエストの内容やアイテムの話ぐらい。三人全員が死の恐怖より自身の強化を優先にしていた。
 いや、それはきっと俺達三人がこの現実――《現実の死》を考えずに剣を振るっているんだ。理解していたら、たとえ強くなりたいからとはいえ、こんな暗い森の中でレベル上げなんて愚考も良いところだ……
 考えを一段落した時、眼前に映っていたキリトのアバターの姿が一瞬だけ止まった。スタンになった訳でもなく、リトルネペントに対し剣を振り上げている状態で体が止まった。即座に危険だと感じた俺は腰からダガーを抜き放ち、この数分間で熟練度が上がり、威力も向上した《シングルシュート》を発動する。
 ダガーはキリトを襲い掛かろうとしたネペントの茎の部分を貫通すると途端にネぺントの身体はポリゴンへと姿を変え、破砕音と共に爆散する。


 ゲームの中なので、頭が痛くなったとかではないと思うので、とりあえずキリトに「どうした?」と質問する。


 キリトもこっちの質問の意味を理解したらしく、小さな声で
「あ、ああ…ちょっと色々と考えていたんだ」
と声を漏らした。

 流石にダンジョン内なので、気を引き締めないと最悪死ぬ。
 そう思いキリトにちょっときつめに、
「考え事って、さっきのはさすがに危なかったぞ」
と注意する。


 あっちもそのことは十分理解しているから素直に「悪い。」とだけ返した。
 かくいう俺もそんな人のことをいえる立場じゃないので、
「いいさ。俺も人のこと言えないからな」
と返す。


 その時、俺とキリトの背後で再びポリゴンの破砕音が響く。振り返るとコペルがネペントを屠ると、ふぅっと息を吐きながらこちらに振り向く。そして、
「出ないね・・・・・・・。」と呟く。

 コペルの声にはやはり疲労の滲んでいる。三人で乱獲を始めてもうすでに一時間はたっていると思う。
 倒したネペントの数は、三人合計したら優に百五十は超えるだろうが一向に《花つき》は姿を現さない。加えて、俺も含むがかなり精神的にかなり疲労が来ている。武器の耐久力も関係あるし、そろそろ引き際だろうか。

「だな…このままだとこっちがジリ貧になる可能生が十分にある。」
とキリトも同意する。

 幸いにも他に人が来る気配もないし、時間ももう夜だから多分他の人が来るのは早くて明日だろう。
 それまでに装備などを整えて、朝早くにきたら狩場は大丈夫だろう。

 キリトは少し考えた後、
「もしかしたら、βの時の出現率が多少変更されているのかもしれないな。」
と呟いた。
 成る程、それはおおいにありえる話だ。この手のネトゲは、レアのドロップレートとかは正式サービスで下方修正されることが多い。他のMMOでも聞いたことはいくつかある。

それに納得していると、キリトが多少笑いながら
「……それか、ジンの尽きた運がここで影響しているかもな」
といってこっちを見た。

 こちらも笑い、それをいうなと軽口を叩きながらも、俺は提案した。
「しかし、どうする?皆のレベルも上がったし、武器もかなり消耗していると思う。ここいらで引き上げるのも―――」

 と、俺が言い掛けた瞬間、俺達から数十メートル程離れた木の下に一つ集束し始める赤い光。
 四角形のポリゴンブロックが幾つも生まれ、それ等が組み合わせって大まかな形を作り上げる。それは見慣れた光景の一つ――モンスターの|湧出(ポップ)だ。

「「「…………」」」


 俺たちはその場に立ち尽くし、ただ黙ってその光景を眺め続けた。
 『どうせまたノーマルネペントだろう』と頭の中で思っていると、ネペントは数秒でその姿を形成して、ツルをうねうねさせながら歩き始める。生物めいた光沢のある茎、マダラ模様のある捕食器、その上に――見覚えのあるチューリップに似た巨大な赤い《花》。


「「「………」」」


 ぼぉーっと眺めた後、俺たちは顔を見合わせる。そして、その次に、
 

「「「………―――!!!」」」



 言葉にならない雄叫び。それと共に自身の剣を握り、食料を見つけた捕食者の如く勢いでやっと湧出(ポップ)してくれた(花つき)に飛び掛ろうとした時―――
 突然、キリトによって静止された。突然急ブレーキをかけたキリトは両手を使って俺とコペルを止める。
 何事かと、キリトを見るとキリトは冷静に左手の人差し指で段々と遠退いて行く《花つき》の背後を指す。木々に遮られていて、見えにくいがそこには何かの影が見える。そして、じっと見ているとそこには捕食器の上には直径二十センチメートルの大きなボールを付けているネペントがいた。 

 そういえばキリトは確かネペントには3種類いると言っていたことをふと思い出す。
 今まで見たのは一番最初にエンカウントした《花つき》と、さっきまで倒していた通常ネペントのみだ。後1種類足りない。するとこいつが残りの・・・・・。


「あれは……」

「……《実つき》だ」


 俺の呟きにキリトは返してくれた。さっきキリトからのネペントの情報で聞いた三種類目のネペント。その付けているその実を少しでも攻撃したら大きな破裂音と共に独特な臭いを周囲に撒き散る。
 その臭い自体は俺達、プレイヤーには何かのステータス異常を与える事は無いが、エリア中のネベントが集結し襲い掛かってくるといういわゆる《罠》モンスターなのだそうだ。


「…どうする……?」


 キリトの呟きにコペルの低い囁きが聞こえる。


「――行こう。僕が《実つき》を押さえておくから、キリトとジンは速攻で《花つき》を倒してくれ」

 そして、返事を待たずにコペルは踏み出した。


「ああ!」

「………解った」


 俺達は答え、コペルを追う。
 
 《花つき》は《実つき》を目指すコペルの接近に威嚇するように咆哮を上げて、ターゲットにし続ける。その隙に俺とキリトは《花つき》に接近しながら空いていた右手にダガーを握り、《シングルシュート》を発動させる。ダガーはウツボ部分を貫通して瞬く間にHPバーは黄色にすると、キリトが起動していた《ホリゾンタル》の青い弧線が茎部分を切断する。
 ノーマルとは違った断末魔を上げ、地面に落ちるウツボ部分が落下すると頭頂部から花が散り、一つの球状の物体が転がって来る。それはころころと横にいるキリトのブーツに当たるとそれと同時にネペントの胴体と捕食器は爆散した。
 キリトはすぐに光る赤い玉《ネペントの胚珠》拾い上げる。


「急ぐぞ、キリト!」

「ああ!」


 胚珠を腰のポーチに収納するキリトを見ながら、自分も右手にダガーを握り、今だ危険な《実つき》のネペントと戦っているコペルの援護の体勢に入る。



「悪い、待たせた!」


 そう叫びながらキリトも剣を握り直し、コペルの加勢に入ろうとしたんだが―――


 だが、俺達の足は勝手に止まった。
 目の前ではコペルがネペントの攻撃をあしらいながら、その真面目そうな印象を放つやや細めの両眼が俺達をじっと見ている。
 ――なんだ、その眼はなんだ。
 その眼はまるで俺達を哀れむようなそんな眼だった。コペルはネペントのツルの攻撃をバックラーで大きく弾き返いて、戦闘を|寸断(ブレイク)して、立ち尽くす俺達を見て、短く、そしてどこか申し訳なさそうに言った。


「―――ごめん、キリト、ジン。」


 そして視線をモンスターに戻すと、右手の剣を大きく頭上に振りかぶる。
 刀身は薄青く輝いていく。あのモーションは――単発垂直斬りソードスキル|《バーチカル》だ。

 
「いや……だめだろ、それ……」

「おいおい、冗談だろ……」


 俺達は無意識にそんな言葉を発するが、コペルは止まらず地面を蹴る。振り下ろされた刃は《実》もろともネペントを両断した。
 パアァァン!
 凄まじい破裂音が森の中に響き渡り、それと共に実の中から薄い緑色の煙と異様な匂いが解き放たれた。
 その行動に一寸の迷いは無く、意図的に引き起こしたものだとすぐに理解出来た。
 そして、すぐに悟った―――俺達はコペルに裏切られたのだと……



SIDE OUT




* * *




「な……………なんで……」

「コペル…テメェ……!」


 目の前で起こっていることに俺達は、呆然としながらそんな言葉しか絞りさせなかった。
 それが聞こえたのかコペルはこちらを見ずにもう一度言った。


「……ごめん」


 その瞬間、この場を包囲するように現れる幾つものカラー・カーソル。実の破裂音と今も周りに漂っている薄緑色の煙に引き寄せられたこのエリア中にいるネペントの大群だ。その数はざっと三十体はいる。
 この場から離脱しようにこの包囲網を突破しても、ネペントの最大移動速度はその外見からは想像出来ないほどで、こっちが引き離す前にすぐにターゲットされる。もはや離脱することは出来ない。


(コペルの奴……俺達も巻き込んで自殺する気か!?)


 立ち尽くしたまま俺は、そんな憶測を立てていたがそれは誤りだった。
 コペルはもう俺達には目も呉れずに剣を左腰の鞘に納めて、振り向くと近くの藪に走っていった。その行動には一点の迷いはなく、こんな状態を引き起こしたのに彼はまだ生きようと抗いているようにもみてとれた。


「無駄だよ……」


 不意に呟いたのはキリトだ。
 キリトの言うとおりだ。周囲を見渡せばありとあらゆる方向からリトルネペントが徐々に徐々に迫っている。この包囲網を抜けるのはまず無理だ。視線は自然と密生した木々の中を駆けるコペルの背中に行っていた。 
 そして、アバターの姿は見えなくなり、ただカラー・カーソルだけは表示されたままだった。
 が――、そのカーソルは忽然と消えた。


「なっ…消えただと!?」


 眼に見えている現象に俺は思わず声を上げていた。


「《隠蔽(ハイデイング)》スキルの特殊効果だ」

「特殊効果……?」


 冷静に俺の疑問に答えてくれるキリト。聞き返すと、キリトは頷いてから言葉を続ける。


「その名のとおり、プレイヤーからはカーソルを消し、モンスターからはターゲットにされない効果だ。
コペルは二つ目のスキルスロットを空けてたんじゃなく、俺達に会う前に最初から隠蔽スキルを取得していたんだ。だから最初の会った時に、背後から来たコペルを気づく事が出来なかったんだ」

「なるほど……コペルは最初から俺達を《MPK》するつもりで接触してきたってことなのか……」

「……そうだろうな」


 《モンスター・プレイヤー・キル》通称《MPK》。古典的なプレイヤーキルのひとつだ。俺もその手のことは他のゲームでやったことはあるので、あらかたは判るつもりだ。


 そうと分かれば、俺にでも動機も分かる。それはキリトが持つ《ネペントの胚珠》を奪うためだ。
 俺が持っている《胚珠》はアイテム欄に納めているが、キリトが持つ《胚珠》はポーチの中に入れているため、もし死ねばその場でドロップする。コペルはネペントの大群が去った後にそれを拾って村に戻り、クエストを無事完了、というわけか。


「………そうか……」


 もはや視認でも分かるぐらいまで迫ってくるネペントの大群に対し、隣に立つキリトは静かに佇んで小さく呟いた。


「コペル……知らないんだな」


 それからキリトはまるで語り掛けるような口調で話しだした。


「多分、《隠蔽(ハイデイング)》スキルを取るのは初めてなんだろう。あれは便利なスキルだ。でも、残念ながら万能じゃないんだ。あれは視覚以外の感覚を持っているモンスターには、本当に効果が薄いんだよ……たとえば、リトルネベントみたいなやつとか」

「ッ……!?」


 キリトの言葉に偽りは無かった。ネペントの大群の一部は明らかにコペルが身を潜めていた藪を目指している。今頃、コペルは姿を隠しているのにターゲットされているのに驚いている頃だろう。
 そして、無言のままキリトは後方へと振り返った。前方のリトルネペントの大半はコペルの方へと流れていくから、後方程多くは無い。それでも、ここにはまだ大量のリトルネペントが来るのは確定だ。


「……ジン」

「ああ……背中ぐらい守ってやるよ」

「……助かる」


 俺とキリトは、互いに背中を預けるようにして手にしているスモールソードを握りなおす。今までの戦闘で剣の耐久度は俺もキリトもかなり消耗して、そこらかしこ刃こぼれしている。下手に使えばすぐにぽっきり逝ってしまう。
 その時は投擲用のダガーで戦うしかないが本数もすでに十本ぐらいまで減っていて心もとない。
 故に、確実に弱点である茎部分を切り裂いて一撃必殺で倒さなければならない訳だ。横からはモンスターの咆哮と攻撃音がして、そしてコペルの叫び声が聞こえてくる。
 だが、俺はそちらを見る余裕などどこにもない。迫るネペントの大群に対して、意識を集中して一気に地面を蹴った。






 それから数分間の記憶はかなり曖昧になっていた。ただ、眼前のネペントの茎一点を斬り、ネペントの攻撃モーションが目に入ればその攻撃をかわしていた、ということしか思い出せなかった。
 だが、死角からの攻撃には完全にはかわしきれず、そのたびに俺のHPバーが削られ、《死》が近づいてくる。
 そして、生と死の狭間に立って初めて《現実》を感じることが出来た。
 だからこそ、死にたくないという気持ちが胸の中から一気に湧き上がり、それが原動力となって体を動かす。


「破っ!!」
 

 今までに無い気合を込めた掛け声と共に《ホリゾンタル》でネペントの茎を切り裂く。そして、短い技後硬直から解放されてすぐに迫ってくるネペントにダガーを投げて、怯ませた隙に近づいて《ホリゾンタル》で茎を両断する。
 そんな時、突然、カシャアァァン!というひときわ鋭いポリゴンの爆発音が響いた。モンスターの破砕音とは違う音に誰がこの場から消えたかはすぐに分かった。


「…………」


 爆発音がしたほうに視線を向けると藪の中からは七体のネペントが現れる。そこにはコペルの姿は無かった。


「………お疲れ様……。」


 俺の隣に来たキリトは、ネトゲで《ログアウト》する時の定番の挨拶をコペルに告げてからぼろぼろの剣を構える。俺も同じくらいぼろぼろとなった剣を構え、正面を見る。
 新たな獲物を見つけ、突進してくるネペント七体の先頭にいたのは捕食器の上にはマッカな《花》を咲かせていた。
 二体目の《花つき》……俺達を《MPK》せずとも共に地道に乱獲を続けていたらきっと、コペルも《胚珠》を手に入れていただろう。だが、今更そんなこと思っても後の祭り。コペルが取った行動は彼自身が自ら決めたことだからだ。
 HPは二人とも少ない。もう少しで危険域の赤に変わりそうだがもはやここで死ぬ気はしなかった。七体の内、腐蝕液を放とうとしている二体のネペントを前に俺達は駆け出し、ほぼ同時に二体を撃破した。
 そして僅か十数秒で残り五体を仕留めて、やっと戦闘を終えることができた。






 コペルが消滅した場所には、彼が使っていたスモールソードとバックラーが転がっていた。消耗具合は俺達と似たり寄ったりだ。
 少し考えていたキリトは剣を拾い上げると周囲の木々の中で最も大きな樹木の根元に突き刺し、そしてその剣の根元にさっきの《花つき》が落とした《胚珠》を置いた。


「お前のだ、コペル」

 
 そう呟いてからキリトは屈んでいた身体を起こし踵を返す。俺はその墓標を少し見てから、キリトの背を黙って追った。
 三人がかりの乱獲によってこのエリアのモンスターは枯渇し、俺達はモンスターにエンカウントすることも無くホルンカに帰り着いた。村の広場に数名のプレイヤー、恐らく《元βテスター》の姿があった。今は誰とも話したくない俺達は気づかれないように依頼主のいる家へと向かった。
 
 とりあえず、先にクエストを受注しているキリトが報告するためにノックして家に入っていった。俺はただ玄関扉で凭れ掛かってキリトを待っていたんだが、時間が経過したが一向にキリトが出てくる雰囲気は無い。


「……遅いな」


 不思議に思った俺は家に入ってみる。すると奥の部屋でキリトの身体は大きくよろけ、ベッドに両手を置くとそのまま床に膝を着いていた。思わず俺はキリトに駆け寄る。


「どうした、キリト!!」


 そう問うがキリトはただ嗚咽を漏らし、全身を震わせ続けるだけだった。


「………どうしたの、お兄ちゃん?」


 ベットの少女はそう呟き、小さな掌はキリトの頭に触れた。それから、キリトが泣き止むまで、何度も何度も撫で続けていた。




「……落ち着いたか?」

「あぁ……えっと、その……」

「心配しなくてもお前が泣いた理由を聞くなんて無粋なマネしないからよ」

「……わるい」

「いいさ。人間だから喜怒哀楽があるんだ」


 依頼主の家を出た後、俺達は家の裏にある野原にいた。キリトは暗い表情のまま、体育座りで俯いている。俺はその横に座って上を見上げていた。


「……会いたいな、家族に」


 これは俺の憶測だがキリトが急に泣いたのはあの少女が妹か弟に重なって見えて、それで今まで本能的に抑えていた気持ちが溢れてきたのだろうと思う。


「あぁ……会いたい…今すぐ……会いたいよ」

「…ああ」


 擦れ声で言うキリトの言葉に俺もしっかりと相槌をする。こんな死と隣合わせのところ、しかも会いたい人に会えないのは辛すぎる。かくいう俺もキリトの前ではなかったら、その重さに耐えられなかっただろう。


「なぁ、ジン……」

「なんだ…」

「必ず…必ず生きて帰ろうな」

「……当たり前だ」


 キリトは俯いていた顔を上げるとその瞳には真っ直ぐな強い意思を感じた。


「悪いな…つき合わせちまって」

「いいってことさ…さて、俺も剣を貰ってくるかな……っと、その前に」


 俺は思いだしようにウインドウを出して、操作をするとキリトの前にもウインドウが出る。
 俺がキリトには送ったのはフレンド申請。あとはキリトがYES/NOを押せば、返答が返って来る。キリトは迷いなくウインドウを押すと新たなウインドウが現れた。


『《Kirito》とのフレンド登録が完了しました』


 それを見てから、笑いながら俺は手を差し出すとキリトも少し固いが笑いながら手を差し出して固く握手をした。
 こうして、この壮絶すぎる|もう一つの現実(ソードアート・オンライン)の一日目がやっと終わった。

 
 

 
後書き
はぁい!どうも空です!!
 ということで原作どおりにコペルには死んでもらったんですが(笑)、これも主人公とキリトの絆を深めるには
 しかたないかなということでなくなくコペルを救えませんでした。

 べ、別にコペルを救った後の話が書けなったからじゃないんだからねっ!!
 
 とまあこんなかんじで主人公がどたばたしながもがんばっていく話です。


 こんな駄文ですが、何卒よろしくお願いします!?

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