豪華な地下室
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第二章
「あそこにいるのよ」
「そうなんだね、しかしね」
夫は妻に言った。
「あの部屋は元々は」
「防空壕よね」
「戦争の時のね」
「それでも今はいいお部屋になってるでしょ」
「うん」
妻のその言葉に頷いた。
「実家に帰った時に聞いて見たままね」
「私が見てもいいお部屋よ」
「そうだね、けれどね」
夫は妻にそれでもと話した。
「何かあったら」
「防空壕になるわね」
「元々そうだしね」
「それでも今は平和でね」
それでとだ、妻は夫に言葉を返した。
「そうしたことにも使われないし」
「それでだね」
「もうね」
それこそというのだ。
「子供達が遊んでもね」
「いいんだ」
「そうでしょ」
「そうだね、悪いことしている訳じゃないし」
「別に誰か連れ込んで、とか煙草吸ったりとかしてないでしょ」
「そんな子達じゃないしやったら」
「すぐわかるでしょ、私達だって入ること多いし」
その地下室にというのだ。
「快適なお部屋だし」
「本も沢山置いてるし」
「だからね」
部屋の中でよからぬことをしないからだというのだ。
「それじゃあね」
「いいね」
「ええ、ただ世の中何があるかわからないから」
妻はこうも言った。
「戦争になることもよ」
「有り得るね」
「その時はね」
「あそこを防空壕にするね」
「そうするけれど」
それでもというのだ。
「その時も快適に限るでしょ」
「やっぱりね」
「その時は防空壕として使いましょう」
「今で言うとシェルターだね」
「戦争なんて起こらないに越したことはないけれど」
それでもというのだ。
「若し起こったら」
「その時は」
「そうして使いましょう」
「そう思うと子供達が遊んでいたらいいね」
「そうしたお部屋でね」
そうした話をしているとだ、その子供達が戻って来た。
「晩ご飯何?」
「今日は何なの?」
「それはね」
母は笑顔で応えた、そして浩光の両親も入れて家族で夕食を食べた。その夕食は実に美味いものであった。
豪華な地下室 完
2025・2・23
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