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FAIRYTAIL〜星の王子様〜

作者:花神スギ
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10話~ウィリアムの提案~

 
前書き
オリキャラ登場人物


 

 
10話~ウィリアムの提案~

 マグノリアの病院の一室。

 レヴィ達の眠る場所にルーシィと幽鬼の支配者の魔導師、ウィリアムが話をしていた。

「今回の妖精の尻尾の魔導師への襲撃……独断での決行……拙者が知らぬところで行われてしまった。この事に関しては、深く……深く……謝罪する」

 ウィリアムは、ルーシィに頭を下げる。
 勝手な行動はさせないように、ガジルとロフォロンを見ていたが隙をつかれウィリアムの知らぬところで襲撃が行われてしまった。

 そのような卑怯な手段にウィリアムは、激しい怒りを持っていた。

 ギルド同士の抗争。
 昔から妖精の尻尾と幽鬼の支配者の衝突はあったが、このような事態を止められなかったことに対して己の未熟さに嫌気がさす。

 ウィリアムにとっては、幽鬼の支配者が大切であり、大切であるがゆえ、全うなギルドのままでいたかった。

 しかし、火種は撒かれ、燃え上がってしまった。こうなってはどうにかして、炎上を鎮火するしかないとウィリアムもまた独断の行動をする。

「謝るなら……レヴィちゃん、ジェット、ドロイに謝ってください、あたしは許せない!……幽鬼の支配者も……ヨゾラも……」

 どんなに謝罪されようが、傷つけられた仲間を大切に思うルーシィにとって許せることではなかった。

「3人が目覚めてから深く謝罪するつもりだ、この薬を3人に」

 ウィリアムは、竜錆を治すことのできる薬、特殊な油が入っている小瓶を渡す。
 ロフォロンの錆の滅竜魔法での竜錆現象は、普通の治療では治すことができなく、本人が作り出した特殊な油でしか治すことはできない。
 ガジル、ロフォロンの監視役である、ウィリアムは常に非常事態のためにロフォロンから譲り受け持ち歩いていた。

「……ありがとうございます。でも、あたしは許すことはできません」

「分かっている。それほどのことをしてしまった。許してもらおうとは思ってはいない。拙者はただ本来心優しい仲間が手を汚すのは見たくないゆえ」

「……お優しいんですね」

 幽鬼の支配者にも、ちゃんとした人は居るのかとルーシィは思うのだった。

「ルーシィ、拙者からの提案がある。拙者はこの抗争を止めたいと考えている」

 ウィリアムからの提案。
 幽鬼の支配者と妖精の尻尾の抗争を止める。

 ルーシィとて、これ以上仲間の傷つく姿は見たくはない。

「分かりました、あたしに出きることなら」

「話が通じる相手で感謝する」

「それで、どうやって止めるのですか?」

 ルーシィは、止めるためならば協力することを考える。

「簡単なことだ、ルーシィ・ハートフィリア。拙者のギルドに来てもらう。さすればマスタージョゼとて納得して抗争を止めるであろう」

 ルーシィは、思考が停止する。
 何を言っているのか?

「なんで、あたしが!?」

「この抗争の原因はルーシィ・ハートフィリア……お主である」

「あたしのせい?」

 ルーシィは、考える。
 一連の流れ、ヨゾラが幽鬼の支配者と共に居ること、答えは。

「パパなの?全て、パパの仕業なの!?」

「拙者達は、お主の父親である、ジュード・ハートフィリア殿から依頼を受けた。お主を連れ戻すように……そして、邪魔するものの排除を」

「パパからの依頼…………あたしを連れ戻すために……あたしの……あたしのせいで」

 ルーシィは、ヨゾラの独断での行動かと思っていた、しかし裏には自身の父親が全てを仕組んでいたことを知る。

「今から拙者達のギルドに来れば、全ては終わる。その後は再びハートフィリア家の令嬢として生きればいい、その手助けならば拙者は全力で手伝おう」

「あたしが帰れば…………」

 自分が帰れば、全てが終わる。
 もう、仲間も傷つかない。

「どうする?ルーシィ・ハートフィリア?」

 選択が迫られる。
 仲間か?自分の人生か?

 そんな時であった。
 1人の少女が

「ダメ……ダメよ!ルーちゃん……」

 弱々しい声。
 痛みや苦しみに耐えながら、レヴィがルーシィに言った。

「レヴィちゃん!意識が戻って……」

「ルーちゃんがどんな状況なのか詳しくは知らないけど……ルーちゃんが我慢して……やりたくないことをしちゃ……ダメ……」

「レヴィちゃん」

「それに……みんな、同じことを言うはず。仲間の命ぐらい賭けてみろって!!ルーちゃん、貴女はルーちゃんの好きなようにしていいの……迷惑だなんて思わない!……だって、それが仲間でしょ?友達でしょ?私たちは誇り高く仲間のために……泣いている友達を……見捨てるようなギルドじゃ……ない!!!」

 レヴィの思い。
 どんなに傷つけられようが、決して妖精の尻尾は仲間を見捨てない。

 妖精の尻尾のみんなは家族だから。


「だから……ルーちゃん。自分を責めないで…………っく!?」

 レヴィは再び痛みと苦しみにより意識を失う。
 そして、ルーシィの答えは。

「あたしは……あたしは帰らない!あたしの居場所は妖精の尻尾!」

 ルーシィの出した答えはウィリアムの提案を拒否する形となった。

「ルーシィ・ハートフィリア、後戻りはできぬぞ?この先、ギルドの多くの仲間が傷つくことになる……それでも覚悟は変わらぬか?」

「えぇ!あたしの考えは変わらない!この先どんなに悲しい事があろうと、あたしは妖精の尻尾のみんなと生きていくんだ!妖精の尻尾はあたしの家族だから」

 ルーシィの返事を聞いて、ウィリアムはフッと笑い。

「拙者は妖精の尻尾が羨ましい。拙者達のギルドもそのようにできればよかったが…………その、覚悟は受け取った。これより、拙者達、幽鬼の支配者は一切の手加減もなく、妖精の尻尾を潰そう……それが、今この時から決まったルールだから」

 交渉は決裂。
 この先はもう、戻ることはできない。
 どちらかのギルドが敗北するまで。

 ウィリアムも迷いはなくなった。
 これほどの覚悟を見たのだ。
 自分達も対峙するのに恥ずかしくない覚悟で妖精の尻尾と戦うと。


「拙者はこれにて失礼する。次会う時は敵同士、手加減などは許さぬ。全力で来るのだ」

 部屋の中に、激しい風が吹き荒れる。
 吹き荒れる風が静まると、ウィリアムの姿はなくなっていた。








 病室の扉の前、アリスがルーシィとウィリアムの会話を聞いていた。

「レヴィ、良いこと言うじゃん……アリスも同じ気持ちだよ……必ずルーシィは守るから」

 ウィリアムが去ったことを確認するとアリスは病室へと入る。

「ルーシィ~、レヴィ達は大丈夫~?」

 のほほんとした、いつも通りの喋り方と声色でアリスはルーシィの前に現れた。

「アリス?どうしてここに?」

「レヴィ達のお見舞い~、それとミラにお願いされて~来たの~」

「ミラさんに?」

「ミラがルーシィが狙われる可能性があるから、一緒に居てって~、ミラの勘は当たるからね~」

 アリスはルーシィの事情を知っているため、ミラジェーンのお願いに応えるためにルーシィの護衛として訪れたのだった。

「そういえば、コタロウは?」

 コタロウとは、アリスが連れている猫。
 ハッピーと同じ日に産まれたオス猫である。

「コタロウは、ミラ達と対幽鬼の支配者の作戦会議に参加してるよ~、あの子、頭がいいから~。でも、コタロウ居ないから迷っちゃった~」

「やっぱり、コタロウが居ないと道に迷うのね」

「うん!」

「自信満々に言わないでよ……ところで、ナツ達は?」

 ルーシィは、いつものメンバー達が居ないのが気になりアリスに質問する。

「ナツ達ならね~、幽鬼の支配者のギルドに乗り込んで行ったよ~」

「え!?みんな!?」

「うん!幽鬼の奴らをぶっ飛ばしてくるって~、その間、アリスはルーシィの護衛~」

 妖精の尻尾のマスターマカロフは、ギルドの主力達を連れて、幽鬼の支配者のギルドに乗り込んでいる。
 マカロフ自ら、決着をつけるために。

「大丈夫かな?」

「みんな、強いから大丈夫~!」

「そうだよね……」

 ルーシィは、幽鬼の支配者に乗り込んでいったみんなを心配するのだった。


 幽鬼の支配者と妖精の尻尾の抗争は止められない。どちらかが敗北するまで。


 少し先の未来の出来事。

「マスターが!マスターマカロフがやられた!退却だ!退却しろー!」

 妖精の尻尾のマスター。
 マカロフ・ドレアーの敗北。

「嘘だ……嘘だ!ナツが!?」

「おい!ニコニコ野郎!火竜は俺の獲物だぞ!?横取りしやがって!」

「お嬢様を妖精の尻尾などと、くだらない事に巻き込んだ……ナツ・ドラグニルが悪いんですよ?」


 少し先の未来の話し。
 一歩、一歩と近づいている。










 
 

 

 

  
 

 
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