仮面ライダーコウガ〜A NEW AGE HERO〜
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EPISODE.02 覚悟
前書き
用語図鑑
仮面ライダークウガ:読者達の世界でも放送されていた特撮テレビドラマ。コウガの世界でも放送されていたが、こちらと異なり、クウガ以前の作品及びそれ以降のシリーズ化もされていない単品特撮作品となっている。
ゲーム:グロンギの行う殺人行為。失敗時にノルマを大きく下回った場合はゲブルコアを暴発させてプレイヤーを爆死させる他、プレイヤーが達成容易と判断した場合はより難しいノルマに変更することも可能。
レジェンド活動拠点
-AM11:50-
ゲゴガとの戦いにより意識不明となった御礼は櫛田の運転する車に乗せられ、菊池に診察してもらうためにレジェンドの拠点に運ばれ、治療を受けるはずだった。
「凄まじい回復力ですね。胸部に複雑骨折の痕跡がありますが、既にほぼ完治しています。意識を失っているのは、初めての戦闘による疲労と筋肉痛からでしょう。」
菊池は御礼の容態に驚きと感心、そして興味をいだいていた。
「アマダムコア、これだけ莫大なエネルギーを秘めているなんて、これと同質のものをグロンギは有していると考えれば、警察でも刃が立たないのも納得ね。」
レントゲン写真を見た檜木も、関心を示す。
「ですが、やはりただの民間人にアマダムコアを使わせるのは危険です。すぐに摘出をしましょう。」
櫛田はただの一協力者に過ぎない御礼にアマダムコアを与えることの危険性を危惧し、摘出するよう促す。しかし、
「そうはいかないんですよ。現状、アマダムコアは粒子状になって御礼さんの体内に入り込んでいますし、エネルギーラインが循環器官に侵入しています。下手に摘出すれば、御礼さんの体組織を破壊し、命を奪う可能性が大いにあります。」
菊池はアマダムコアと御礼の肉体が一体化してしまっている観点から摘出は危険だと判断する。
「ですが、なんの覚悟もない人に渡したままで、グロンギに殺されてアマダムコアを奪われたらどうするんですか!それなら危険が伴っても摘出し、彼には後方支援に回ってもらう。その方が全員のためになるのではないですか!」
櫛田は言葉に熱がこもる。
「櫛田、その辺にしておきなさい。少し熱がこもっているみたいだから、一服してくるといい。」
状況を見て城ヶ崎は議論を止める。
「…失礼します。」
櫛田はやや納得できずに退室する。
「ところで御礼君、そろそろ寝たふりはやめても大丈夫よ。」
檜木の言葉を聞き、御礼は目を開く。
「檜木さん、いつから気づいていたんですか?」
「御礼君って、寝たふりをしているときって、いつも鼻がひくひくしているから丸わかりよ。」
御礼の疑問に檜木はさらりと答える。
「にしても、アマダムコアの回復力には驚かされますね。」
すくっと立ち上がる御礼を見て菊池は驚く。
「では改めて御礼君、ようこそレジェンドへ。俺がこのチームのリーダーを務めさせてもらっている城ヶ崎だ。」
城ヶ崎は笑顔を絶やさずに御礼と握手を交わす。
「本日より、正式にレジェンドの一員として協力させていただきます、考古学者の御礼大輔です。なれないことばかりかもしれませんが、よろしくお願いします!」
御礼も軽く自己紹介をする。
「さて、今後のことで御礼君とは個人的な話がしたい。屋上までついてきてくれるかな?」
「はい!」
城ヶ崎と御礼は退室し、屋上へ向かう。
「御礼君は初めて変身してみて、どうだった?」
「やっぱり、テレビのヒーローとは全然違いました。子供の頃は、ヒーローに変身して悪い奴らをやっつけるぞ、なんて思っていました。でも、実際に変身して、眼の前の怪物と戦うってなって、思うように手足が動きませんでした。警察の方って、凶悪犯罪を相手にするときって、いつもこんな場面で、恐怖心を押し殺しているんだって、思い知らされました。」
城ヶ崎の質問に御礼は答える。
「どうする、もしアマダムコアを摘出できて、後方支援でグロンギ暗号の解読だけを任されるとしたら。」
「もしできたとしても、断ると思います。」
「どうして断るんだい?わざわざ怖いこと、辛いことに向かわなくて済むんだぞ?」
「確かに、グロンギは怖いです。それでも、グロンギ暗号の解読のためには、彼らときちんと向き合う必要があります。間近でグロンギ暗号を聞いて、言葉の意味は理解できませんでしたが、口調から強い殺気を感じました。向き合って、言葉をかわし合うことが、理解への第一歩だと俺は信じています。そのためには、彼らと同じように、コアの力で変身して言葉の真意を理解したいと思います。アマダムコアが俺を選んだのは、きっと、そういうことなんだと思います。」
城ヶ崎の意地悪な質問にも御礼は真っ直ぐに城ヶ崎を見つめて答える。
「そうか。ならまずは、白から黄色になれるように頑張れよ。」
城ヶ崎は御礼の肩を叩く。
「黄色…赤じゃないんだ…」
御礼は呟く。
「ん?どうして赤だと思ったんだ?」
御礼の呟きを城ヶ崎は聞き逃さずに質問する。
「あっ、すみません!昔観ていたヒーロー番組で、覚悟を決めたヒーローの色が、白から赤に変わったのを思い出して。」
御礼が答えると、
「もしかして御礼君、クウガ観たことあるの?」
城ヶ崎は話に食いつく。
「城ヶ崎さん、クウガ知っているんですか!?」
「ああ、仮面ライダークウガだろ?娘が好きで、昔一緒になって観ていたんだ。」
「娘さん、おいくつなんですか?」
御礼が質問すると、城ヶ崎の表情は暗くなる。
「生きていたら、今頃は御礼君と変わらないくらいだっただろうな。」
その回答に、御礼は申し訳ない表情を浮かべる。
「その、お答えづらいことを聞いてしまいすみません。」
御礼は謝る。
「実はな、俺の娘は今から14年前、中学生だった頃にグロンギの連続殺人事件の被害者になってしまったんだ。それがきっかけで夫婦仲も悪くなって、離婚して今は独り身ってわけだ。俺が任されたのも、捜査一課の中でグロンギ事件に一番携わっているからでもあるんだ。本来なら、嘗ての事件の被害者遺族である俺は捜査から外されるのがセオリーだけれど、相手はルールの通用しないグロンギだ。こちらも正攻法では対応できないと上が判断して、俺がリーダーに選ばれたんだ。」
城ヶ崎は自身の身の上話をする。
「そうだったんですね。」
城ヶ崎の話を聞いた御礼は、そんな言葉を返すしかなかった。
グロンギ日本拠点
-AM11:55-
「ゴーラ、アマダムコアの回収をやめるなんて、どういう風の吹き回しだ?」
ゲゴガはすでにロングコートの人間態に戻り、ゴーラに尋ねる。
「いやな、ゲームに一つ、面白い要素を付け加えようと思ってな。」
「追加ルールか、どうせ禄でもないことだろう?」
「そういうな。追加ルールは一つ、コウガを倒した者は問答無用でゴに昇格できるというものだ。」
ゴーラの言葉にグロンギ達は湧き上がる。
「だが、問答無用で昇格させるということは、それだけコウガの力が強いという意味でもある。力ある者はコウガを倒して、セオリー通りにゲームを進めるものはゲームを進めて、それぞれ好きな方法で昇格を狙う。どうだ、なかなか楽しめそうだろ?」
ゴーラの言葉にレジアは呆れたような仕草を見せる。
「結局は、コウガを見世物にしたいだけでしょう?」
「それは心外だな。ボーナスキャラの存在は、ゲームの意欲向上に繋がるだろ?」
ゴーラは不敵な笑みを浮かべながら、レジアの質問に答える。
「今のところは、そういうことにしておくわ。それより、追加ルールをビビルに伝えなくていいのかしら?」
「構わないだろう。奴は安牌を狙う奴だ。」
ゴーラは目を瞑りながら言った。
練馬区氷川台
-PM9:34-
辺りは暗くなり、街灯が点灯している夜の住宅街、一台のキックボードに乗る男性がいた。
「最近じゃあキックボードでの通勤も本当に少なくなったよなぁ…」
三十代前後の男性サラリーマンは独り言をぼやきながらキックボードを運転している。すると、突然何かが男性に飛びかかる。
「うわぁっ!」
その衝撃で男性はキックボードのハンドルを離し、横転してしまう。
「誰だよ!危ねえだろ!」
男性は顔を上げるが、次の瞬間悲鳴を上げる。何故なら、男性の目の前にはズ・ビビル・ギがいたからだ。
「ボセゼ、ジドシヅギバ。」
ビビルは男性から血液を抜き取り、失血死させる。
レジェンド活動拠点
-2月5日AM8:36-
「皆も知っていると思うが、自転車やキックボードなどの運転手が何者かによって血液を抜き取られる殺人事件が連発している。犯行の手口から同一犯、血液を抜き取った跡から間違いなくグロンギ事件と判断して問題ないだろうとのことで、こちらに案件が回ってきた。」
城ヶ崎は資料を配る。
「まるで蛭の噛み跡みたいですね。」
被害者の現場検証の写真を見た菊池は答える。
「それがグロンギ事件と決断された要因だ。」
「問題なのは、なぜ同じ自転車でも電動自転車は狙われていないのか、ですが。」
櫛田は事件の不可解な点を見つける。
「奴らの起こす事件は必ず何かしらの制約があるようだ。俺の娘が殺された事件でも、締盟大学附属女子中学校の二年生を対象にしていた。」
櫛田の着眼点に城ヶ崎は情報を追加する。
「つまり、今回は人力以外の動力源のない乗り物が対象とかでしょうか?」
櫛田は状況から犯人の行動パターンを把握しようとする。
「それは十分に考えられる。」
「それなら、俺が囮になってあぶり出しましょう。」
櫛田の仮説に城ヶ崎が納得すると、櫛田は自ら囮役を買って出る。
「わかった、グロンギをおびき寄せる役は櫛田に任せよう。そうなれば、後は御礼君がコウガの力を使えるようになれば…」
城ヶ崎は櫛田の提案を受け入れ作戦の先を話そうとするが、
「必要ありません。民間人が下手に出てくると作戦に支障をきたす可能性が高いです。グロンギの対処も、そのまま俺が行います。犯行現場は練馬区を中心に行われているようなので、そこを重点的に捜査します。」
櫛田は言いたいことを言い切ると、城ヶ崎の話を聞かずに退室してしまう。
「櫛田にはもう少し連携というものを学んでもらいたいが…」
城ヶ崎はため息を付きながら、御礼を見る。
「御礼君、お願いできるか?」
「覚悟はできています。今度は、大丈夫です。」
御礼は城ヶ崎の指示を受け、ヘルメットを持って退室する。
氷川台駅前
-PM8:24-
辺りは暗くなり、マウンテンバイクに乗った櫛田は行動を開始する。
(来い、グロンギ。いくら姿を変えても、人間であることに変わりはないんだ。)
櫛田は使命感のままにペダルを漕ぎ進める。すると、何かが飛び出してくる気配を察して急ブレーキをかけ、飛びかかるビビルを投げ飛ばす。
「ビズバセダバ!」
投げ飛ばされたビビルはすぐに立ち上がる。
「被害者に共通して付いていたものは噛み跡だけではない。何かが衝突した拍子にできた打撲痕もあった。それさえわかれば、お前の行動は予測できる!」
櫛田は拳銃でビビルを狙撃するが、弾はビビルの身体を貫通することなく地面に落下する。
「ガブギュグボグショブグバギバ!」
ビビルは櫛田の首に噛みつこうとするが、御礼の運転するバイクに撥ね飛ばされる。
「櫛田さん、大丈夫ですか!」
御礼は櫛田の前に立つ。
「御礼、なんのつもりだ!戦うことの覚悟もない民間人が、余計な邪魔をするな!」
櫛田は御礼に退くよう促す。
「俺、覚悟を決めましたので!」
御礼の腰には、アークルレジェンドが浮かび上がる。
「戦う覚悟を決めたなんて簡単に言うな!」
「俺は戦う覚悟なんて決めません!それに、そんな覚悟なんて持っちゃいけません!」
「なら何の覚悟だ!」
「グロンギ達と、なにより、アマダムコアと向き合う覚悟です!」
「そんなくだらないものが、何の役に立つんだ!」
「立ちますよ。アマダムコアは俺を意識して選んだ。それはきっと、グロンギの考えを理解するためのものだと思います。それに、こうして櫛田さんを助けることができます。俺達、いいコンビになれそうじゃないですか?」
「くだらないことを言うな。」
「確かに、くだらなく聞こえるかもしれません。それでも俺は、言葉をかわし合う大切さを忘れたくないんです。だから行きます!変身!」
御礼はアークルレジェンドのスイッチを押す。その時、アークルレジェンド中央のライトが白から黄色に変わり、
“イエローニュートラルパワー!コウガ!マイティ!”
御礼はコウガに変身する。しかしその色は先日の白ではなく光沢のある黄色であり、頭部の角も立派に立ち上がったマイティフォームとなったのだ。
「そんな覚悟に、アマダムコアは答えたというのか…」
眼の前の光景に櫛田は愕然としていた。
「はぁっ!」
コウガは飛びかかり正拳突きを放つがビビルの軟性の高い腹部に弾かれる。
「それなら!」
コウガはすぐに体勢を立て直しビビルの身体を掴み背負投をする。ビビルはフェンスにぶつかり体がめり込む。しかし、それでもすぐに立ち上がる。
「これだけ距離が離れれば!」
コウガは右足にエネルギーを込め、ビビル目がけて走り出し、ジャンプするとそのまま右足でビビルに飛び蹴りを放つ必殺技、マイティキックを決める。
「ぐぶっ!」
マイティキックを食らったビビルのゲブルコアは砕ける。すると、全身に罅が現れ、
「…コウガァァァッ!」
ビビルは断末魔を上げて爆散し、事件を幕を下ろす。
「どうですか櫛田さん。俺達、一緒にやっていけそうですか?」
御礼は変身を解除し、櫛田に近づく。
「まずは、事件の報告書を書くところから教える。」
櫛田はそう言うとそのままマウンテンバイクに乗ってレジェンドの拠点へ向かう。その後姿を御礼は微笑ましい表情で見ていた。
つづく
次回、EPISODE.03 跳躍
後書き
ライダー図鑑
仮面ライダーコウガ マイティフォーム
身長:200cm
体重:95kg
パンチ力:3t
キック力:5t
ジャンプ力:ひと跳び50m
走力:100mを4秒
御礼大輔が覚悟を決めたことで覚醒したコウガの基本形態ですべての能力がバランス良く取れている。徒手空拳で戦闘を行い、必殺技はアマダムコアのエネルギーを右足に込めて飛び蹴りを放ち、ゲブルコアを粉砕すると同時にエネルギーを流し込むマイティキック。
怪人図鑑
ズ・ビビル・ギ
身長:194cm
体重:105kg
能力:失血死させるほどの吸血
蛭の能力を持つグロンギ怪人。人間態はラッパーのような見た目の黒人男性。動力源のない乗り物の運転手を狙う殺人ゲームを展開し、吸血能力で対象を失血死させていった。
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