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瞬間接着剤は押せ

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第二章

「時間かかるんだ」
「そうだね」
「けれどね」
 ここで坂本に笑って話した。
「それは引いたらで」
「引いたらで?」
「押したらね」
 そうしたらというのだ。
「いいんだよ」
「引かばかな」
「こうしてね」 
 こう言ってだった、松本は。
 くっついた親指と人差し指をこすり合わせる様に動かした、するとだった。
 引くよりずっと楽に剥がれた、坂本にその光景を見せて話した。
「すぐに剥がれたね」
「そうだね」
 坂本も見て頷いた。
「引くよりずっと速く」
「瞬間接着剤は引っ張ると強いんだ」
「剝がれにくいんだね」
「そう、けれど」
 それがというのだ。
「押すとね」
「弱いんだね」
「だから指と指がくっついたら」 
 先程の様にというのだ。
「引っ張るんじゃなくて」
「押すんだね」
「さっきみたいにこすり合わせるみたいにしたら」 
 指と指をというのだ。
「早く剥がれるんだ」
「そうなんだね」
「だから」
 それでというのだ。
「大丈夫だよ」
「瞬間接着剤を使っても」
「そうなんだ、だから僕はこれからも使っていくよ」
「そうするだね」
「こうしてね」
 坂本に笑顔で言った、そうしてだった。
 松本はシャーマン戦車を完成させた、それから塗装を行った。坂本も完成させて塗装に入った。
 松本はそれからも瞬間接着剤を使った、その際指だけでなくプラモにもだ。
「押す衝撃には弱いから」
「瞬間接着剤はだね」
「だからね」
 坂本に部室で話した。
「そちらの衝撃にはね」
「気を付けるんだね」
「そうしていくよ」
「強いけれど押すのには弱い」
「それが瞬間接着剤なんだ」 
 こう言うのだった、そしてまた指と指がくっついたがすぐに剥がした。引くのではなくこすってそうした。


瞬間接着剤は押せ   完


                  2024・12・19 
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