地元に帰って
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第二章
「そんなよ」
「何もないとかですか」
「言わないでね」
「私としては何でもない」
由梨奈は蕎麦をすすりつつ話した。
「普通の街ですよ」
「生まれ育ってるとかえってそう思えるのかしら」
「そうかも知れないですね」
由梨奈自身否定しなかった。
「それは」
「そうかもね。けれどね」
「それは違いますね」
「そうよ、萩は歴史があって」
幕末を中心としたそれがというのだ。
「こうして美味しいお店もあるし」
「出身の私が自覚していないだけですね」
「貴女以外にもそうした人多いのよ」
「出身地を何もないって言う人が」
「ずっとそこにいるから自覚ないのね」
美沙はそれでと察して言った。
「身近にあって、けれど他の人から見るとね」
「色々あるんですね」
「そうよ、萩も他の場所もね」
「そうなんですね」
「奈良の子なんか奈良の大仏何でもないだから」
美沙は笑って話した。
「何処が何でもないのよ」
「大仏さんはそうですよね」
「身近にあるとずっと見ているからそう思えるけれど」
「他の人からは違って」
「紹介がお仕事にもなるのよ」
「そうなんですね」
「そう、これがね」
こう言ってだった。
美沙は今二人がいる蕎麦屋のことも雑誌の記事に書こうと思った、そして実際に書いてその店に来る客が増え。
「記事も好評でしたか」
「そうよ、かなりね」
美沙は由梨奈に笑顔で話した。
「そうなったから」
「そうですか」
「だからね」
それでというのだ。
「萩のことお仕事で何かと言うのもね」
「いいですね」
「出身地を言うのも注目されるしね」
「注目されてこその声優さんですし」
「頑張っていってね」
「そうしていきます」
笑顔で頷いてだった、由梨奈はそれからよく萩のことを話す様になった、そうして出身地を推す声優としても知られそこからも注目される様になり人気も出たのだった。
地元に帰って 完
2024・12・15
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