ハワイに行くと
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第一章
ハワイに行くと
夏休みに両親と一家でハワイに行くことになってだった。
北乃姫子黒髪をおかっぱにしたきらきらした黒く大きな目を持つ彼女は幼稚園でそのことをクラスメイト達に言うと。
クラスメイトの一人牛尾妙子、黒髪をロングにしていてやや色黒で明るい顔立ちの彼女がこう言ってきた。
「言葉通じるよ」
「言葉?」
「ほら、ハワイってアメリカでしょ」
「あっ、アメリカなら」
姫子もそのことはまだ幼稚園児だが知っていた。
「英語よね」
「そうだけれどね」
「日本語通じるの」
「そうなの」
これがというのだ。
「だから安心してね」
「私英語喋れないけれど」
「それでもね」
これがというのだ。
「喋れるから」
「安心していいのね」
「そうよ」
「そうなのね」
この時はただ頷いただけだった、だが。
実際にハワイに行くとこれがだった。
父でサラリーマンの源五郎、穏やかな顔で眼鏡をかけた中肉中背で黒髪をスポーツ刈りにしている彼も母で主婦の由美子娘がそのまま大きくなった様な外見で小柄で胸の大きい彼女もだった。
ハワイは日本人観光客も日系人も多いからだった。
「言葉通じるね」
「日本語がね」
「何の問題もなくね」
「旅行出来るわね」
「何か日本にいる感じ」
姫子も言った。
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