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アイドルの真似をして

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第二章

「あの娘そっくりだな」
「ああ、本当にな」
「本人と見間違える位だな」
「そっくりよ」
「あれっ、そっくりって言われて」
 茉由はここで気付いた。
「茉由のこと言われない様な」
「当たり前でしょ」 
 家で言うと母が即座に答えた。
「だってあんたの個性出ていないから」
「だからなの」
「あんた自分を出さなくてね」
 そうなっていてというのだ。
「完全にあの娘になりきってるから」
「あの娘そっくりとだけ言われるのね」
「そうよ」
 そうなっているというのだ。
「だからあんたじゃなくて」
「あの娘が言われるのね」
「鏡みたいだってね」
「だったら茉由が注目されるには」
「ある程度真似してもいいけれど」
 それでもというのだ。
「完全になりきるのはね」
「よくないのね」
「そうよ」
「そうなのね」
 茉由は母の言葉を聞いて考えた、そうしてだった。
 そのアイドルの真似を止めた、そのうえで元の自分に戻った。すると学校でクラスメイト達に言われた。
「しっくりきているわ」
「前よりもずっとね」
「いや、前はね」
「本当にあの娘そっくりでね」
「あんたじゃないみたいで」
「違和感あったのよ」
「そうなのね、惚れ込んで真似してもいいけれど」
 茉由はそれでもと応えた。
「完全になりきるとよくないのね」
「あんた自身じゃないみたいでね」
「よくないと思うわ」
「そうね、私これからはそうしたことはしないわ」
 こう言って実際にだった。
 茉由はもう完全な真似はしなくなった、ただそのアイドルの応援は続けた。一目惚れしたことは紛れもない事実であったので。そしてグループでセンターになるとこれ以上はないまでに喜んだのだった。


アイドルの真似をして   完


                   2024・10・17 
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