神々の塔
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第八十五話 第六天魔王その四
「むしろ」
「あの人はそやねん」
「安芸、広島では英雄でも」
「めっちゃ悪いで」
「仁義なきやな」
「まさに」
綾乃もそうだと答えた。
「碧ちゃんと山本君、井伏君は好きやけど」
「地元の英雄やからな」
「それで領民には優しかったけど」
「善政敷いてな」
「敵に対しては」
それこそというのだ。
「謀神と言われた位に」
「極悪非道やったな」
「潰した家が五十はある」
そこまでというのだ。
「ほんまえげつない人やったわ」
「三悪人より悪いな」
「我が国の歴史も悪人多いけどな」
施がここで言ってきた。
「いや、ほんまな」
「長い歴史の中でやね」
「顔を背けたくなる様な」
そう言っていいまでのというのだ。
「残酷な奴とか非道な奴とか」
「一杯おるね」
「そやけどな」
綾乃にそれでもと話した、施は実際に中国の長い歴史の中に出て来た悪人を思い出しつつ語っていった。
「秦檜さんが言われても」
「秦檜さん実はやね」
「冷酷とか言われてもな」
それでもというのだ。
「宋のこと思ってな」
「動いてたね」
「金と取引して」
敵であるこの国と、というのだ。
「そうしてな」
「和平を結んで」
「南宋を発展させたし」
「まだましやね」
「岳飛さんを殺してもな」
中国の歴史で最大の英雄とされる彼をというのだ。
「あの人考えたら軍閥持ってて」
「それがあかんかったね」
「宋は軍閥を否定してたさかいな」
軍閥化していた節度使の力を抑えることからはじまった国だ、それで岳飛が岳家軍という軍閥を持つことを許す筈がなかったのだ。
「あれは宋の国としてな」
「動いたことやね」
「そうも言えるしな」
「秦檜さんはまだましやね」
「悪人の中でもな」
「そう言えるんやね」
「それが趙高とかになるとな」
羅は秦の宦官だった者の名を出した。
「明の魏忠賢とかな」
「確か私利私欲だけで動いて」
「国を潰したさかいな」
「遥かに悪いね」
「施の言う通りにな」
まさにというのだ。
「秦檜さんよりもな」
「悪いね」
「しかし毛利元就さんもな」
彼もというのだ。
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