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金木犀の許嫁

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第三十七話 織田作好みのカレーその十

「それで蝶子さんはね」
「織田作さんのお姉さんで」
「いつも頑張ってるのよ」
「頼りないご主人と一緒に」
「旦那さんが病気になってもね」 
 そうなろうともというのだ。
「二人でね」
「支えてだね」
「やっていったのよ」
「そうなんだね」
「本当に柳吉さんは頼りないのよ」
 主人公にあたる彼はというのだ。
「結構なお店の後継ぎさんでも」
「頼りなくて」
「結局妹さんのご主人がお店継いで」
 そうなりというのだ。
「このご主人が生真面目でね」
「柳吉さんと正反対に」
「もう頑としてね」 
 そうした感じでというのだ。
「お二人を突っぱねるし」
「蝶子さんもなんだ」
「そう、縁を切ったってことで」 
 作中その描写が実に生々しい。
「けんもほろろでね」
「つっぱねるんだ」
「この人にも立場と考えがあるけれど」
 それでもというのだ。
「いい印象はね」
「受けないんだね」
「そうなの」
 これがというのだ。
「読んでいてね」
「そうなんだね」
「ええ、それで結局二人でね」
「生きていくんだね」
「最後別府に行くのよ」
 大阪からというのだ。
「最近続編が見付かったけれど」
「大阪から出るんだ」
「そうなの」
「それは知らなかったよ」
「本当にずっとね」
 このことはというのだ。
「知られてなかったのよ」
「原稿が見付かっていなかったんだ」
「織田作さんが亡くなってもね」
 それからもというのだ。
「随分とね」
「そうだったんだ」
「けれどね」
 それがというのだ。
「発見されて」
「それでなんだ」
「今はね」
「その続編もなんだ」
「読めるの」
 そうだというのだ。
「これがね」
「そうなんだね」
「そうなったのよ」
「まさか続編があったなんて」
「もう誰もね」 
 それこそというのだ。
「思わなかったけれど」
「夫婦善哉は終わったって思っていて」
「織田作さんが亡くなって随分経っていたから」
 だからだというのだ。 
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