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今度こそ、成し遂げてみせる【未完】

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第9話

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ーー夜ーー

 寝に静まっているこの夜、とある一軒家の一室でもベットに寝ている人物がいた。

 プルルルっプルルルっプルルルっ(着信音)

 「…ZZz‥ん」

 白髪とも見え銀髪とも見える長髪の少女が、規則正しい寝息を立てて気持ちよさそうに眠っていた。

 彼女の名はヒルデ。訳あってこの世界に転移転生した人物。

 頭を預けている枕の隣には携帯端末スマホがあり、着信音の発生源は此処からのようだ。

 ぐっすりと眠っていたヒルデは着信音で起きたようであるが、完全に起きたという訳では無いよう。

 朧気な意識の中でヒルデは、枕の隣に置いてあるスマホを手に取って着信を受け入ける…ことは無く、その逆であった。

 なんとヒルデは着信拒否を押し、再び眠りについたのだ。

 彼女は前世より眠りの最中に電話が掛かったら、着信を拒否する癖があった。

 次に二度目がやって来たがこれもまた着信拒否。
 三度目の着信がやってきても着信が来てもまた着信拒否。

 コレには向こう側は心配が。
 コレには睡眠の邪魔をされたヒルデはイライラ発生し、青筋いっぱいに。

 四度目の着信が掛かり、いよいよ我慢の限界だとばかり、ヒルデは毛布を乱暴に退かした直後に四度目ともなる着信を遂に受け入れた。
 
 「…もしもし?」

 ヒルデは睡眠を妨げてくれた輩へと、殴りたい想いでいっぱいであった。
 しかし、その想いは直ぐにでも消滅する。何故ならば…、

 『ヒルデ君ッ、よかった。しかし何故、着信拒否をしていたのだ?』

 そう、何故ならば、たった今の着信は【彼の組織】からの電話であり、しかも二課より渡された専用通信機。

 更に、である。

 「風鳴司令官か、どうした?」

 声の主は二課を束ねる長、風鳴弦十郎だった。

 ヒルデは一気に殴りたいという想いを消滅させた。変わりに引き攣った笑みとなっている。

 なんてことを考えてしまっていたのだ、自分は。
 ヒルデが引き攣った笑みをしているのには、当然に理由がある。

 前置きが長くなるかもであるが、まず弦十郎の屋敷に招かれたのだ。
 招かれた理由を聞くと『実力を見せてくれ』と返事を貰った。

 ヒルデは軽くではあるものの困惑する中、『勿論、本気でだぞ!さぁ、かかってこい!』と彼より仁王立ちを崩さず言い放たれ、彼女は困惑の色をより強くしていた。

 いくら二課の長といえど、いくら大男かつ鍛えられた身体つきであれど、流石に不味いのでは?、と。

 だがそれは一瞬にして変わり、強制的に入社させたこの存在を叩きのめすことが出来るチャンスなのでは? と内心にて悪い笑みを浮かべて、内心の想いを出さず承諾したヒルデは合図のもと始めた。

 まぁ、ヒルデのその考えは直ぐに訂正せざおえなくなってしまう。

 想像して欲しい。
 岩を粉砕する。衝撃波を発する。クレーターを作る。空高くジャンプすることも意図も簡単にしている。
 
 科学力の粋を結集した力を借りず、弦十郎は全て生身で行っていたのだ。彼自身、負荷は全く無い。

 ヒルデは絶句した。本当に人間なのか? 超人で人間兵器の間違いではないのか?

 そんな彼、弦十郎から着信が掛かり、今まさに会話をしている。まぁ、会話といってもまだ挨拶ぐらいだが。

 物理的にもクビを切られないようにしなければ! それが、今の彼女の心情だった。
 
 「私は着信受け入れしたかったのだが、猫に取られて猫が着信拒否を押していた」

 ちなみに猫は飼っていない。飼ってないのだが今のヒルデの心情を例えるとするならば…核ミサイルが海を超え首都に襲来しようとするのを総力を挙げて阻止する、だ。

 ヒルデはスマホのとあるAppにある音声を流す。

 「にゃ〜お〜」

 猫の鳴き声である。
 
 「悪かったな」「(頼みからコレで納得してくれー!)」

 ヒルデのこの想いは、核ミサイルを迎撃の為に迎撃ミサイルを発射し、無事に迎撃出来ますようにと中継越しで祈るソレである。

 『猫が操作するとは驚きだな』

 迎撃成功。

 二課の長、弦十郎。納得したようだ。
 ヒルデは安堵した。

 そんなヒルデの気持ちを知らない弦十郎は”緊急の要件”を彼女に言った。

 『ヒルデ君、ノイズが出現した!出現場所をメールで送信した。直ぐに急行してくれ!』

 「すぐ向かおう」

 …ふぁっ【規制済み】。

 その後、ヒルデは無事、ノイズを撃退した。


 〈ヒルデSIDE〉


 ノイズを撃退し、私は帰路に着いたのだが…。

 「あぁ〜くそっ、金何処いっちまったぁ?コレじゃ買うこと出来やしねぇっ!」

 特徴的な髪型をしている長いツインテールの銀髪の少女が、ドリンク自動販売機の前で何かを買おうとしていた。歳は響より上といったところか。

 どうやら何処かでお金を落としたようだ。

 それにしても私家の近くに自販機ってあったんだな。

 「大体なんだよ、【フィーネ】の奴。一万円札をポイっと渡すなんて金銭感覚狂ってんじゃねぇか?あぁ〜あ、ポケットに突っ込めばよかった」

 お前は一万円を手に握ったまま買いに来たのか。

 「さっきおっさんとぶつかった時に盗られたか?」

 それでは? その時に盗られたのでは??
 だがまぁ、それは自業自得というもの。私は関係ない。さらばだ、名も知らぬ少女よ。

 「…どうしよう」

 この少女は泣きそうになっている。後ろには腕を組んだ私。
 他人視点だと私は彼女をパシリとして使っていることになる。
 
 あっ、ヤバい、今にも泣きそう。
 
 よし、ここは…、

 「よければ買おうか?」

 買ってあげよう。

 彼女は此方に振り向く。

 「い、良いのか?」

 か、可愛い…じゃなくて。

 「あぁ、金が無いんだろう?」(お金無いんだろう? なら私が出す。だから泣くな絶対に泣くなよ)

 「ッ!?、聞いてたのかよっ」

 「聞くつもりは無かったのだが…」

 「…っ///」

 顔真っ赤。恥ずかしさ全開だな。
 その気持ちは分かる。

 「どれを買いたいのか、言ってみろ」

 「う、うん」

 だがらその小動物のような顔は止めてくれ、沢山買ってあげたくなってしまう。

 ちなみに自動販売機についてだが、前世より少し進化した見た目をしている。

 「じゃ、じゃあ…コ、コーラを」

 「そうか、待っていろ」

 では買うとしようか。…だからその顔は止めてくれ。


 ーーー3分後ーーー


 「…ゴク、ゴク‥ファア、戦いの後に飲むコーラは格別で美味いなぁっ!」

 戦い、か。
 そういえば汗をかいているなこの娘。夜のジムにでも習っているのか?よく見ると細身ながらも筋肉がついて引き締まっている。

 まぁ、運動後に飲むコーラは最高かつ美味しいと前世では評判だったな。
 そこはこの世界でも変わらない、か。

 「悪りぃな。お前ぇからコーラ奢っちまって」

 「気にするな」

 それは良かったな、名も知らぬ少女よ。

 あ、一気に眠気が襲ってきた。
 別れの言葉を告げて帰ろう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 〈雪音クリスSIDE〉

 融合症例第一号のあの女っ、思いだしただけでもイライラするッ!

 気に入らねぇ、なんだアイツは…。

 『私たちは言葉が通じ合うんだから、ちゃんと話し合いたい!』

 話が通じ合うだぁ?何をほざいてやがるッ。

 敵に向かってその口!なんて甘々なんだよ!!

 はぁ〜とりま、あの戦いの後の気分転換に外に出た訳だが、喉が乾いてきたぜ。

 おっ、自動販売機があるじゃねーか。コーラあるじゃねーか!

 コーラ飲みたかったんだよな〜!うし、コーラに決めたぜ!

 そういえば手で握ってあった金がねぇな…は!?無い、無い!?

 「あぁ〜くそっ、金何処いっちまったぁ?コレじゃ買うこと出来やしねぇっ」

 クソっ、ポケットには…ねぇよな〜。

 「大体なんだよ、【フィーネ】のやつ。飲みもん買いたいって言っただけなのに一万をホイっと渡すなんて金銭感覚狂ってんじゃねぇか?あぁ〜あ、ポケットに突っ込めばよかった」

 飲みもん買うんだったら、多くても200円でいいだろうが。

 「さっきおっさんとぶつかった時に盗られたか?」

 はぁ〜、本当に…。
 
 「…どうしよう」

 ついてねぇな〜、ははっ、駄目だよな、こんな事で涙を出すなんてっ。

 「よければ買おうか?」

 後ろから声を聞こえた。振りかえると、アタシと同じ髪色を持つ少女がいた。

 「い、良いのか?」

 思わず頼ってしまったが仕方ねぇだろう?金ねぇだからよ…。

 「あぁ、金が無いんだろう?」

 「ッ!?、聞いてたのかよっ」

 「聞くつもりは無かったんだがな」

 「…っ///」

 まさかアタシが思っていたのが、そのまま口に出てたのか!
 かぁ、恥ずかしい!///。

 「どれを買いたいのか、言ってみろ」

 「う、うん。じゃ、じゃあ…コ、コーラを」

 「そうか、待っていろ」

 
 ーーーーーーー

 
 そうして、アタシはコーラ飲んでる訳だが、コイツよく見ると見たことねぇ服装してるな。

 不思議とコイツには似合ってると強く思う。他の奴だと似合わねぇかな

 ・・・なんでか知らないけど・・・。

 「…ゴク、ゴク‥ファア、戦いの後に飲むコーラは格別で美味いなぁっ!」

 「それはよかった」

 コーラ飲み終えた後はお互いに話をして別れた。

 「じゃあ、またな」

 「…またな」

 少しだけだけの付き合いだけどコイツとは話が出来てよかったと思ってる。

 久しぶりに心から楽しいって言える。

 【あの頃】を忘れられたから。でも…

 『いい?貴女のその力は戦争の火種を消すことが出来る。私は協力するわよ、クリス』

 今も平穏に過ごしている奴らの邪魔をして被害を出して。
 アタシが今もやっていることって本当に正しいのか?新たしく火種を作ってるだけじゃ…

 『話し合えば分かりあえるよ!』

 …くッ ソレが出来れば苦労しねぇんだよッ…アタシはそんな事を話した汚い大人共から日常を壊された。戦争が始まったんだ。ママもパパも失ったんだ。

 この力で戦争を終わらす。アタシは前を進み続けるんだ。 
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