弁当屋で働いて

　　　　　　　　　　　　　　　　弁当屋で働いて
　地元では結構以上に大きな会社を経営している。
　その為坂本家は裕福で家の娘美里もお金には困っていない、黒髪を後ろで編んでいてすっきりとした顎と切れ長の大きな目と細く長い眉に小さな赤い唇を持っている。背は一五九位で胸は結構大きくスタイルは全体的にいい。
　だがその彼女にだ、両親は高校に入った時に言った。
「お前の高校はアルバイトいいからな」
「アルバイトしなさい」
「お小遣いは出すけれどな」
「そっちも頑張るのよ」
「お小遣いあるならアルバイトしなくてもいいでしょ」
　娘は会社の社長、副社長である両親に目を瞬かせて言葉を返した。
「別に」
「そう言うが働け」
「色々わかるからね」
「それに稼いだ分は全部お前が使っていいからな」
「そうしなさい」
「全部私のお金になるなら」
　それならとだ、美里も頷いてだった。
　美里は入学してすぐにアルバイトをはじめた、バイト先は両親と付き合いのある弁当屋であった。その店をわざわざ両親に紹介してもらってだ。
　働きはじめたがこれがだった。
「うわ、何かとです」
「やることあるね」
「はい、右に左に動き回って」
　店長に働きつつ言った。
「忙しいです」
「お料理作ってお客さんの注文受けてね」
「レジもやって」
「お掃除もあるしね」
「何かとです」
　店にいる間はというのだ。
「忙しいです」
「そうだね」
「はい、これはです」
　働きつつ言うのだった。
「物凄く忙しいです」
「そうだね、けれど何かとわかるね」
「お仕事のことと世の中のことが」
　店長に働く中で応えた、そして家でだ。
　大学を出て家の会社に入って働いている兄の亮平細面できりっとした目鼻立ちで黒髪をショートにし眼鏡をかけた一八〇あり痩せた彼に言った。
「お兄ちゃんもアルバイトしてたわね」
「高校に入ってすぐにな」
　妹にすぐに答えた。
「お父さんとお母さんに言われてな」
「工事現場とかで働いていたわね」
「そうだったよ、そして今はな」
「お家の会社に入ってね」
「働いているよ」
「そうよね」
「自分が働いてみて色々勉強してな」
　兄は真面目に語った。
「お金を稼ぐのはどういうことか」
「お仕事はどんなものか」
「それで世の中のこともな」
「全部勉強するのね」
「そうしないとな」
　さもないと、というのだ。
「本当にな」
「やっていけないわね」
「そうだよ、何も知らないで会社を継いでも」
　そうしてもというのだ。
「一体何が出来るんだ」
「出来る筈ないわね」
「そうだろ」
「ええ」
　美里は亮平の言葉にその通りだと答えた。
「本当にね」
「お父さんも最初は」
　二人の父もというのだ。
「会社をはじめたお祖父ちゃんに言われて」
「アルバイトしてたのね」
「高校に入ってすぐな」
「そうだったのね」
「お父さん自身が言ってたよ」
　妹に真面目な顔で話した。