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ボロディンJr奮戦記~ある銀河の戦いの記録~

作者:平 八郎
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第107話 まっとうな軍人

 
前書き
お世話になっております。

憂国が終わったので、早速次の戦場に行きたいところだったのですが、
どうしてもやっておかねばならない閑話みたいな話があったので投稿いたします。

実につまらないです。読み飛ばしてもらっても、話の大筋からは大して問題ではないと思います。

Jr.とオネーギン氏は、元になった名前から考えると、『大の仲良し』でもおかしくないんですがね。 

 
 宇宙暦七九一年 四月 ハイネセンポリス

 案の定というか、予想通りだったが、チェン秘書官の抜けた穴は大きかった。

 この仕事に就いてだいたい八ケ月。おおよそ仕事の流れは分かっていた。しかし手配する場所や品物についての手続きはチェン秘書官に任せっぱなしだった為、そっち方面の業務については些か手間取ってしまった。チェン秘書官が既に手配していた分を優先し、新規のアポイントを半分以下に減らしてこなしていくしか方法はない。

 もちろん補充の秘書官に頼むという考えもあったが、俺の独断でフェザーンに派遣してしまった以上、代行要員の手配優先度は低くなるのは道理。それにこういった任務を知る人間は少ない方が良いから敢えて代行要員は頼まず、チェン秘書官の残していった業務端末に悪戦苦闘しつつ、自らジャスミンティーを淹れて来客を迎える羽目になっていた。

「いや、なんだ。これ。自白剤とか、睡眠薬とか入ってないよな」
 早朝掃除したばかりのソファに深く腰を落とし、やはり残していったクッキーを口に放り込みながら、『マトモな方の』カモメ眉は俺に言う。
「そんなに不味いですか? モンテイユさん」

 そう応えつつ、俺も自分の淹れたジャスミンティーを口に運んで、氏の言う通り薬品のような苦みが、口の中全体に広がって眉をしかめざるを得なかった。

「あ~確かにこれは少し沸かし過ぎたかもしれない」
「迂闊に人を雇えないというのは分かるが、せめてこういうところは誰かに任せた方が良いんじゃないか?」
「二ケ月の短期じゃ、そうやすやすと口の堅い人は来てくれないんですよ」
「万事用意周到な君が代行者の手配ができなかったってことは、あの美人秘書官殿のご家族の事態は余程切迫していたんだな。間に合うといいが」
「そうですね……」

 一応対外的には、ハイネセンより三八〇〇光年離れたパラトループ星域にあるプルシャ=スークタ星系に住んでいるチェン秘書官の母親が突発性劇症膠原病に罹患し、どんなに長く持っても一ヶ月ということで、急ぎで一時休暇を取ったということになっている。

 所謂主要航路から外れているパラトループ星域へ行くには、ランテマリオ星域から辺境星域を巡回してフェザーンに入る定期民間貨客船に乗るか、定期便で一気にフェザーンまで行ってからパラトループ星域への直行便に乗るかの二択だ。そして国家の統合状態としては大変残念なことに、前者よりもはるかに後者の方が、係る日数は少なく便数も多い。故にチェン秘書官がフェザーンに向かうのは、『当然』の選択だ。

「まぁ一応彼女も軍属ですから、ポレヴィト行きの軍定期便に最優先で乗ってもらいましたよ……できれば開発中の高速巡航艦があれば、彼女はもっと安心できたんでしょうけどね」

 自分の淹れたジャスミンティーを我慢しながら飲みながらポツリとつぶやくと、モンテイユ氏は小さく笑みを浮かべつつ鼻を鳴らしながら、顔の中にいるカモメの右翼を大きく吊り上げて応える。

「それで途端にアポが取りにくくなったと噂の君が、係長になったばかりの私を呼び寄せたってわけだな? 君は私に何をして欲しいんだ?」
「知恵を貸してほしい。上手く丸められたら未確定だが秘匿情報を出す」
「非合法な話だったら乗らないぞ」
「資金不足に喘ぐとある中小企業がある」

 それが現在、国防技術本部隷下艦船開発部と共同で高速巡航艦を開発中である造船会社であることは、モンテイユ氏もすぐに理解してくれる。

「現在開発中の『製品』を製造するに際して、資金が足りずどうしても必要な資材が手に入らない。提供する資材会社側としては素材技術を提供して欲しいのであれば、相応の額を支払ってもらいたいという」
「その資材会社の請求額が幾らか聞いてもいいか?」
「二〇〇億ディナール」
「その『製品』の開発費は?」
「一〇億ディナール」
「もうそれは財務委員会の出番ではないな。治安警察の領分だろう」
「ところがそうでもない」

 その資材会社が造船会社に独占販売を提案してきた宇宙戦闘艦用の装甲材は、まさに画期的なものだった。独自の方向性結晶構造を持つ特殊合金であるらしく、従来の装甲材より比重はあるが、装甲厚比対エネルギー防御力にも物理的防御力にも優れている。どうやら延性は従来品よりもさらに乏しいので、艦船の装甲として使用するのであれば、直線・平面の多い艦船になる。
 そしてその中小企業(造船会社)は、新装甲材に相応しい見事な艦船デザインを作り上げた。艦首より船体中央部まで、今までの同盟軍艦船においては巨大輸送艦でしか採用されていない四角錘のような傾斜を持っている。中央部はその陰に隠れるように引き締まり、そこから艦尾にかけて艦首から続く傾斜線の内側に入るよう整えられた推進部を有する。
 真横から見ると槍の穂先のような、同盟軍にそれまでなかった優美さすら備える絶世の美女の艶姿(イメージ映像)を、大型の立体映像端末でモンテイユ氏に披露すると、氏はまるで初めてヌードを目にした思春期初頭の少年のような感じで舐め廻すように凝視する。三分近く経って、ようやくモンテイユ氏は顔を上げて俺に視線を送って言った。

「君の目から見て、この製品は使えると思うか?」
「量産性が確保されることが最低条件だが、想定されるカタログデータの八割でも達成できれば、既存の競合他社製品(帝国軍標準型巡航艦)に後れを取ることはない」

 傾斜化による船体の長大化を逆手に取った戦艦並の長射程主砲の搭載、特殊素材傾斜装甲自体の防御力・船腹増大により可能となった既存核融合炉タンデム搭載による防御シールドの強化と速力の向上・完全閉鎖式艦載機格納庫による低防御部の減少・直線部品多用による製造効率化及び補修能率の向上、内部構造効率化による艦艇運用員の低減……戦闘能力・生産性・生存性、どれを取っても既存の巡航艦をはるかに上回る。

 だが同じデザインでも既存の装甲材を使用すればその優位性は格段に落ちる。一回り大きくなった船体は被弾面積を大きくするだけでなく、旋回性能も低下することになる。近接格闘戦に持ち込まれれば、特殊素材の装甲材がない限り、小回りの利く既存の巡航艦の方がかなり優位だ。

「……確実に長く売れる製品の基幹となる技術なのだから言い値で買え、というわけか」
「既製品の生産ラインをそのまま新製品に転換できるとしたら、資材の販売も含めれば、だいたい五〇年で元が取れる」
「つまり一世代ギリギリの数字か。その資材会社の営業部長は只者じゃない」
「しかし大手ですら一度に支払える額でもない」
「買収か子会社化を企んでるだろう。提供素材を利用しなければ(制式採用の)保証がない。保証がない限り支払える額ではない。乗り掛かった舟を途中で降りれない企業に逃げ道はない」

 スッパリと言い切るモンテイユ氏の回答に、俺は自分の考えが間違っていないことに安堵した。同時にその資材会社の背後が誰だか、おぼろげに見えてくる。同盟軍とのパイプの太い大手ではなく、あえて艦船開発能力に確かな技術力を持つ中小企業に話を持ち込んだ。

 もし大手造船会社に対して同じように話を持ち込めば、敏腕顧問弁護士と百戦錬磨の調達部がお出迎えして、逆に傘下に収められてしまうこともあるだろうし、交渉次第によってはそれなりの額を提示されて終わりだ。だが大金だけではなく、軍と開発取引ができる企業という顔も欲しているのであれば話は変わってくる。

 よくある話だと言われればそうかもしれない。軍ではなく民間であれば日常茶飯事だろう。銀行や投資会社が旗を振って業界の再編を促すことは、前世でもよくあった話だ。ただ今回は国防に直接関わる分野だ。政治家や官僚が介入してたとしてもおかしくない……それ故にこの話をバウンスゴール大佐は装備開発部隷下の艦船開発プロジェクト部の部員を連れて、俺に持ってきたのだろう。

「君としてはこの買収なり子会社化なりは阻止したい。そう考えているのか?」
「可能ならば。ここで開発がストップすることは、今後死ななくても良かった将兵が死ぬことになる、かもしれない」

 生存性の向上した新型高速巡航艦の登場は早ければ早いほどいい。企業買収などによって開発部門が別会社に吸収されるようなことになれば、下手をすれば吸収側の企業審査から始めることになる。相手が同業大手であればそういう手間はないだろうが、今回仕掛けてきているのは資材会社だ。庇を貸して母屋を乗っ取るつもりと考えれば、その遣り口は真っ当な資材会社とは到底思えない。そこまで考えれば、これは『国内』問題ではない。つまりは乗っ取り以外の別の目的もありうる。

「……まず政治案件でないことを確認する必要があるんじゃないか?」
「勿論。まぁ仮に政治案件でも、何とかしなければならない話さ」

 もし政治案件だとしても二〇〇億ディナールというのはあまりに大きすぎる額だ。大侵攻の当初予算が二〇〇〇億ディナール、国防予算が一兆九七〇〇億ディナール。その何パーセントかは分からないが、政治家のポケットに入れるにはあまりに額が大きすぎる。

仮に仲介手数料が一パーセントだとしてもバレれば、トリューニヒトであってもただでは済まない。ましてや民間企業ではなく国防企業だ。より直接的に安全保障の問題になる。そこまで危ない橋を、現時点のトリューニヒトが渡るとは思えない……いや、一応確認すべきだろう。国外問題であれば、それなりの目溢し料を手にしている可能性もある。

「随分君も強気だな。トリューニヒト氏と蜜月関係という噂はやはり本当か」
「言い触らしている奴をこの部屋に引き摺って来てくれたら恩に着るよ」

 右手を開いたり閉じたりして笑顔を見せると、モンテイユ氏は引き攣り笑いを浮かべる。今のところ憂国騎士団の一件は公表もされてなければ、噂話にもなってない。一人の『肉体青年労働者』に一個小隊が無力化されたなどと知られれば、体のいい恥さらしだ。死んでも喋らないだろうし、関わった治安警察のへぼ隊長や病院関係者に『箝口令』をしくだろう。おかげで今も温厚で話の分かる青年政治将校という評判に変わりはない。

「で、穏便な解決策ですけれど、どうです? 何かいい案はありませんか?」

 自分で淹れた不味いジャスミンティーをおかわりしつつ俺が問うと、モンテイユ氏は深くソファに腰を沈めて腕を組んて応える。

「まずその資材会社の資産実態調査を行う。あまりにも高額な取引額の提示だ。一から生産設備を構築すると言ってもその三分の一でもお釣りがくるのに、得た資金を何に使うのか資材会社の目的を知るべきだろう」
 ブラフにしても高額だ。造船大手が資材会社をダミーにして、高速巡航艦の開発データを奪い取りに来た、という微妙な可能性も無いわけではない。資材会社の株の所有者を当たれば、そのあたりの背景が確認できる。身の程知らずの政治業者がいれば、そこで淘汰もできる。
「大幅に減額できれば、後は増資だ。中小とはいえ将来有望な造船会社であることを公表し、資金を市場から集める。くれぐれも高速巡航艦の『制式採用』という言葉は使うなよ」
「やはりここは正面突破しかないか」
「そのくらい君でも理解できるだろう。もしかして中央政府からの増資とかも考えたのか?」
 眉をしかめるモンテイユ氏に、俺は二度ばかり頷いた。
「資材会社へは財務委員会から抜き打ち社内査察の実施、造船会社へは軍部から財務監察要員の派遣し、国防予備費からの緊急借款を行って一時的な国有化という手もあるかなと」
「我々財務委員会を鉄砲玉にして、軍部から用心棒を派遣するか。それだと統合作戦本部と財務委員会に通す必要があるだろう……パルッキ先輩も地域開発委員会の同期も言っていたが、君は軍や政治権力の市場介入についての敷居が随分と低いな」
「自由で開かれた市場経済が救えない人間を救うのが、国家権力の役割だと思っているからね」
「考え方は正しいが、拡大解釈だけはしてくれるなよ。君はともかく、大抵の軍人は自分の日常を経済に当てはめて考えるきらいがある」

 確かに原作でそれをやってくれた男が隣の部屋にいる。はぁ、と一つ溜息をつくと、この後俺がやらなければならないことをざっと頭の中にリストアップする。まずはトリューニヒト、次にラージェイ爺、そして造船会社、最後に資材会社。足りない時間を縫って行うスケジュール調整に、思わずチェン秘書官がもう一人欲しいと思ってしまう。

「……事が上手く運んだら教えてくれる秘匿情報については期待している。私からも企画課長にこの状況について進言する。参考となる資料と経緯のレジュメを作ってくれるならば、なるべく早く用意して送って欲しい。こういう場合、財務委員会側の査察官は言い出しっぺが担当することになるからな」
 
 だいたい話の流れが決まって、誰も補充しない最後の一枚になったクッキーにお互いがどうぞどうぞし、結局手に取ったモンテイユ氏が口に運ぶと、ソファから腰を上げそのついでとばかりにジャスミンティーの残っているポットの蓋を開けて言った。

「君の秘書官だが、口の堅いのがご入用なら財務委員会から廻してもいいぞ? パルッキ先輩がいなくなってから、中堅以下の若い女性総合職の士気が目に見えて落ちていて、我々としても少し困っているんだ」
「ご配慮ありがたいが、お断りするよ」

 今年八月には最前線に赴くことは言う必要もないが、そんな短い期間であろうと予算審議で少しでもキャリアを積まなければならない若手官僚に、不良軍人の下に入って慣れない仕事してもらうのは心苦しい。

「手を出してパルッキ女史に密告でもされたら、今度はマーロヴィアで機雷掃除をする羽目になってしまう」
「パルッキ先輩がそんな生易しいはずないだろう……」

 軽い冗談で応えたつもりだったが、モンテイユ氏はシラケた顔つきでやや薄目のビジネスバッグを片手に、何故か肩を落とし哀愁漂う声色で呟いた。

「パルッキ先輩の可愛がっていた後輩に手を出した翌朝。誰も出勤していないはずの職場の自分の机の上に、結婚情報誌と旅行雑誌と共済組合の家族向け医療保険・生命保険のパンフレットが並べられてるんだ。婚姻届抜きで……」

 もう春になり暖かい日が差し込み、空調も送風に変わっているにもかかわらず、吹雪のような凍える冷風が俺の執務室を吹き抜けたのは、気のせいではなかった。





 翌日、遠い処に住むお友達とこういう話をして『商売』していませんかとトリューニヒトに尋ねると、「それは惜しいことをした」と返ってきた。冗談だか本気だかわからない回答であったが、造船会社を救うことと、資材会社にお灸を据えることにはとりあえず同意してくれた。ただし今後のこともあるので「あまりやりすぎないように」との釘も刺されたが仕方ない。

 その後で連絡したラージェイ爺は、出資に関しての取り纏めに同意してくれた。想定される資材会社の背後についてあえて俺の妄想と断ってから話すと俄然やる気を出したみたいで、一〇歳は若返ったように視線が鋭くなり、小さな居酒屋から俺でも知っているような大企業のOB達に連絡を取り始めた。ひと稼ぎを考えているのは間違いないが、少なくとも国内で金は回るだけマシだ。その代わりこの時点で俺は、明らかな犯罪者となったわけだが。

 ついでなのでラージェイ爺には積極的に動いてくれたお礼として、俺もサンタクルス・ライン社の株式名義を今一度洗い直すことをおススメした。どんな小さい投資会社でも念入りに。明確な証拠など何もないが、洗い直すだけなら通常の業務の内だから別に何の問題もない。

 それからラージェイ爺が推定したお財布と現状の交渉状況のつり合いの確認に造船会社……ハイネセンポリスから五〇〇〇キロ離れた別大陸にある、サウスリバー・シップビルダーズ(SRSB)の「ハイネセン本社」を訪れた。待っていた社長重役一同は俺を、諸手を上げて出迎え、最終的な落としどころについて確認する。最悪は会社が大手傘下となる可能性だが、子会社として一定の独立性を維持できるよう取り計らうことを告げると、社長は泣きながら俺の両手を握った。

 これらの準備を終えて再びハイネセンポリスに戻った俺は、資材会社に一件についての処理について連絡を取った。会社に直接乗り込んでやっても良かったが、軍人が現場に直接乗り込んでトラブルが起きるのはなるべく避けたい。向こうもそう考えたのか、あるいは別の考えがあるのか。勤務時間外の夜遅くハイネセンポリスから少し離れた歓楽街の一角にある、高級クラブで会いたいとの返事が来た。

 一応の危険性も考え、バグダッシュにこれまでの時系列を簡単なレポートにして送っておき、失敗した時の後始末(遺言状)を一方的にメールで送った後、俺は髪をオールバックに纏め、濃紺のタートルネックとグレーの上下に身を包み、指定された高級クラブへと足を運んだ。

「ようこそおいでになられました。さぁ、どうぞ」

 扉を開けると、深紅に染め上げられ光輝く正絹のパーティードレスに身を包んだ、茶色の入った真っすぐな赤毛の映える眉目整った美女が俺を出迎える。
 落ち着いた間接照明。繊細でありながら深みのある木工細工と鏡の組み合わされた壁。複雑な唐草模様の入ったソファ。ソファと色違いで同じデザインできめの細かい絨毯。客は少なく、同様にホステスの数も少ないが、その分距離もあって他所の人間に話し声が聞かれることもない。

「お連れ様はもう少しお時間がかかると伺っておりますが……」

 下品さはなく自然な流し目。触れない距離に寄った肩。濃厚な、深みを感じるラベンダーの香り。初めて会う相手であっても、傍にいるだけで満足感を味わうことができる最高級のホステス。見た限り歳は俺と同い年ぐらいだろう。若さと艶さが釣り合っている。

 だがビリーズ&アイランズ・マテリアルよりも売り上げが少ないにも関わらず、これほどのホステスが在籍するクラブを即座に用意できる資材会社というのもなかなか笑える冗談だ。もしアイランズがこの店に来たら、専務のハワードさんにねだるかもしれないが、俺は一応身の程は知っているつもりだ。

 何も応えずぼんやりとした表情で座る俺に、赤毛のホステスはより距離を詰めて顔を覗き込んでくる。こういうところは初めてで、緊張しているのかしらといった余裕の笑みを浮かべているが、俺が視線を合わせずに髪のひと房を手に取ったのを見て、首を傾げる。
「赤毛の髪はお好きですか? お客様」
「本物ならね」
 地毛は赤ではなく黒に近い栗毛だろう。随分と慌てて染めたのか、手に取った中に地毛の色と染めた色が交互になっている髪が数本あった。
「上品な貴女は地毛が一番似合ってるよ。それに深紅のパーティードレスより、少し明るい茶色に黒の模様が入ったブラウスの方がいい。そちらの方がずっと映えるし好みだね」

 彼女自身ではなく彼女を『そういう姿』にさせた奴の、俺に対する舐め切った対応にブチ切れ寸前だが、怒りを命令されただけの彼女に向けるわけにもいかない。表情筋を操作して師匠直伝の「困ったね」といった苦笑を浮かべると、彼女の顔には一瞬驚愕が浮かんだが、すぐに収めて「お酒をご用意しますね」と言って少し離れて座ってウェイターに合図を送る。

 そしてウェイターはシャンパンだけでなく、一人の男を連れて席にやってきた。

「いやぁ、こちらがお呼び立てしたのに、お待たせしてしまって申し訳ない」

 くすんだ金髪。太い眉に下がった目尻。やや張り出した頬骨とそれに引き摺られるような皺の寄った頬に割れた顎。いかにも苦労人といった顔つきの男が、茶色の中折れハットを取りながら挨拶してくる。

「初めまして、ヴィクトール=ボロディン中佐。プレヴノン・MM社の、エヴグラーフ=オネーギンです」
「どうもエヴグラーフ=オネーギンさん。こちらこそお時間をいただきありがとうございます」

 挨拶は大事。力任せに握りつぶしてやりたくなるのを抑えて、ソファから立ち上がり笑顔で握手する。オネーギンの手はざらついていて、ところどころにタコがあるのは、格闘技術のある人間の証拠。それもそのはず原作通りなら七年後に帝都オーディンでランズベルク伯やシューマッハ大佐と共に、金髪の孺子のお目こぼしがあったとはいえ陽動工作も含めて、ニコラス=ボルテックの部下として幼帝誘拐に成功した男。
 偶然とはいえ、せめて変装ぐらいしてこないのかと思わないでもないが、俺の名前を知っていて『赤毛のホステス』を用意しているわけだから、世間知らずの青年将校にもう一度手痛い教訓を味合わせてやろうと、高をくくっていると見ていいだろう。

「まぁまぁ、いきなりご用件の話に進むのはなんです。一杯、如何です?」
「いいですね。ピンクのラベルというと、ロゼ・シャンパンですか?」
「えぇ、えぇ。ノンブランドですが八年物のロゼですよ。力強くて芳醇で、これがなかなか」

 向かい合う俺とオネーギン氏の間に座る赤毛のホステスが、グラスにシャンパンを注ぐ。蓋は開けたばかりで、グラスは三つともきれいに磨かれていて薬が塗られている気配はない。なので俺は遠慮なく手を伸ばしてホステスの分のグラスを取ると、当然の如くホステスの手は止まり、オネーギン氏の右頬は引き攣った。

「どうしました?」

 何事もなかったように俺がグラスを手に持ちながら首を傾けると、ホステスは俺のグラスを手に取って乾杯の音頭を取る。確かにオネーギン氏の言う通り、力強くて芳醇な味が、口の中を滑らかに動き回る。他愛もない季節話を五分。グラスが空になった時点で、ホステスは小さく頭を下げてボックス席から離れて行く。
 真っすぐ歩きながらバックヤードへと消えていくホステスの後姿を見送った後、オネーギン氏は早速俺に視線を向ける。先程までの苦労人の叔父さんという目付きではない。やくざ者の一歩手前のような、前世の俺だったらちびって逃げ出したくなるような顔だ。

「国防委員会におられる中佐殿が新素材の件でお出ましになるとは、こちらとしては考えておりませんでしてね」
 言葉は丁寧だが、コネ昇進の若造はすっこんでろと顔に書いてある。なので俺は右も左も分からないフリで、表情筋を動かし笑顔を浮かべて応じる。
「そうでしょうね。私もまさか出張ることになるとは思ってもいませんでした。こういう仕事って大抵面倒なんですよね。お互いに」
「……これは『民間企業間の一般的な商取引』です。正直申し上げて軍人さんが干渉(お手伝い)されるようなお話ではないかと」
「その商取引の内容が軍艦艇設計資格を有する造船会社に、宇宙戦闘艦艇用の新装甲材を持ちかけた後で法外な額を請求したという話ですからね。無視するわけにはいかないわけですよ」
「法外な額かどうかは見解の相違ですが、弊社の装甲材の採用を決断したのはあちら様なのですよ?」
「ゼロの数の書き間違いを指摘するのは、まず当然だと思うんですがね」

 その装甲材の価格を軍への納入価格に転嫁した場合、初期ロットで既存の巡航艦の一〇倍近い価格になってしまう。量産契約が済めばより低減できるだろうが、今の情勢では価格が提示された段階で選考外だ。

 勝手な推測だが現時点で既に試験運用可能な試作艦艇が出来ているのに、原作でタイプネームの一桁番号が実戦配備されたのが七年後というのは、書かれていない設計上の大問題がない限り、調達価格の問題だろう。大侵攻の後始末でただでさえ金がない上に、まず数が重要という時期に高級品を敢えて建造するのはためらわれる。

 オネーギン氏としては最初から継続的に装甲材を『自社』から購入してもらおうとは考えてはいない。なにしろ軍艦の装甲材だ。膨大な生産量が求められるから他社にOEM生産してもらうのは当然で、技術料を買い叩かれるのは困るのは理解できる。吹っ掛けてくるのはある意味当然だが、敢えて資本力に劣る中小企業であるSRSBに話を持ち掛けたという点が、実に氏の上司の思惑を考えると嫌らしい。

 顔による脅しも効果がないと分かったのかオネーギン氏は大きく溜息をつくと、前のめりの姿勢を崩してソファの背に深く腰掛け直し、呆れたと言わんばかりに足を組んで右腕を軽く振り上げる。

「具体的に私たちに何をお望みなんです、中佐」

 賄賂でもキックバックでも欲しいのか、と目が語っている。確かに要求するタイミングとしては絶好だろうが、残念ながら俺はそういう人間ではない。

「特には何も。ただ市場価格に見合った、良識的な範囲での金額をご提示いただければいいだけです」

 俺の言葉にオネーギン氏の右眉が吊り上がる。それが計算されたものかどうかは分からないが、交渉時に見せていい仕草ではない。工作員としてはどちらかと言えば武断的な分野を扱う人物なのだろう。かなり大きな『シノギ』だと思うが他に人材はいなかったのか。あるいは別に責任者がいて、俺が出てきたから彼が対応しているのか。

「弊社がこの装甲材を開発するのに支払った投資額を回収するのは、良識的にも決して間違ったものではないと思いますがね?」
「ええ、そうですね。プレヴノン・MM社の研究結果としてでしたら、お支払するのは間違いないですね」
「この装甲材は画期的なものです。硬度・エネルギー防御力、いずれをとっても従来の装甲材を上回ります。既存の艦艇に使用しても十分に有用なはずです」
「理解しておりますよ。私も一応軍人の端くれですからね」
「であれば、価値に対する正当な報酬があってしかるべきではないですか?」

 筋道は通しているし、要求は正当だろうと言わんばかりに両手を広げるが、いかにも空々しく見える。

「勿論です。素材の開発者には、当然それに見合う額をお支払うべきでしょう」
 俺はにっこりと笑みを浮かべると、手酌でシャンパンを自分のグラスに継ぎ足してから言った。
「帝国マルクで」
「……どういうことですかな?」

 一度顔を引き攣らせてからでは、その言葉には何の意味もない。時間をかけてゆっくりグラスを傾けて、シャンパンを舌でしっかりと味わう。しかしどうやら選手交代とはならないらしい。オネーギン氏は席を立つことなく、グラスにも手を付けることなく、俺を見続けている。炭酸が少し腹に持たれてきたので、溜息で誤魔化しつつ、俺は肩を竦めた。

「残念ながらプレヴノン・MM社の研究規模では、この素材の開発は無理です」
「……それは当社に対する侮辱ですか?」
「戦闘艦艇の装甲材は、民間船舶と素材が同じでも構成が異なります。プレヴノン・MM社は民間船舶の需要視する面防御構成の専門家でしょうけど、軍艦に使われる集中荷重防御構成の研究施設はないでしょう?」
「それを作ったんですよ。大金叩いて、人材も集めて」
「あまり我が軍の情報部を舐めないでもらいたいですね。流石に貴方のご友人には及ばないでしょうが、そのくらいは調べられます」
「しかし研究施設を建てて、研究したのは事実です」
「ではその研究施設に、非合法物資集合罪に基づいた強制捜査を行ってもよろしいですか?」
「それは法の恣意的運用ですぞ。連邦裁判所に訴えていい話だ」

 怒鳴り声を上げて立ち上がるオネーギン氏を見て、俺は苦笑を隠し切れなかった。同じようなやり取りを四五〇〇光年先で三年半前にしたことが、もう一〇年も昔のことのように思えてくる。そして怒鳴り声を上げて席を立つ氏と、苦笑を隠し切れない俺という、店にとって大迷惑な態度をとっているのに他のボックス席の客は迷惑そうな顔を誰一人していない。これは今頃大慌てのバグダッシュにいい『土産』が出来た。

「本当に、そちらを選択するんですね?」
 苦笑を収めて、目の前のサラミの一つを口に含んだ後、突っ立ったままのオネーギン氏をシラケた目で見つめる。
「当然、証言台には立っていただけるんでしょう。結構ですとも。ついでなので、帝国技術開発部のどなたかもお呼びしてもいいですね」
「……」
「『問屋』なんですから、扱う商品をしっかりと学んでから来てください。我々軍人は装甲材を最後の頼りに、命懸けて戦っているんです。少しでも性能の良い装甲材を求めて、開発本部をはじめとして多くの金属素材会社が研究を続けている。それを業界トップ一〇にも入らない零細が、開発拠点を作って一年ソコソコで産み出したなんて、奇跡を信じるわけがない。いやもしかしたらそんな奇跡もあるかもしれないが、まぁ『身の程を知れ』」

 敢えて上げた俺の嘲笑に、立ったままのオネーギン氏の左腕が俺の襟首に向けて伸びてくる。反対の右拳が握られていたので、俺はソファから立ち上がり左腕で伸びてきた氏の左腕を掴んで引き込むと、身体を反時計回りに回して右の手刀で左肩の関節をキメて、氏を低いテーブルに押し倒した。
 だが同時にそれまで談笑していたはずのボックスの客やウェイターそして先程のホステスまでが、俺に向けてブラスターの銃口を突きつけてくる。

「おやおや。軍人に銃口を向けるのは、流石にいただけない」

 オネーギン氏の左腕を畳んで肩をキメつつ、撃てば氏も巻き添えになるようにテーブルから引っ立てて、俺は銃口を向ける奴らに聞こえるような声で言った。ガッチリ左腕が決まっているので、俺と氏の間にほとんど隙間はないから、後ろから撃っても貫通して氏にもダメージが入る姿勢だ。

「のこのこ虎穴に入り込んで強がりは止せ、若造」
 腱が切れないギリギリぐらいの強さで絞っているので、オネーギン氏の声もそぞろだが、俺は遠慮せずに後ろから彼の耳元で囁いた。
「私がここに来ることは、当然トリューニヒト氏も軍情報部も知ってますよ? それとも私の口からもう一度同じ言葉を聞きたいですか?」
「ト、トリューニヒト氏なら話は早い。私は彼に言って君を飛ばさせることもできるんだぞ?」
「かつてルビンスキー高等参事官殿が駐在武官長に干渉して、私をマーロヴィアに飛ばしたように?」
「……そうだ」
「『身の程を知れ』拝金主義者。辺境だろうと最前線だろうと、行けと言われればどこへでも行くのが軍人だ」
「……」
「それにもしかして帝国戦艦の大出力砲相手に戦ってきた私に、手のひらに収まる程度の豆鉄砲の脅しが通じると思ってます? ねぇ『グラズノフ』さん」

 ヒュッという気管を空気が通る感触が、氏の背中を通して左腕に伝わってくる。抵抗する力が途端に弱まり、氏が小さく首を振ると、銃口を向けていた客やウェイターが銃口を下ろして全員バックヤードへと消えていく。最後まで銃を向けていたホステスもバックヤードに消えて行ったのを確認した俺は、氏の拘束を解いた。

「幾らだ」
 店内見渡す限り誰もいなくなった中、乱暴な手つきでネクタイを解くと、氏はシャンパンを二杯一気に飲み干して言った。
「幾ら出せば、いいんだ?」
「だから出さなくていいですよ。先程も言った通り、私は『まっとうな』軍人です」
「ならば、何を……」
 口止め料と言いたいところだろうが、もう今更の話だと分かったのか、グラズノフはセットしたくすんだ金髪を乱暴に掻く。任務の失敗を悟ったというところだろう。バックヤードに消えて行った人間は、早速『後片付け』に入っているに違いない。
 だが「やりすぎるな」という指示もあるし、肝心の装甲材の技術は獲得しなければならない。

「幾らで『仕入れ』たんです?」
「……それは」
 問屋に仕入れ値を聞くのは本来ルール違反だろうが、マトモな問屋でないのだから構わないだろう。
「流石に上級大将とか大将クラスの人間ではないでしょう。そうですね、技術中将でしょうか。であれば多く見積もって一〇〇〇万帝国マルクくらいですか?」

 フェザーンに居た時、帝国人の商人がその位の額を言ってドミニクを口説いていたことを思い出す。たしかドミニクを田舎の別邸に囲って愛人にしようとしていた中年のオッサンだ。あれから物価の変動はそれほどないだろうから、まず間違いはない。だがグラズノフの顔は奇妙に歪んだ後で、吐き捨てるように言う。

「一億帝国マルクだ」
 今度は俺の顔が引き攣る。想定の一〇倍。別邸どころか広大な敷地付きの豪邸が買える。
「……駐在武官に頼んで密告してもらってもいいんですよ?」
「一億帝国マルクだ」

 仕入れ値を吊り上げる為に嘘を言っているなら潰すぞと言っても、グラズノフは言い張る。情報漏洩者が確実にあのハゲ工学博士とは言えないが、技術(指向性ゼッフル粒子は充分戦略を変える兵器だが)よりも政治力で伸し上がったと考えれば、本人の欲望以上に地位の維持には金が掛かっているのかもしれない。

「……さらに地位が上がったらそれどころでは済まなくなりますよ。それでいいんですか?」
「余計なお世話だ」

 心底嫌そうな顔をしていうグラズノフに、俺は小さく頭を下げで苦笑を誤魔化すと、残されたシャンパンのボトルからグラズノフと俺の両方のグラスに残りを注ぐ。その動きをグラズノフは席を立たずに見ていたので、俺は自分のグラスを手に取って掲げて言った。

「請求額を二億ディナールに修正してください」
「それでは採算が取れない。社の研究施設も……」
 ほぼ諦めていても抵抗しようとする声に、俺は左手をかざしてグラズノフを制する。
「投資ファンドを組みます。その資金を使って新装甲材製造プラントを新会社としてプレヴノン・MM社から独立させてください。SRSBが筆頭になって出資しますが、それ以外に三〇億ディナール、こちらで用意します」
「は?」
「それだけあれば試験用製造プラントどころか量産製造プラントも建築できるでしょう。そこからプレヴノン・MM社には、販売量に応じた特許料をお支払いします。もちろん期限付きで法的に認められる程度ではありますが」

 プレヴノン・MM社がSRSBを傘下に収めて、同盟の軍艦技術を帝国に売り渡そうという考えが最初にあっただろうが、それを認めるつもりは毛頭ない。故に新会社設立と、その新会社がSRSBの協力会社になることは譲らない。
 プレヴノン・MM社に渡ったペナント料は、グラズノフを通じてフェザーンに向かうだろう。販売量に応じた常識的な特許料である以上、生産・納入量が多くなればなるほど収益が上がるのは当たり前の話。
 フェザーンとしては損切という選択肢もあるが、本来求めていた利益を得る為には投資ファンドに出資し、生産設備増強の『手伝い』をする必要がある。特許の期限は五〇年。     
だがサンプルを手にした以上、同盟軍開発本部もその製造方法解明に力を注ぐから、一〇年以内で『自国開発技術』として生産体制を整えられるだろう。そうなればフェザーンには一銭の金も入らない。
 フェザーンが独自に資本を出してダミー会社を作って製造販売することもできるが、その場合は軍事物資納入資格の為に徹底的な査察が行われる。それは文字通り時間と金の無駄だ。

 ただ原作通りであればあと一〇年もすれば、金髪の孺子が銀河統一して自由惑星同盟という国家自体が滅び去っているのでどうでもいいことになっているかもしれないが、そこまでグラズノフに言ってやる筋合いはない。

「行儀よくお付き合いできれば、その次の世代の装甲材が出るまでに七〇億ディナールは儲かりますよ?」
「三五年かけてだろう……おそらく」
 三五年後にお互い国があるといいですね、と喉まで出かかったが、俺は何も言わず笑顔で首を横に傾けると、グラズノフは舌打ちをする。
「その絵図はちゃんと形になるんでしょうな?」
「それはオネーギン氏が請求額のゼロを二つ消していただければ、間違いなく」
「わかりました。早急にSRSB社様に訂正した書類をお持ちに上がります。中佐には事前にご連絡いたします」

 そう言ってソファから立ち上がったグラズノフに、俺も立ち上がって手を伸ばすと、心底嫌そうな目付きで俺の右手と顔を見比べてから、その手を取った。

「ちなみにその新会社から幾らキックバックを貰うつもりですかな?」
 来た時と同じ苦労人の笑顔を浮かべつつ、ギチギチと爺様以上ディディエ中将以下の『親密心』が込められた握手をしながら、グラズノフは俺に向かって聞いてくる。
「何度も繰り返すようで申し訳ないのですが、私は『まっとうな』軍人ですよ?」
 俺も腕の血管が浮き上がる位の親密心で握り返しつつ、理想的高級青年士官の笑顔を浮かべて応えると、笑顔を浮かべたままのグラズノフの蟀谷がピクピクと動いてから返してきた。

「いきなり三〇億ディナールもの大金を動かせる軍人は、決して『まっとうな』軍人ではないんですよ。金にはうるさい私の故郷でも、ね」


 
 

 
後書き
2024.09.08 投稿
 
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