擦れ違った人は
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第一章
擦れ違った人は
この時大学生の宇喜多陽介長方形の顔で黒髪を後ろで束ね太い眉ときりっとした目に引き締まった唇と一八〇近い筋肉質の彼は京都の四条にいた、そこにある店でアルバイトをしているのだ。
それで今は祇園にいるが。
一緒にいる店の店長の徳田力男小太りで丸い顔をしていて恵比寿産の様な顔をした禿げた彼に言われていた。
「ここ有名人もな」
「来ますか」
「お忍びでな」
それでというのだ。
「もう知ってるよな」
「いや、それが」
宇喜多は徳田に申し訳なさそうに答えた。
「俺元々生まれは福井で今年こっちの大学に来たばかりで」
「知らないか」
「はい、やっと慣れた感じで」
京都にというのだ。
「そうなんで」
「そうか、じゃあこれからな」
徳田は宇喜多にそれならと返した。
「わかればいいさ」
「そうですか」
「わからないならな」
それならというのだ。
「そうすればいいさ」
「それじゃあ」
「あらためて言うな」
徳田は自分の隣にいる宇喜多にさらに話した、今日は日曜で学校はない、それで宇喜多は徳田と一緒に診せの買い出しに朝から出ているのだ。
「ここは有名人がな」
「結構来るんですね」
「お忍びでな、それで舞妓さんとな」
「遊ぶんですね」
「そうだよ、それを言わないのもな」
「京都ですか」
「ああ、ただ案外政治家とかな」
俗に権力を持っているという職業の人達の話もした。
「財界の大物とかはな」
「来ないですか」
「忙しくてこうしたところに来るとな」
そうすると、というのだ。
「マスコミがいるからな」
「舞妓遊びしていたとか言われて」
「浮気だの贅沢だのな」
「そうしたことを言われるから」
「だからな」
それでというのだ。
「来ないな」
「そうですか」
「金持ってる芸能人とかそのマスコミの偉いさんとか大学の先生とかがな」
「来ますか」
「そうなんだよ、あと外国人でもな」
「来る人いますか」
「京都自体が観光客が多くてな」
そうであってというのだ。
「海外の有名人もな」
「お忍びで来て」
「そしてな」
「遊んでいますか」
「そうだよ、それに外国人といっても」
徳田は宇喜多にこうしたことも話した。
「白人とは限らないからな」
「アジア系も黒人もいますね」
「そうだよ、そこは色々だからな」
だからだというのだ。
「そのことは覚えておくんだぞ」
「ここはそうした場所ですね」
「そうなんだよ」
こうした話をしてだった。
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