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第7話「これが、宇宙人の声音か…!?」
前書き
ネオ・代表05−1です。第7話「これが、宇宙人の声音か…!?」となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――スリナム星宙域。
スリナム星宙域では現在…否、現在もなお2つの勢力が砲火を交えていた。
片方は、統一された形状を持つ白一色の艦で構成されている艦隊。
もう片方は、多種多様な艦種で構成されている艦隊。
片方は【組織】に属し、ギルド長である彼女より〈クロイン〉と呼称されている艦隊。
もう片方は彼女率いるギルドに属する艦隊だ。
当初は優勢であったギルド艦隊であるが、本隊と思しき艦隊が現宙域ことスリナム星宙域にワープアウトしたことで、形勢は逆転し、優勢であったギルド艦隊は現在では劣勢と化していた。
「全艦隊、後退ヲ開始セヨ」
「ラジャラジャ。司令部より―――」
ワープアウトした〈クロイン〉艦隊は対し、ギルド艦隊は攻撃せず後退を指令する。
指令を下したのは、アルファ艦隊、ブラボー艦隊、そしてチャーリー艦隊を指揮するOOMコマンダーバトルドロイドだ。
この状況下で攻撃を継続するのは得策ではない、OOMコマンダーバトルドロイドはそう判断したからだ。
撃沈した艦は半分以上あり、中破以下かつ小破そしてほぼ無傷な艦は半分以下と下回っており、数にして40隻。
この艦艇数で、敵本隊が来る前である〈クロイン〉残存艦隊20隻の撃滅が何とか可能である戦力を誇る。
だが、それは敵本隊が来る前であって、今となっては土台無理な事となってしまった。
後退を続けるギルド艦隊だが、その内のFG300型フリゲート艦1隻は、戦域から撤退しようとしていた。
そのフリゲート艦は、大破状態である艦艇だった。
大破艦であるFG300型フリゲート艦は回れ右し撤退、戦域の離脱を試みようとする。
ワープシステムを起動させた次の瞬間、機関部に甚大な被害が生じていたのか、内側からポップコーンが弾けるかように爆沈した。
「オ、オォ…!」「綺麗ナ花火ダナ〜」
「余所見スルナッ、馬鹿者!」
「「スミマセンデシタ!」」
その艦を余所に、後退を継続するギルド艦隊。
背中こそ見せてはいないものの、〈クロイン〉艦隊はギルド艦隊を追撃せんと速度を上げ、距離詰めを行っている最中。
やがて照準に収めた〈クロイン〉前衛艦隊は、後退が遅れているギルド艦隊から順次に主砲を発射していく。
回避行動しつつ主砲を砲撃し後退を続けるギルド艦隊だが、〈クロイン〉前衛艦隊の白いビーム砲撃は苛烈を極めつつある。
このまま行けば、勝利は〈クロイン〉であることは間違いない。
…その時だ。
「コ、コレハ…!」
オペレーターを務めるB1バトルドロイドの1体が、突如として驚きの声を挙げた。
そのB1バトルドロイドは、OOMコマンダーバトルドロイドのほうへ顔を向け、報告した。
「報告。艦隊後方にワープアウト反応ヲ確認シマシタ、艦隊デス。識別信号ヲ確認、コレハ…」
その次に発せられる言葉を察したOOMコマンダーバトルドロイドは、その正体を口にした。
「ーーー友軍、増援艦隊」
その報告の直後、スリナム星宙域を捻じ曲げるワープ技術の余波が周辺に広がっていき、アルファ・ブラボー・チャーリー艦隊の後方に増援艦隊がワープアウトする。
輝く青色の粒子を撒き散らしながら通常空間に現れた艦隊は、新型フリゲートと駆逐艦を中心に構成されている。
その艦隊の規模は、増援として駆けつけた〈クロイン〉本隊を上回り、200隻という規模の艦隊。
アルファ・ブラボー・チャーリー艦隊を纏めるOOMコマンダーバトルドロイドは、損傷が激しい戦闘艦を除き後退を止めるよう指令し、その後は向かい撃つ迎撃態勢を整えた。
そして、本隊に指示を仰いだのだった。
「…!?」
一方で、彼女ギルド長より〈クロイン〉と呼称されている艦隊、その本隊を指揮する司令官は目の前の光景に絶句した。
何だ、この規模の艦隊は…。
絶句していた司令官だったが、直ぐに凛とした佇まいに戻り、追撃中の味方前衛艦隊を停止させ、全艦隊にシールドを展開するように命じた。
直後、全〈クロイン〉艦は青色のシールドを展開し、そしてシールドの展開が完了した。
情報によれば、時代遅れである実弾兵装である砲弾を使用しているとあった。
更にはミサイル兵装。
ミサイル兵装はどの艦種も乏しいながらも装備しているが、ミサイル兵装を主とされる艦種まで敵にはある。
実弾兵装は確かに脅威だ。
特に砲弾。
まさか、砲弾が主に使用されているとは驚きであり、その一方で光学兵装を持っていないようだ。
「#%…」
笑みを浮かばせる司令官。
敵は、【災害】ではないのだ。
その笑みは、余裕さえ感じさせる笑みであったが、その笑みは直ぐに消えた。
増援艦隊の前衛を務めてるであろう40隻もの戦闘艦に、変化が起きたからだ。
その前衛艦隊は統一された白一色の艦艇で構成されており、その艦艇群は艦首にある大型の砲口内に蒼白い電気を帯びている風にも見えるだろう。
前衛艦隊には、400m級の巡洋艦を優に超える薄い緑の大型艦20隻の姿があるが、その大型艦に目立つ変化は無かった。
…アレは、白一色の艦艇の、艦首砲口のアレはいったい……?
あのような兵装?は見たことがない。
司令官は念の為、シールドを艦首に集中するよう全艦隊に指令を下した。
…その直後、”それ”は起きた。
ーーーズガァァァァァァァァァァ!!
突然、轟音が鳴り響いたと思えば、左斜め上を航行していた無人戦艦の艦首部から火の手が上がり、その無人戦艦よりシールド消失と被弾した報告が、司令官の元へやって来た。
……は?
呆気に取られる司令官。
呆気に取られる司令官を知らぬギルド前衛艦隊は準備が整ったのか、蒼白い電気を帯びている艦首大型砲口から一斉に斉射し、無人戦艦や無人巡洋艦へと瞬く間に到達する。
ーーードォォォォン!!
ーーーボゴォォォォォォ!!
シールドを消失したという報告が、司令官の元に次々と届く。
シールドが消失した瞬間も、司令官の瞳には確かと捉えていた。
シールドを展開しているが、そのシールドは意味を成していない。
なんだアレは!?
砲弾ではないのかっ?!
あり得ない速さで次々と味方艦がシールドを消失する光景を、司令官は蒼褪めた顔で眺めるしかなかった。
そして遂には全艦隊がシールド消失したと報告を受け、司令官はより一層に蒼褪めた顔となる。
その直後、敵増援艦隊の前衛と中衛よりエネルギー反応が検出された事に、司令官はビクッと身震いをしてしまう。
形勢は逆転した。
こうなれば、撤退する他ない。
司令官は直ぐさま撤退するよう指令を下し、艦隊はスリナム星宙域からの撤退を開始した。
その様子を要塞司令部で観ていた一人の女性、ギルド長は口を開く。
「シールドを完全に剥離した〈クロイン〉は、最早敵ではない」
スクリーンに映る〈クロイン〉艦隊は反転し、撤退を行っている。
…そう簡単に撤退出来ると思わない事だ、宇宙人。
「【マーレ インブリウム級実験型パルス砲フリゲート】は前へ、高機動戦闘を開始!楔を打ち込め!」
中列に展開していたマーレ インブリウム級実験型パルス砲フリゲート60隻は、エンジン出力を一気に開放して、〈クロイン〉艦隊に突撃していく。
〈クロイン〉艦隊は急襲に対応すべく、船体後方に指向されている二連装主砲を放ち、マーレ インブリウム級の撃沈を図るが、速度に乗ったマーレ インブリウム級には当たり辛く、白いビームで暗い宙を彩るくらいの事しか出来ないでいた。
「報告。戦隊規模ノレリアット級高速魚雷フリゲート艦隊、敵ノ右側面ノにワープアウトシマス」
「報告。戦隊規模ノレリアット級高速魚雷フリゲート艦隊、敵ノ左側面にワープアウトシマス」
「レリアット級、高機動戦闘を開始せよ!」
報告と同時に、レリアット級高速魚雷フリゲートのみで構成された艦隊が〈クロイン〉艦隊を挟む形でワープアウトした。
ワープアウトしたレリアット級は〈クロイン〉に肉薄し、魚雷を一斉に発射する。
マーレ インブリウム級も同様〈クロイン〉に肉薄し、パルス砲を斉射し、放たれた赤色の粒子が〈クロイン〉へ命中していく。
次々と戦果を挙げ、やがて戦域には片手で数える程の〈クロイン〉しか存在しなくなった。
その〈クロイン〉の構成は、600m級が1隻と400m級が3隻であり、600m級は他の600m級と違い、白と黒の二色を基調とした艦艇だ。
ということは、その600m級は旗艦ということになるだろう。
「敵通信ヲ傍受シマシタ」
「敵通信ヲ解析、敵通信ハ全艦隊に向ケラレテイマス」
…旗艦からか?
いや、旗艦に違いないな。
「流せ」
返答はしない。
あくまで聞くだけだ。ゲームのように都合よく翻訳なんぞ…、
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて!」
……ん?
『降伏する!降伏する!降伏する!降伏する!降伏する!』
………ん、いや、は、え…んん??
翻訳、されて、いるな。
……えぇ??
この世界はWOSゲームの世界ではない筈、いや絶対に現実世界、の筈なのだが…。
…返答、したほうが、いい、のか?
……いやいやいや、何を考えているのだ私は。
相手は宇宙人だぞ。宇宙人が降伏するということに超驚きだが、人間とは色々と違うんだ。
はぁ、と憂鬱気味に溜め息を吐くギルド長。
仕方ない、そちらの降伏を受け入れよう。
『返答ない返答ない返答ない返答ない返答ない返答ない返答ない返答ない返答ない』
…返答ないのは当然だろう、まだ返答していないのだから。
『降伏受け入れたと認識した降伏受け入れたと認識した降伏受け入れたと認識した』
……おい。
『ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう』
………おい。
「残存する〈クロイン〉艦隊、ワープシマシタ」
…………勝手過ぎる。
やはり返答………止めておこう。
気を取り直して、だ。
今回スリナム星宙域での戦いは勝利を掴んだ訳だが、この戦いで駐留していた艦隊の大部分が大きな損害を貰ってしまった。
やはり、シールドを保有していないのが原因だろう。
そもそもシールド自体、フリゲート艦や駆逐艦は勿論の事、巡洋艦ですら装備されていない代物。
そんな代物のシールドを〈クロイン〉は量産し、全ての艦艇に装備しているのは………末恐ろしいな。
そんな〈クロイン〉、いや正確には退いた〈クロイン〉は報告によると、どうやら隣星系の某惑星にある軍事拠点へ進路を取っているようだ。
「デルタ艦隊、追撃準備ガ整イマシタ」
さて、今までスリナム星宙域で、〈クロイン〉の侵攻を阻止して来たのは言うまでもない。
だが、守勢は今日までであると宣言しよう。
修理中の艦艇に加え、スリナム星宙域に関する情報と共に出撃待機中の艦隊の様子が、スクリーンに映し出されている。
その出撃待機中の艦隊の正体は、デルタ艦隊である。
デルタ艦隊は増援として駆けつけた艦隊であり、…隣星系へ攻め込む艦隊でもある。
攻め込み、敵艦隊を撃滅する他にも軍事拠点の制圧もあるのだが、軍事拠点の制圧はデルタ艦隊の役割ではない。
軍事拠点を制圧するのは、地上戦力の役割だ。
「【Çー9979着陸船】、デルタ艦隊後方にワープアウトシマス」
そんな地上戦力を積載する船が、たった今スリナム星宙域にワープアウトし、デルタ艦隊後方へと移動していく。
Hのフォルムをする特徴的な着陸船だが、地上戦力を積載する能力は素晴らしいの一言だ。
地上戦力を展開する素晴らしい光景が目に浮かぶわ。
しかし、目に浮かぶといえば、宇宙人姿だな。
二次創作や映画でよく見る、グレイ型が真っ先に目に浮かぶ。
宇宙人の捕獲、作戦に組み込むとするか。やってみたかったし。
「副主席。後の事は任せるぞ、私は休んで来る」
「承知しました」
副主席の返事を聞いた彼女は踵を返し、要塞司令部を後にし、自室に向かうのだった。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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