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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第44話

ヴァンとアーロンがナイトクラブを訪れるとステージで下着姿の女性達がポールダンスをして客達を楽しませていた。



~ナイトクラブ~



「ヒュウ、いいじゃねーか♪こういうのだよ、こういうの。さーて空いてる席はと…………」

ナイトクラブを目にして思わず口笛を吹いたアーロンは空いてる席を探し、ヴァンと共にカウンター席に座って酒の注文をした。

「”サルバッドナイト”一つ。そっちはどうする?」

「アレキサンダー・ナツメグ多めで。」

「かしこまりました。」

「ったく、徹底してんな…………」

酒も甘味を強くするように注文するヴァンにアーロンは呆れた表情で指摘した。

「本場のナツメグ入りだ。結構イケるぜ?」

そして注文した酒が来ると二人は酒を飲みながら煽情的な姿の女性達のポールダンスを見て楽しんでいたが、ポールダンスをしている女性の一人が意味ありげな視線をヴァンに向けた。



「っ…………!?(…………なんだ…………?)」

女性の視線に気づいたヴァンは驚いた後自分に視線を向けた女性の意図を考えた。

「クク――――――なかなかイカスのを揃えてるじゃねえか。てめぇもそう思わねえか?」

するとその時聞き覚えのある男性の声がヴァンに声をかけ、ヴァンが自分に声をかけた人物へと視線を向けるとランドロスがルクレツィアと共にポールダンスを見ていた。

「…………アンタらは…………」

「絡まんの、旦さんったら。ごめんねぇ、ちょいと酔ってはるの。でもええねぇ、たまにはこういうのも。」

「ああ、サルバッドは初めてだがなかなか愉しませてくれそうだぜ。好敵手(ヴァイスハイト)の分も愉しんで、後で自慢してやるか。」

「うふふ、おひねりもたぁんと用意しとかんとなぁ。今時の若い子にはどんなのが悦んでもらえるやろねぇ?」

「ありがとうございました~!いや~、素晴らしいダンスでした!続きましては皆さんお待ちかね――――――」

「……………………」

「…………おい。おいって、見ろよ…………!」

ランドロスとルクレツィアの意味ありげな言葉を聞いたヴァンが真剣な表情で二人を見つめている中進行役が次のダンスをする女性達を紹介していると、あることに気づいたアーロンがヴァンに声をかけた。

「…………っ、なんだ――――――」

(あら、彼女は…………)

(…………なるほど。彼女が頑なに隠そうとしていたのは”この事”だったのね…………)

声をかけられたヴァンがアーロンが視線を向けている場所――――――ポールダンスの舞台へと視線を向けるとある人物が舞台に現れ、舞台にいる人物を目にしたユエファは目を丸くし、マルティーナは重々しい様子を纏って呟いた。

「さあ、今宵の”真打ち”の登場です!この度、映画祭を彩るフォクシーパレードに選ばれたサルバッドきっての夜の蝶――――――サァラ嬢でございます!」

舞台にいるある人物――――――下着姿のサァラはヴァンとアーロンを見つけると目を丸くした。

「そちら方面でデビューすればここでの出演は最後かもしれません!”お持ち帰り”は難攻不落と噂の彼女、これを機会にトライしてみては!?それではミュージック・スタート!」

そして音楽が始めるとサァラはポールダンスを始め、サァラがポールダンスを始めると客達は一際大きい歓声を上げていた。



10月6日、0:30――――――



その後サァラがナイトクラブでの仕事を終えると、ヴァンとアーロンはサァラからナイトクラブで働いていた事情を聞いた。



~歓楽街~



「――――――借金、か。」

サァラの事情を知ったヴァンは重々しい口調で呟いた。

「…………はい…………元々私達はカルバードではなく大陸中東のある町で暮らしていました。まだ妹が幼い頃、両親が生活に困って良くない筋から借りたみたいで…………両親の死後、逃げるようにしてこちらに移り住んできたんです。」

「だが結局目ざとく見つけられて返済を迫られてるってわけだ。昼の稼ぎも合わせてもいまだ返せてねぇってことは…………相当ロクでもねぇところから借りたみてぇだな?」

サァラの話を聞き、サァラのナイトクラブでの”仕事”を思い返したアーロンはサァラの借金相手の悪質さを察し、真剣な表情でサァラに確認した。

「ふふ…………お恥ずかしい話です。」

「あ?別に恥じることでもねーだろ。身体売ってるわけでもなし――――――仮にそうでも、だからどうしたって話だが。」

「……………………最初の頃は”そういう返済方法”も迫られはしたんです。それと共和国では親の借金を放棄できる制度があることも聞いていましたし、共和国がメンフィル帝国とクロスベル帝国に占領されてそれぞれの領土になった後もその制度は続投しているとの事です。ですがどちらの方法も…………両親との絆を断ってしまうような気がして…………」

アーロンの指摘に目を丸くしたサァラは詳しい事情を説明した。



「あくまで受け継いだ踊りで、返すことを選んだってわけか。ま、ミラさえ回収できりゃ連中は文句は言わねえだろうが。」

「ハッ、だからギルドに頼むのを避けてやがったわけか。」

「はい…………尊敬していますけど放棄を勧められそうでしたので。つまらない意地、ですよね。」

「まあ、不器用だとは思うがな。――――――その様子じゃ妹には言ってなさそうだな?夜の踊り、いや借金のことすらもか。」

サァラの話を聞いてサァラの今までの様子を思い返したヴァンはシャヒーナは借金の事すらも知らない事を察し、サァラに確認した。

「…………今更打ち明けるなんて、とても。それに――――――今になってようやく完済の希望が出てきたところなんです。今日、お誘いをもらったフォクシーパレードの出演料さえ入れば。」

「ハッ、そういうことか。ったく…………どいつもこいつもなんでわざわざ茨の道を選ぶかねぇ?ラクして生きる方が賢いだろうに。」

(貴方も他人の事を言えないでしょうに…………)

(フフ、これがまさに”おまいう”よね♪)

脅迫状をもらってもパレードの出演をするつもりでいるサァラの事情を知って鼻を鳴らしたアーロンの指摘を聞いたマルティーナは苦笑し、ユエファはからかいの表情で呟いた。

「ハン、それはお前もだろ。簡単に割り切れるもんじゃねぇ――――――一度、心に決めちまった以上はな。…………あんたの妹なら大丈夫だ。黙ってたことは怒るかもしれねぇが、それも含めての姉心なのはわかるだろ。」

アーロンに指摘したヴァンはサァラの頭を優しくなでてサァラにフォローの言葉をかけた。

「あ…………」

「脅迫状のことはこっちに任せて明日からはパレードに集中するといい。さっきもまあ、セクシーだったがそれ以上に練り上げられた芸を感じた。ああ――――――ついでだし依頼料もいいぜ。追加報酬(ダンス)も貰っちまったしな。」

「…………ヴァンさん…………グスッ………はい、私、頑張りますから…………!どうか楽しみにしていてくださいね…………!」

ヴァンの気づかいに思わず涙を流したサァラは頷いて微笑みながら答えた。



(マジかよコイツ………)

(フフ、ヴァンさんもやるわね♪)

(ええ。しかもあれは無自覚ね。)

ヴァンとサァラの様子を見ていたアーロンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ユエファは感心し、マルティーナは苦笑していた。

「―――ア・ン・タ・らぁあああっ!!

するとその時怒っている様子の女性の声が聞こえるとグリムキャッツがヴァンに奇襲をしかけたが、奇襲に気づいたヴァンはすぐに自身の得物で防いだ。

「っ…………!」

「え、え…………?」

「なんだコイツ………?って、タブロイドで読んだ――――――」

グリムキャッツの登場にヴァンは表情を引き締め、サァラは困惑し、アーロンは驚いた後グリムキャッツをよく見てあることに気づいた。

「………見損なったわよ、裏解決屋(スプリガン)…………!こんな夜更けに女の子を連れ回して、挙句の果てに泣かせるなんて…………!やっぱりロクな奴じゃなかったわね!?」

「見てたのかよ…………アンタもヒマじゃねぇだろうに。夜はとっとと寝ねぇと自慢の美貌に悪いんじゃねぇのか?」

グリムキャッツの指摘を聞いて一連の流れをグリムキャッツが見ていたことに気づいたヴァンは呆れながらグリムキャッツに指摘した。



「だ、誰が肌が心配な年増ですってぇ~!?」

「そこまで言ってねぇだろ!?」

「あの、違うんです――――――」

「………もはや問答は無用。女神達に蹴っ飛ばされて煉獄に堕ちなさいっ――――――!」

グリムキャッツがヴァンの事を誤解していることに気づいたサァラはグリムキャッツに事情を説明しようとしたがグリムキャッツは聞く耳はなく自身の武装を構えた。

「旧首都を騒がす女怪盗だったか。…………だが…………」

「今は後だ――――――来るぞ!」

そしてヴァンとアーロンはグリムキャッツとの戦闘を開始し、グリムキャッツと互角の戦いを繰り広げていた。



「チッ…………やりやがる!」

「ったく、いい加減落ち着け…………!」

グリムキャッツの予想以上の強さにアーロンは舌打ちをしてグリムキャッツを警戒し、ヴァンはグリムキャッツを説得の言葉をかけた。

「これが落ち着いていられますかっ!ちょっと見直したアタシがバカだったわ!ニナの目を覚ますためにもここで――――――」

対するグリムキャッツは聞く耳を持たず、怒りの様子で戦闘を続行しようとしていた。

「あの――――――待ってください!」

その時声を上げたサァラがヴァンとアーロンを庇うように二人の前で両手を広げた。

「っ…………!?どいてなさい、今アタシが天誅を――――」

「違うんです――――――ヴァンさんたちは私を送ってくださってるだけなんです!その、さっきは話を聞いてもらった感極まってしまっただけで…………!」

「いいの、無理しなくて!貴女も辛かったでしょ、う――――――…………え”。…………マジ?」

サァラの言葉を聞いてようやく自分が勘違いしていたことに気づいたグリムキャッツが表情を引き攣せると同時に固まってヴァン達に問いかけた。対するヴァン達は何も語らずグリムキャッツの反応を待っていた。



「…………えっと…………きょ、今日の所はこれで勘弁してあげるわ!でもくれぐれも肝に銘じなさい――――次に女の子を泣かせたら只じゃおかないから!」

そしてグリムキャッツは武装を収めてヴァン達に捨て台詞を吐いた後その場から走り去った。

「え、ええと…………なんだったんでしょう?」

「さあな…………旧首都を騒がす女怪盗のコスプレじゃないか?」

グリムキャッツが去った後疑問を口にしたサァラの問いかけにヴァンは答えを誤魔化した。

(つーか、オイ…………)

その時グリムキャッツの正体に気づいたアーロンは小声でヴァンに確認した。

(ま、見たまんまだ。何やら事情がありそうだ――――――わざわざ突っ込むなよ、面倒だし。)

(…………マジかよ…………)

ヴァンの答えを聞いたアーロンは呆れた表情を浮かべた後ヴァンと共にサァラの送りを再開した。



「……………………」

一方その頃去って行くヴァン達の様子をコートの男は建物の屋上から見下ろしていた。

「―――――どう、気に入った?」

そこにメルキオルが男に問いかけた。

「…………ああ、期待通りの顔触れだ。思いがけぬ”ゲスト”も愉しみにしてくれているらしい。せいぜい盛り上げてやるとしよう――――――”恐怖”を導くための黄金の狂騒曲でな。」

「そうだね――――――ボス♪」

男の言葉にメルキオルは嬉しそうに頷いた。



8:05――――――



~伝統地区・宿酒場”三日月亭”~



「「………………………………(じー)」」

翌朝朝食を取っていたヴァン達だったがアニエスとフェリは冷たい視線をヴァンに向けていた。

「あー、お嬢さん方?そう膨れんなよ。せっかくの朝飯がマズくなるぜ。いや~絶品だなぁ、このディップ料理(アムス)

二人の冷たい視線に対してヴァンは話を誤魔化そうとした。

「別に、怒ってません。ヴァンさんたちはいいですよね、昨夜はお楽しみだったみたいで。」

「…………せめて一言でもあれば。これでは護衛の意味がありません。」

顔を俯かせて複雑そうな表情を浮かべたアニエスだったがすぐに再び冷たい視線をヴァンに向けてヴァンに対する皮肉の言葉を口にし、フェリは呆れた様子で首を横に振って答えた。

「うっ…………」

「クク、ザマぁ。結局バレてやんの。」

「申し訳ありません、フォローしきれずに。」

二人の言葉と視線に思わず冷や汗をかいて唸り声をあげたヴァンの様子をアーロンは面白そうに見守り、リゼットは苦笑しながら謝罪の言葉を口にした。



「ふう、アンタのせいじゃないさ。しかし――――――俺達のいない間にまた”ゲネシス”が光るなんてな。」

溜息を吐いたヴァンはアニエス達から聞いた話を思い返した。

「タイミング的にはちょうど”怪盗(あの女)”とやり合ってた時だったか?」

「…………はい、偶然かもしれませんが。ヴァンさんたちに何かがと思って心配したんですからね…………?」

「悪かった、この通りだ。だがメア公も出てこなかったし、同じってワケでもなさそうだな。」

「ふむ、いくつかの反応パターンがあるということですか…………」

アーロンの確認に答えた後自分達を心配していたことを口にしたアニエスに頭を下げたヴァンは気を取り直してゲネシスの事を考え、リゼットはある推測をしていた。



「いや~、しかしまさかだよな。チビ、お前も気づいてたのかよ?」

「えと、まあ…………映画と同じ動きでしたし。」

「…………?」

「映画と同じ…………?」

グリムキャッツの正体について話し合っているアーロンとフェリの会話の意味がわからなかったアニエスとリゼットはそれぞれ不思議そうな表情を浮かべた。

「ま、一旦スルーしてくれ。」

そして朝食を終えたヴァン達は宿を出た。



~伝統地区~



「ヴァンさん、皆さんも――――――おはようございます。」

ヴァン達が伝統地区を歩いているとシャヒーナと共に歩いているサァラが声をかけて近づいた。

「あ…………おはようございます。」

「なんだ、そっちも朝からお出かけか?」

「はい、今から打合せでベガスフィルムに行くんです。明日に向けて急ピッチで仕上げる必要があるとかで。」

「フフン、あたしもマネージャーとしてしっかり話を聞いて来るつもりだよ。えへへ、ジュディスさんやニナさんとも会えちゃうかな~!」

「ハッ、それも狙いかよ。」

「もう…………勝手についてきて怒られても知らないんだからね?」

期待している様子のシャヒーナの話を聞いたアーロンはシャヒーナがサァラのマネージャーとして同行している理由を察し、サァラは困った表情でシャヒーナに指摘した。

「ヘーキヘーキ、それどころか監督さんに見初められちゃうかもよ!『シャヒーナ君、君こそ次代のスターになれる逸材だ!』な~んて、言われちゃったら困るよね~!だってもうあたしたち、あの”アルカンシェル”からもスカウトされているし!」

「え…………お二人共、あの”アルカンシェル”からスカウトされているんですか…………!?」

「”あるかんしぇる”とは一体…………?」

「帝都クロスベルで活動している有名な劇団です。その素晴らしい演技と舞踊は世界的にも有名で、クロスベルがまだ自治州だった頃からアルカンシェルの劇を観る事を目的に世界各国からわざわざクロスベルを訪れる程との事です。」

「俺も噂では聞いているぜ。特にアルカンシェルの3人の看板女優の”舞姫”達は昨日会ったトップスター二人とも互角か、下手したらそれ以上の人気があるって話らしいじゃねぇか。」

シャヒーナが語った驚愕の事実にアニエスは驚き、首を傾げているフェリにリゼットが説明し、アーロンは興味ありげな様子で自身が知っている知識を口にした。





「えへへ、しかもその”舞姫”の一人であるあのリーシャ・マオが直々にあたし達をスカウトしてくれたんだよ~!」

「ええっ!?」

「ほう…………?」

「アルカンシェルの看板女優の一人である彼女直々のスカウトとなると、アルカンシェルの彼女達へのスカウトは間違いなく”本物”でしょうね。」

「ああ。(そうなるとこのサルバッドで活動しているエースキラーの顔触れは”中央”の刑事達や”暴君”、”黄金蝶”に加えて…………)――――――ちなみにリーシャ・マオはまだこのサルバッドに滞在しているのか?」

胸を張って自慢げに語ったシャヒーナの話を聞いたアニエスは驚きの声を上げ、アーロンは興味ありげな表情を浮かべ、リゼットの推測に頷いたヴァンはある推測をした後シャヒーナに訊ねた。

「うん。なんでもアルカンシェルは今長期休暇の期間だから、休暇を利用しての旅行でサルバッドを訪れたらしくて、リーシャさんは映画祭が終わるまでは滞在するつもりだって言っていたよ~。」

「もう、シャヒーナ。本人の許可もなく他人のプライベートは口にしてはいけないわよ。」

ヴァンの確認に対して答えたシャヒーナにサァラは困った表情で注意した。



「えと…………それでお二人共その”あるかんしぇる”という所からの”すかうと”に応じるのですか?」

「いえ。突然の話でしたから、少しだけ考える時間を頂いてもらっているのですけど…………遅くてもリーシャさんがサルバッドを発つまでには答えを決めるつもりです。」

フェリの問いかけにサァラは苦笑しながら答えた。

「――――――ま、パレードにしてもスカウトにしてもやれるだけやってみな。どちらにしてもいつもの踊りとは勝手が違うだろうが。それこそ、デカイ扉が開けるなんてこともあるんじゃねえか?」

「はいっ、頑張ってきますね。」

「……………………」

「むむむ?昨日とはな~んか雰囲気が違うような…………ハッ、さてはお姉が夜に会ってる”彼氏”っていうのは…………!」

ヴァンの応援の言葉にサァラが笑顔で頷くとその様子を見ていたアニエスは複雑そうな表情を浮かべ、シャヒーナは意味ありげな笑みを浮かべた後あることに気づいた。

「ちょ、ちょっとシャヒーナ?」

「いや、昨日来たばっかの俺達なわけねえだろ。」

シャヒーナの言葉を聞いたサァラは戸惑い、ヴァンは否定の指摘をした。

「てへ、そうだった。」

「もう…………ごめんなさい、うちの妹が。皆さんもお仕事頑張ってください。”依頼”以外も応援していますから。」

「うーん、やっぱり怪しいな~…………」

「はいはい、いいから行くわよ。」

そして姉妹はその場から立ち去った。



「…………なんだ、まさか真に受けてんじゃねえだろうな?昨日のことは説明しただろ。」

姉妹を見送ったヴァンは仲間達に振り返ってあることを確認した。

「それはそうなんですけど…………」

「ふふ、ヴァン様も罪作りですね。」

「?ツミツクリ?」

「クク、お子ちゃまには関係ねー話だ。」

ヴァンの問いかけにアニエスは納得いかない様子で答え、苦笑しながら呟いたリゼットのある言葉が気になったフェリにアーロンは口元に笑みを浮かべて指摘した。

「むっ…………お子ちゃまじゃありませんっ!」

「だあっ、往来でじゃれるなっ。」

「…………コホン、改めて脅迫状の件は何とか突き止めないと、ですね。ニナさんたちのためだけじゃなく、サァラさんたちのためにも。」

「ああ、映画祭前日――――――おそらく今日が最初の山場だろう。俺達が動いていることも含めて”何か”が動きを見せるはずだ。4spgも含めて改めて嗅ぎ回るから、取りこぼさねえように鼻を利かせろよ。」

「はい…………!」

「了解ですっ!」

「わたくしも本格的にサポートさせて頂きますね。」

そしてヴァン達はサルバッドでの二日目の活動を開始した――――――

 
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