幻想のバンパイア
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第一章
幻想のバンパイア
吸血鬼の話をされてだ、八条大学に通うルーマニア人のヴァレンティン=オリゴ面長で白い髪の毛に穏やかな青い光を放つ目を持つ長身の彼は言った。
「決してね」
「日本人が思うものじゃない」
「そうだっていうんだね」
「実際の吸血鬼は」
「ドラキュラ伯爵も」
吸血鬼の代名詞になっているこの吸血鬼もというのだ。
「実は原作ではね」
「ああした外見じゃないね」
「痩せて血走った感じで」
「高貴さはないね」
「大体が墓場から這い出てるから」
吸血鬼はというのだ。
「そんなね」
「高貴さはないんだね」
「これが」
「かなり怖い感じだね」
「多くの吸血鬼はね」
日本人の学友達に話した。
「東欧の吸血鬼は」
「特にルーマニアは」
「ルーマニアは吸血鬼で特に有名だけれど」
「そちらでもだね」
「うん、そうだよ」
こう話すのだった、彼は祖国に伝わる吸血鬼の話を子供の頃からよく聞いていて知っていた。そうしてだった。
その話の後でだ、彼は日本の本を読んで文学を学んでいたがそれでもだった。芥川龍之介のその本を読んでドイツから留学してきているヨハネス=シュバルツブルグ一九〇近い長身ですらりとしていて金髪をオールバックにし知的な青い目の彼に言った。
「芥川の死霊の恋だけれど」
「ああ、あの作家の」
「そう、あの作家が訳した作品でね」
「あの作家翻訳もしていたんだ」
「吸血鬼でなくて夜叉と書かれていて」
「当時が吸血鬼って言葉はなくて」
「それでね」
シュバルツブルグにこのことも話した。
「随分と優しくて可憐な」
「そんな吸血鬼なんだ」
「クラリモンドと言って、けれど」
それでもというのだった。
「僕は思う吸血鬼は」
「ルーマニア人からしたら」
「随分と怖いものだよ」
「墓場から出て来てだね」
「物凄い姿で徘徊してね」
そうしてというのだ。
「人を襲う」
「そうした存在だね」
「そうだよ、ただね」
それがというのだ。
「文学ではね」
「吸血鬼は高貴だったりね」
「可憐だったりしてね」
「そうした存在でね」
「墓場から這い出た様な感じはないね」
「そうだよ、特に日本人はね」
今自分達がいる国の人達はというと。
「特にね」
「吸血鬼を高貴に書いたりするね」
「可憐だったり時には」
オリゴはさらに話した。
「可愛かったり」
「色々だね」
「それがね」
その描き方がというのだ。
「僕としてはね」
「違和感があるね」
「うん、吸血鬼は」
彼等はというと。
「怖くておぞましい」
「そうしたものだね」
「あくまでね」
こうシュバツルブルグに話した、そうして神戸にある大学でキャンバスライフを過ごしていた。だが。
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