花を求めて
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第二章
その中でだ、不意にだった。
王の身体に赤い斑点が出来た、そしてだった。
「痒いぞ」
「斑点がですか」
「そうなのですか」
「そうなった」
最初はこう言った、それからだった。
斑点が腫瘍になり膿も出てだった、身体の調子が悪くなってきた。それで彼は周りに言うのだった。
「これはまさか」
「イタリア病では」
「まさかと思いますが」
「そうなのでは」
「これはまずいぞ」
周りにその赤い腫瘍が出て来ている身体で言った。
「膿が出て瘡蓋にもなってきた」
「お身体も腐ってきていませんか」
「特にお鼻が」
「王妃様にもそうしたものが出ています」
「王よ、このままではです」
「危ういです」
「すぐに医師や薬を呼べ」
王は狼狽して言った。
「そしてだ」
「はい、治療ですね」
「それにあたりますね」
「そうされますね」
「そうする」
こう言ってだった。
王はすぐにその病の治療にあたった、だが。
あえなくだ、鼻が落ち身体のあちこちが腐り身体はまともに動かなくなった。そして腐り果てて世を去った。
その話を聞いてだ、カール五世は言った。
「そうならない筈がなかった」
「イタリア病で死ぬ」
「フランス王はそうなる」
「それは決まっていましたか」
「そうだったのだ」
まさにというのだ。
「このことはな」
「女も過ぎれば病を得る」
「そして死ぬ」
「そうなるのですね」
「そういうことだ。酒も過ぎればそうなるが」
皇帝は今はビールを飲んでいない、だがビールを思い出して話した。
「女も然りだな」
「花を求めて病を得た」
「そして亡くたった」
「考えてみれば皮肉ですね」
「全くだな」
皇帝は自身の廷臣達の言葉に頷いた、そうしてだった。
フランス王にお悔やみの言葉を述べた、そこでは王の病のことは言わなかった。王の死について書いていて悪意も敵意もそこにはなかった。
花を求めて 完
2024・2・14
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