金木犀の許嫁

「読めます」
「そうなんですね」
「ですから」
　まさにというのだ。
「手軽にです」
「読めるんですね」
「そうです」
　そうした作家だというのだ。
「多くの作品は」
「多くの？」
「普段の文章は読みやすいですが」
　そうであるがというのだ。
「中にはです」
「読みにくい作品ありますか」
「非常に教養の高い人だったので」　
　そうであるからだというのだ。
「ですから」
「教養ですか」
「それで色々な文章を書くことが出来まして」
　そうであってというのだ。
「江戸時代の文章もです」
「書いているんですか」
「ですから」
　それでというのだ。
「あの人は」
「作品によってですか」
「読みやすい作品が多いですが」
　幸雄は話を続けた。
「学問的な読みやすいかといいますと」
「そうでない作品もですね」
「あります」
　そうだというのだ。
「そうなのです」
「そうですか」
「教養が兎角です」
　芥川龍之介はというのだ。
「高かったのです」
「作家さん達の中でも」
「記憶力がよく」　
　そうであってというのだ。
「読む速さが尋常でなかったので」
「そんなに速かったんですね」
「英語の本を読みましても」
　日本語ではない即ち自分のネイティブな言語でなくてもだ。芥川は他には漢文にも強かったことで知られている。
「どんどんです」
「読めたんですね」
「そうした事情があったそうで」　
　本を速く読まなくてはならないそれがだ。
「そうした速読のスキルをです」
「備えていて」
「それで、です」
「読んでいたんですね」
「それで読む本が多く」
「教養もですね」
「凄かったです、ですから」
　高い教養を備えていたが故にというのだ。
「文章もです」
「江戸時代のものとか書けたんですね」
「そしてそうした作品は」
「読みにくいですね」
「古典の文章なので」
　言うならというのだ。
「ですから」
「読みにくくて」
「軽く読むには」
「向いていないですか」
「そうです」
　まさにというのだ。
「そうした作品は」
「そうですか」
「そしてです」
　幸雄はさらに話した。