英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
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第41話
いくつかの4spgをこなしたヴァン達はニナから依頼について詳しい話を聞くためにアルジュメイラホテルを訪れた。
~アルジュメイラホテル~
「『アルジュメイラホテル)』…………なんだか溜息が出ちゃいますね。」
「はい、前の時は展望エリアに入っただけでしたけど…………」
「セレブとミラ持ち御用達って感じだな。一回くらい泊まってみたいもんだぜ。」
「…………ちなみに下手すりゃ一泊で事務所の賃料を軽く超えるからな?」
アニエスやフェリと共に興味ありげな様子でホテル内を見回して宿泊してみたい事を口にしたアーロンにヴァンは宿泊の料金についての指摘をした。
「ハッ、だろうな。」
「そ、そうなんですか…………」
「あはは、まあこういう世界もあるということで。」
宿泊代の高さについてアーロンが苦笑しながら納得している中、目を丸くして驚いているフェリにアニエスは苦笑しながら指摘した。
「ムウウン。ようこそいらっしゃいました。アークライド様ご一行ですね?お待ちしておりました。お客様がお待ちです、どうぞこちらへ。」
その時ホテルマンがヴァン達に声をかけて近づいた後恭しく礼をした。
「あ、はい。(最初の掛け声は…………)」
「話が早くて助かるぜ。(ま、スルーしとけ。)」
ヴァン達はそのまま高層階の客室に案内された。
~客室~
「皆さん――――――ようこそお越しくださいました。遠い所までお疲れだったでしょう?」
ヴァン達が部屋に入ってくるとニナがヴァン達に労いの言葉をかけた。
「ま、長距離ドライブもたまにはいいモンさ。」
「ニナさんもお疲れ様です。旧首都から飛行船で来たんですね?」
「はい、つい先ほど着いたところで。そちらの貴女は初めまして、ですね?」
フェリの確認に頷いたニナはヴァン達の中で唯一初対面のアニエスに視線を向けた。
「初めまして、アルバイトで助手のアニエス・クローデルといいます。『南風に乗って』が大好きで…………ニナさんにお会いできるなんて光栄です。」
「私のデビュー作を…………ふふ、こちらこそ嬉しいです。」
「ああ、あのちょっと地味だが斜上的なカメラが逸脱だったアレか。主演のアンタの透明な存在感も良かったぜ。」
アニエスの自分のデビュー作である映画に対して評価にニナが微笑んでいる中、ヴァンもアニエスのようにニナのデビュー作についての感想を口にした。
「ふふ…………アークライドさんも観ていてくださったんですね。」
「意外です…………ヴァンさんでも恋愛映画とか観たりするんですね?」
ヴァンの感想にニナが微笑んでいる中アニエスはヴァンが観ていた映画のジャンルの意外さに若干驚いていた。
「ああ、割と何でも観るぜ。」
「恋愛映画…………ちょっと大人な感じです…………」
「クク、スイーツといい顔に似合わねえモン観てやがんな?」
「顔は関係ねーだろ、顔は!」
「―――――ニナ、入るわよ?なんか騒がしいけどもしかしてもう来てるの?」
からかいの表情で指摘したアーロンにヴァンが反論したその時扉の外から女性の声が聞こえてきて、扉が開きある女性が部屋に入ってきた。
「話は聞いてるけど一体どういう――――――え。」
部屋に入ってきた女性――――――ジュディスはヴァン達を目にすると驚きの表情を浮かべた。
「先輩――――――ちょうど良いところに。」
「お、驚きました…………」
「ヒュウ、まさかのジュディス・ランスターかよ!?」
「…………えと…………」
ジュディスの登場にアニエスとアーロンが驚いている中ジュディスの正体を知っているフェリは気まずそうな表情を浮かべた。
「あ、貴方たちは…………」
一方ジュディスは困惑の表情でヴァン達を見つめていた。
「『アークライド解決事務所』、所長のヴァン・アークライドだ。アンタが”共同依頼者”だな?――――――ま、よろしく頼むぜ。」
その後ヴァン達はニナとジュディスによってスイーツをご馳走してもらった。
~会議室~
「――――――ご馳走様でした。本当に素晴らしかったです。」
「さすが最高級ホテル、料理も絶品じゃねーか。」
「よくわかりませんけどどれもこれも美味しかったですっ。」
「…………この濃厚さと甘さの余韻…………ラクダのミルク、想像以上だぜ…………!そして生カカオの風味………現地でしか流通してねぇらしいが…………まさに砂漠の先に辿り着いたオアシス…………いや、楽園と言えようっ…………!」
仲間達がニナにご馳走してもらったスイーツの感想を口にしている中ヴァンはスイーツに関する詳細な感想を口にし、ヴァンのその様子にアニエス達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。
「ウザすぎんだろ…………」
「相変わらず甘味に関しての評価が大げさな男ですね…………」
「まあまあ、実際このショコラは普通のショコラとは比較にならないくらい美味しいのは事実じゃない。」
「それに男にありがちな酒やタバコと比べたらよっぽどいいと思うわよ。」
それぞれ呆れた表情で指摘したアーロンとメイヴィスレインにマルティーナが苦笑しながら諫めの言葉を口にし、ユエファは苦笑しながら答えた。
「ふふ、私達もお気に入りなので気に入っていただけて嬉しいですね。って先輩…………どうかしましたか?いつもより静かなような。食事もあまり進んでいませんでしたし、もしかして具合でも悪いんじゃ…………?」
ジュディスがいつもと比べて静かであることに加えて食も進んでいないことに気づいたニナはジュディスを心配そうな表情で見つめて声をかけた。
「…………へっ?あ、ううん大丈夫、元気いっぱいよ。――――食事も済んだところで改めて本題に入らせてもらうわ。ニナから大体の話は聞いてる―――――解決事務所、いえ”裏解決屋”だったわね。その筋では名前も通ってるそうだけど…………あたしたちがポケットマネーを出してまで”あの件”を頼む価値が本当にあるのかしら?」
ニナに答えたジュディスは一瞬ヴァンに視線を向けた後話を始め、試すような視線でヴァンを見つめた。
「……………………」
「先輩…………ここで蒸し返すんですか?」
ジュディスの問いかけはある程度想定していたのかヴァンは何も答えず目を伏せて黙り込み、ニナは複雑そうな表情でジュディスに訊ねた。
「アンタの直感を疑うわけじゃないけどあたしたちの立場を忘れちゃダメよ。ディンゴ・ブラッドだっけ?あの記者はまあ信用できそうだけど。下手したらもっとタチの悪いスキャンダルに繋がりかねないんだし。」
「ハッ、さすがトップ女優。そこらへんはキッチリしてるか。確かに”裏”に片足突っ込んでる奴らに安易に借りを作るもんじゃねぇな。ま、そちらもどうやらギルドには頼りたくない事情もあるみたいだが?」
ジュディスの忠告にニナが答えを濁している中アーロンは口元に笑みを浮かべてある指摘をした。
「ぐっ…………」
(ま、だろうなぁ…………)
(はい……)
(あの時見せた彼女の性格を考えるとその内自らボロを出すような気がしますけどね…………)
「…………?」
アーロンの指摘に反論がないのかジュディスは唸り声を上げ、ジュディスが怪盗グリムウッドである事を知っているヴァンとフェリは納得し、メイヴィスレインが呆れた表情を浮かべて推測している中ヴァン達の様子が気になったアニエスは不思議そうな表情を浮かべた。
「えっと…………?別にスキャンダルとか後ろ暗いことがあるわけじゃないんです。…………ただ、狭い業界なので関係者の悪戯の可能性もあって。そんな時、警察やギルドだとどうしても内々というわけには…………」
「確かに…………重犯罪ではない限り、”示談”で済ませたいわけですか。」
「そうそう、そうなのよ~。お嬢さんわかってるじゃない!」
ニナの話を聞いて推測を口にしたアニエスにジュディスは口元に笑みを浮かべて頷き
「?理屈はわかるが何で蒸し返すんだ?”アンタの方”は微妙に後付けっぽいけど…………なんか胡散臭ぇな?」
(コイツはコイツで鋭いし。)
「アーロン、彼女に失礼でしょう。」
「アーロン?女は誰にも話せない秘密があるからこそ、より魅力になるのがわからないのかしら?」
アーロンのジュディスへの指摘を聞いてアーロンがジュディスに関して何かあることを悟っている事にヴァンが気づいている中マルティーナとユエファはそれぞれアーロンに指摘した。
「くっ…………そもそも女の子たちまで同行しているなんて聞いてないわよ?アンタは知らないけど前に会った時も危ない場所に――――――」
「え…………先輩、アークライドさんたちと面識が?」
一方ジュディスはアーロンに反論しかけたが怪盗グリムウッドに関する話を口にしかけるとすぐに我に返って答える事を中断し、ジュディスの口ぶりからしてヴァン達と面識がある様子に気づいたニナは目を丸くし
「えっと…………(舞台挨拶の時でしょうか?)」
「……………………」
(私の予想通り、早速自らボロを出しかけましたね…………)
ジュディスの話に心当たりがあるアニエスはジュディスに確認している中アーロンは真剣な表情でジュディスを見つめ、メイヴィスレインは呆れた表情でジュディスを見つめた。
「…………前に舞台挨拶の時にたまたま見かけたってだけよ。確かに、どうやら荒事にはそれなりに慣れてそうだけど…………犯人捜しとか背景の洗い出しとかそちらの方はどうなのかしら?」
ニナの疑問に答えたジュディスはヴァン達にあることを確認した。
「えと…………」
「そう言われますと…………」
「―――――アンタらが来る前にこの街を軽く回らせてもらったが。ちょいと引っかかったことがある。」
ジュディスの問いかけにフェリとアニエスが答えを濁している中ヴァンが答えた。
「…………?」
「引っかかった、ですか?」
「お前らはどうだ?朝から動いてみて変わったことや何か感じたことはなかったか?」
自分の答えにジュディスとニナがそれぞれ不思議そうな表情を浮かべている中ヴァンは仲間達に訊ねた。
「ハン、何いきなり振ってやがる、と言いたい所だが――――――」
「…………確かに、前に来た時よりもかなり賑わっていたみたいです。」
「(気になることがあったとすれば…………)人々の賑わいぶり、でしょうか。新しい映画祭の開催とはいえ、少し羽目を”外しすぎている”気がします。」
「羽目を外し過ぎている…………?」
「…………それって…………」
アニエスの推測を聞いたニナは考え込み、あることを察したジュディスは真剣な表情を浮かべた。
「ハッ…………映画祭っつってもあくまでまだ”準備中”なんだろ?なのに朝っぱらにも関わらず煌都の夜みてぇな喧騒に満ちてやがる。さっきの姉妹に絡んでた連中とかな。」
「…………確かにもめごとが起きやすい”息吹”のようなものを感じましたね。」
「実際それに気づいているのか、遊撃士も町中を頻繁に巡回していたわね。」
「ええ…………何故かはわかりませんが。今回の依頼にも、もしかしたら関係しているかもしれません。」
「…………なるほど…………」
「……………………」
アーロンやフェリ、マルティーナとアニエスの話を聞いたニナが納得している中ジュディスは黙り込んでいた。
「―――――あくまで序の口だ。”匂い”を嗅ぎ回る意味ではな。そこらへんはギルドあたりにも引けを取るつもりはねぇぜ?」
「ふふ…………どうですか、先輩?」
ヴァンのジュディスへの確認に続くようにニナは微笑みながらジュディスに確認した。
「ああもう―――――そこまでキッチリロケハンした相手に文句はないわよ!正直、そこまで期待はしてないけど改めてニナと共同依頼をさせてもらうわ。せいぜい成果を出してみてちょうだい。――――――ただし女の子は諸々気を付けること!荒事もだけど歓楽街の方は治安とか色々と教育にも悪いから。ああ、男共はどうでもいいけど。」
「ハッ、言ってろ。」
「教育に………?」
「まあ、カジノも含めてアニエスやフェリには教育が悪い部分があるものね。」
「あはは………………はい、気を付けますので。」
ジュディスの忠告にアーロンが鼻を鳴らし、首を傾げたフェリにユエファは苦笑しながら指摘し、アニエスは苦笑しながら頷いた。
「ワハハ、何やら盛り上がっているようじゃな!ハロハロー、ジュディス君!ニナちゃんも元気そうで何よりじゃ!」
その時脂ぎった中年男が豪快に笑いながら部屋に入ってきてジュディスとニナに声をかけた。
「え…………」
「アンタは…………」
「か、監督………!?」
「って、何いきなり乱入してきてるんですか!?」
中年男の登場にアニエスが呆け、ヴァンが目を丸くするとニナとジュディスはそれぞれ驚きの声を上げた。
「君たちが到着したと聞いていてもたってもいられなくてな!ワシと君らの付き合いだ。今更遠慮なんて無用じゃろうっ?むむ、なんだ君らは――――――少々若いが、よく見れば磨けば光りそうな子たちじゃないかっ!おおっ!?それにそちらの女性達はまさか………”天使”!?”天使”であることに加えてその容姿ならば、すぐにでも光る者達じゃないかっ!どうじゃ、ワシの”フォクシーパレード”に参加してみないかねっ!?」
アニエス達を見回した中年男は興味ありげな様子でアニエス達にある誘いをした。
「ええっ………!?」
「ぱれーど………?」
「なんだこの脂ギッシュなオヤジは…………」
「…………自ら見世物になるような事をするつもりはありません。」
「私も同じね。………まあ、ユエファはむしろ望む所でしょうけど。」
「マティは私を何だと思っているのよ……確かに役者だった私にはパレードの参加とかに抵抗はないけど、復帰するとしたら今までお世話になった華劇場と決めているから、私もそのつもりはないわよ。」
中年男の提案にアニエスは驚き、意味がわかっていないフェリは首を傾げ、アーロンが呆れた表情で中年男を見つめ、メイヴィスレインと共に静かな表情で断りの答えを口にしたマルティーナはユエファに視線を向け、視線を向けられたユエファは苦笑しながら答えた。
「ほう、君も画面映えしそうじゃな!正直オトコは足りてるんじゃが………花はいくらあってもいい――――――いっそ女装して参加するのはどうじゃ!?」
一方アーロンに見つめられた中年男はアーロンにある提案をした。
「なんか言い出してるし…………」
「ハン、別に慣れてるからいいが、なるほどアンタが…………」
「ああ――――――サルバトーレ・ゴッチ監督だ。」
中年男――――――ゴッチ監督の提案にジュディスが呆れている中ゴッチ監督の事を思い出したアーロンの言葉の続きをヴァンが答えた。
「あ…………!『ゴールデンブラッド』の…………!」
「サルバッド映画祭の演出全般も手掛けられているという…………」
「ワハハ、映画祭に来るからにはさすがにワシの顔くらいは知っとるか!」
ヴァンから自分jの名前を聞いてそれぞれ自身を知っている様子のフェリとアニエスの様子を見たゴッチ監督は豪快に笑った。
「ええ、『ゴールデンブラッド』も拝見させてもらいましたよ。…………観客を裏切らない怒涛の展開にあざとさも隠しもしねぇカメラワーク。そのうち観客は主人公を通じてクライマックスで”ある境地”に至る――――――テーマは、そうだな…………『抑圧からの解放と生命への賛歌』かな?」
「…………!」
「ほう…………若いの、誰だか知らんが見所があるのう!まさにその通り――――――主人公ゾーイを通じて抑圧された人間性とエロスの解放をじゃなあ!」
ヴァンの感想と推測にジュディスが目を見開いて驚いている中ヴァンを感心した様子で見つめたゴッチ監督は力強く自分の主張を語り始めたが
「ストップ、ストーップ」
「監督、そのくらいで…………」
ジュディスが声を上げ、ニナが困った表情で指摘してそれぞれゴッチ監督の主張を中断させた。
「ふむ、そこまでわかってるということは”フォクシーパレード”の真価もわかるじゃろう。詳細は言えんが、ジュディス君たちを始めとする女優にモデル、ダンサーの数々を集めてじゃな!思いっきりド派手な演出で映画祭開幕を彩るんじゃ!…………ま、一応オトコも添え物にはしてるがな。」
(そういうパレードですか…………)
(なんだか楽しそうですねぇ。)
(クク、いろんな意味で愉しめそうじゃねえか。)
ゴッチ監督の話を聞いてパレードの内容を察したアニエスは苦笑し、フェリとアーロンはそれぞれ興味ありげな様子を見せた。
「成程、『ゴールデンブラッド』の先にある、革新的なテーマを見届けられるわけですね?」
「ワハハ、その通りなんじゃ!まさかそこまで見抜いてくれるとは!名前は何という――――――若いの?」
「ヴァン・アークライド。しがない旧首都の便利屋でしてね。ああ、よかったら名刺を。」
そしてゴッチ監督と名刺交換をしたヴァンはゴッチ監督と映画や映画祭についての話で盛り上がり、その様子を見たその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「ふふっ…………盛り上がって何よりですね。」
「まったく…………ギャスパー社長もちゃんと監督の手綱を握ってくださいな。」
「それができれば苦労しないよ…………で、なんだね、そちらの彼らは?便利屋………と言ったか。ブン屋でないだけまあマシだが。」
ヴァンとゴッチ監督の様子をニナが苦笑しながら見守っている中ジュディスは部屋に新たに入ってきたチョビ髭の男性――――――ギャスパー社長に指摘し、指摘されたギャスパー社長は疲れた表情で答えた後ヴァン達に視線を向けた後ジュディスとニナに訊ねた。
「あー、こちらの事なのでお気になさらず。」
「その、プライベートで少々、お願いしているだけですので。」
「フン…………まあいいだろう。それよりジュディス君、ニナ君。到着早々悪いが来てもらえないかな??実は君達に紹介したい方がいてね。」
「紹介、ですか?」
「ああ、ひょっとして…………」
ギャスパー社長が自分たちに紹介しようとしている人物に心当たりがないニナが不思議そうな表情を浮かべている一方、ジュディスは心当たりがある様子を見せた。
「あまり待たせたくはない――――――最上階のラウンジに来てくれたまえ。では、我々は失礼するよ。――――――ゴッチ監督も。」
「ああ、待つんじゃギャスパー。こっちの話がまだ終わっておらん。彼らのパレードへの出演交渉を――――」
ギャスパー社長に退出するように促されたゴッチ監督は自分はまだ用事が残っていることをギャスパー社長に伝えたが
「ゴ・ッ・チ監・督。時間も押しているんです。お待たせするわけにはいかんでしょう!」
「ちょ、待――――――おおい君達!後で連絡したまえ、絶対になッ…………!」
ギャスパー社長に有無を言わされずその場から連れ出された。
「…………嵐みたいでした。」
「ゴッチ監督――――――それにベガスフィルムのギャスパー社長か。」
「うーん、苦労してそうですね…………」
「能力は有能でも、御しにくい性格の部下の方が無能でも御しやすい部下より厄介ですからね…………」
「やっぱ業界人ってのはどこかブッ飛んでやがるな。」
「それに関しては同感ね。」
「ちょっとマティ?どうしてそこで私を見て言うのかしら!?」
ゴッチ監督がいなくなるとフェリとヴァンはそれぞれ呟き、アニエスとメイヴィスレインはそれぞれすいそっくし、アーロンの感想に頷いたマルティーナに視線を向けられたユエファは顔に青筋を立てて反論した。
「だからこそパワーのある作品を生み出せるのかもしれませんが…………あ、もちろん常識的な方もちゃんといらっしゃいますよ?」
「ま、3割かそこらだけどね。――――――お呼ばれしてるみたいだしあたしたちもそろそろ行かないと。滞在中、貴方達がどう行動するかは任せるわ。ただ今日と明日は夜に一度ずつ、”直接”報告に来てちょうだい。」
「それ以外は自由に動いていただいて構いませんので。よかったら映画祭の方も楽しんでいってくださいね。」
「ああ、そうさせてもらうさ。実のある報告ができるようにせいぜい祈っていてくれ。」
「―――――あっ、、そういえば…………アニエスさん!」
「そうでした――――――あの、お二人共。少しだけお願いしたいのですが…………」
ジュディスとニナに今後の事に伝えられたヴァンが頷いたその時あること――――――シャヒーナから二人のサインをもらってくることを約束したことを思い出したフェリは声を上げてアニエスに視線を向け、アニエスは部屋から去って行く二人を呼び止めてサインの件を頼んだ。その後ヴァン達はホテルを出た。
~歓楽街~
「えへへ、シャヒーナさん、喜んでくれるでしょうか?」
「ええ、きっと。折を見て届けましょう。」
ホテルから出たフェリはジュディスとニナに書いてもらったサインの色紙を取り出して無邪気な笑みを浮かべ、フェリの言葉にアニエスは頷いた。
「午後1時――――――これから更に人も増えていくだろう。午後は歓楽街も含めて動くぞ。新しく見えてくることがある筈だ。」
「ま、女優どもも目の保養だったしな。スイーツにもありつけてやる気MAXってところか?」
「それもあるが――――――お前らがある程度”使えそう”なのもわかったからな。今回は良い実地研修にもなりそうだ。裏解決屋の流儀と目線――――――改めて自分たりなりに掴んでみろや。」
「…………はい!」
「了解!」
「偉そうに…………だが上等だ!」
そしてヴァン達は街を見て回りながら4spgを再開した――――――
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