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色々と間違ってる異世界サムライ

作者:モッチー7
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第25話:夢の終焉……

セツナperspective

ベルディアと1人で戦っているツキツバの事も気になるが、ウンコセインに捨てられたこの女を置き去りにする事も出来ず……
「ここは……」
「!?」
女は漸く目が覚めた様だ。
「病院だ。お前達ヒューマン用のな」
「そっか、アタシ捨てられたんだっけ」
「ウンコセインにか?」
「そう、あのデカいのに負けそうだったから、アタシが足止めにされたんだよ。そのまま死ねとか言われてさ」
ぶん殴りてー!1発殴らせろ!
私の隣で必死に耳を塞ぐノノの姿を魅せてやりたい!
正に……既に終わった夢に必死にしがみ付く哀れな敗北者の姿だった。
私の表情を見た女は困惑していた。
「なんでそんな顔するんだよ。仲間なら捨て石になるくらい当然だろ。そりゃあセインに捨てられたのはショックだったけど、生きてるならまた合流できるじゃん」
「あんた……何でそこまで―――」
その時、この女を診察した医者が静かに呼び出された。
「ちょっとよろしいですか?」
なんだ?
それって……
「ちょっと失礼」
私は退席して医者の許へ。
雰囲気から内緒の話だと思う。あの女に聞かせられない内容なのだろうか。
「これからお伝えする事を冷静に、落ち着いて聞いてください」
「なんだよそれ……はっきり言ってくれ!」
なんだよそれ……まだ何か有るって言うのか!?
「例の患者……洗脳状態にあります」
「洗脳!」
「ステータスに状態異常が出ているんです。魔法か薬品で強制的に思考を誘導している可能性があります」
そこまで堕ちたかウンコセイン!
「そう……ですか」
ノノ……わりぃ!
生き方は決めた。後は自分に出来る事を精いっぱいやるさ。

ノノ・メイタperspective

「は?」
何言ってんだこの人は。
「何度も言わせるな。ウンコセインがあの女を洗脳し―――」
「聴こえてますよ!だから『はっ?』っ()ったんだ!」
「ベルディアはウンコセインと一戦交えてからツキツバと戦っている。つまりベルディアの―――」
「あんな見え透いた嘘を信じるのか!嘘だと誰でも直ぐに解る嘘を!」
「気持ちは解るが、もうこれ以上叶わぬ夢がお前を―――」
「んな訳()ぇだろ!」
本当に何を言っているんだこの人は!
「セツナ、お前は大事な事を完全に忘れてる」
「残念だが、お前が今から言おうとしている説明こそが叶わぬ―――」
「セイン様は勇者様だぞ!そんな簡単な事を忘れたと言うのか?もう脳が焼き切れたか!セツナ!」
何でテメェが困惑しながら頭を抱えてるんだよ?
今日ほど僕のレベルの上限が3しかない事を恨む。
そうでなければ、僕は既にセツナのアホを……殺していただろう。
セツナのアホが溜息を吐きながら僕の手を引っ張ろうとした。
「付いて来い!私はあの女に―――」
「もう貴様には騙されないぞ!」
何でテメェが溜息を吐いてんだよ!クソセツナ!
「そんな誰にでも直ぐバレる嘘をせこせこ言い続けても、意味()ぇっ()んだよ!」
「意味は在る。意義もね。大義ですらある」
そこまでアホでバカに()ったか!クソセツナ!
「今からやろうとしている事こそが、魔王を喜ばすだけのふざけた行為だ!」
「なら、ツキツバに魔王を倒させれば良い。ツキツバは誇り高い戦死を欲しがってるんだ。訳を話せば、喜んで魔王と戦ってくれるさ」
もう駄目だった……
セツナは既に終わった……
魔王の手下が言った嘘に完全に騙されて―――
「すまぬ。遅くなった」
そんな最悪なタイミングで、ツキツバさんとめぐみんさんが戻って来た。
「倒したのか?ベルディアを?」
「一太刀で死なぬ相手ならば、なますにすれば良い。これが魔物との合戦ですな!?」
「……なます?」
は!
いけない!
このままだと、ツキツバさんがクソセツナの嘘に騙される!
「騙されるなぁー!」
「……ん?」
「そこの馬鹿女は、魔王軍が吐いたバレバレな嘘に完全に飲み込まれているぅー!」
「……は?」
『は?』じゃねぇよ!
早くそこのクソセツナから離れろよ!

月鍔ギンコperspective

べるでぃあの体をなますにし、残った生首に死に化粧を施した某は、フラウ殿の案内でノノ殿がいる町にやって来たのですが……
「何故、セツナ殿とノノ殿が仲違いを?」
いや……仲違いなどと言う生易しいものではありませぬ。
このままでは、ノノ殿がセツナ殿を!
某は、雰囲気からしてセツナ殿に問題が有ると判断しました。
が、
「そいつに話しかけるな!信じてはいけない嘘に飲み込まれるぞ!」
ノノ殿があまりにもしつこ過ぎるので、なかなかセツナ殿を問い詰める事が出来ません。
そんな某の困惑を察しためぐみん殿とフラウ殿がノノ殿を連れ出してくれました。
「ここは任せろ」
「大体察しはつくから、ツキツバ様は適当に答え合わせでもしてください」
ノノ殿が……完全に孤立しております(汗)。

「セツナ殿、ノノ殿と何がありもうした?」
「ま、あの時の私もデリカシーが無かったがな」
でりかしーとは何なのでしょうか?
「つまり、このままじゃノノの夢は崩壊する」
「夢が崩壊する!?」
聞き捨てならぬ文言!
大分不穏過ぎる空気が流れておる様ですな。
「それより、患者の洗脳を如何いたしましょうか?」
……何なのです?
何が何だか訳が解りませぬ……
「で、誰が誰に操られていると?」
「いえ、私の鑑定スキルだけでは、犯人の特定は不可能です」
「つまり……操られている者は、ここにいると?」

セツナperspective

「お前はウンコセインに洗脳されている」
「……そっ……か」
意外な反応だった。
てっきり事実を否定されると思っていた。
彼女は苦笑してから悲しそうな色を浮かべる。もしかすると彼女の中でも引っかかっていたのだろうか。
いや、そうあって当然だ。
洗脳状態にあったとしても過去の記憶が消える訳ではない。必ず違和感はある筈だ。
「アタシさ、セインの事が好きなんだ。でもこの感情はどこかおかしくて、思考もどこかおかしくて、おかしい事だらけなんだ。以前は……好きな人を好きでいられた筈なのにさ」
ぽたぽた、彼女の目から滴がこぼれる。滴が落ちた右手には……婚約指輪の様な汚れ(もの)が嵌められていた。
彼女の姿を見ていると血管が切れそうな気がした。
今日ほど……ノノの奴に出逢うまでレベル上限が7しかなかったかつての私を恨み呪った事は無い。あの時の私は、吐き気がする程の鈍感なクソ野郎だ。
隣にいるツキツバの怒りを感じる。
この女の、戦士としての矜持を!尊厳を!心を!死に方すら汚した!
誇り高い戦死を欲しがってるツキツバが怒るのも無理は無い!
ノノの奴には悪いが……今のツキツバなら、そして今の私なら、躊躇無くあのウンコセインを殺せる!そしてその行為に罪悪感は無い!
「……ノノ殿の夢は、どうなるのですか?」
私は……即答する事が出来ない。
「セイン殿が率いる白ノ牙(ホワイトファング)の一員となって、セイン殿と共に魔王を倒して……そんなノノ殿の夢はどうなります?」
「それ……訊きます?」
本当なら、「ノノの奴が本物のウンコセインに出遭ったら、その時点でこの女の事がノノの奴にバレる!」と言うべき場面だったが……
……言えなかった。言いたかったのに……
「某……言う程無敵ではなかった様ですな?」
「……どう言う意味だ?」
いや、意味は解っている。
つまり、ツキツバはこの女を見殺しにする程弱いと主張しているのだ。
だとすると、私も弱い事になる。
「これだけ弱い某なら……いずれ必ず誉高い戦死を成し遂げられる筈では?」
「……やめてよ。ツキツバまでいなくなったら、誰がウンコセインからノノの奴を護る?」
ツキツバが咄嗟に聖剣を鞘から抜こうとした。
だがしばらくの静寂ののち……抜かなかった。
「こいつを……お前と戦って死んだ事にする心算か?」
「気付かなきゃ……意味は在りませぬ。こんな夢見心地の者を斬っても、刀の汚れになるだけです」
彼女達の姿を見ていると……血管が切れそうな気がした!

めぐみんperspective

セツナがノノを無理矢理例の女性が入院している部屋に連れ込んだ。
「ふざけるな嘘吐き!もう貴様には騙されないぞ!」
「お前を騙しているのはウンコセインだ!現実を視ろ!」
セツナがノノを無理矢理椅子に座らせると、医者や僧侶達の立ち合いの許、例の女性にある物を無理矢理飲ませた。
「『思考と感情を取り戻せば必ず反動がある。洗脳中の行為が本来の意思と大きく乖離していた場合、精神にのしかかる負担は大きい。場合によっては崩壊の恐れもある』とお伝えした筈でしたが……」
「他に某達の出来る事は?」
「ですが―――」
「ぎゃぁぁあああああああああっ!」
嗚咽の様な悲鳴が部屋中に響き渡る。
間違い無い!
洗脳前の自分と洗脳後の自分が激しく激突しているのだ!
これは……凄い戦いになるぞ!?
「大丈夫か!?」
「ひぃ、ひぎぃいいい!あぐ、うぎぃ!」
「誰か!誰かヒールを!」
「ふぎ、うぎぃいいいい!えひぃ!」
爆裂魔法しか能が無い私には、何も出来ない。
ただ、洗脳前の感情が勝つ事を祈る事しか。
「アタシを見ないでで……こんな汚れたアタシを……」
「大丈夫です!そなたもまた戦場に立つ者!戦う者の誇り、その程度の事では汚れませぬ!」
「ウンコセインに洗脳されていたんだ!お前の意思じゃない!」
セツナとツキツバが必死に女性に声を掛けている……なら!
「貴女はもう直ぐ自由になる!誰の目も気にする事無く!好きな事が出来る!貴女の好きな事が!」

3日が経過した頃、女性はなんとか私とまともに会話が出来るくらいになっていた。ただし、記憶を掘り起こす様な事を言うと、直ぐに謝ってひどく落ち込んでしまう体たらく……
「あんた等は優しいよ」
なんですかその言い方は!?物凄く不安になる!
「こんなアタシを助けようとしてさ。でもその優しさが辛いんだ」
「……気にするな。ウンコセイン被害者の会として当然の事をしたまでだ」
「セツナ、そいつの前ではセインは禁句」
「アタシさ、村に戻ろうかと思ってるんだ」
「冒険者は引退するのか」
「うん。もう心が折れたよ。冒険とか、ときめきとか、人生とかに疲れたんだ。父さんや母さんのいる田舎で静かに暮らしたい」
その途端、ツキツバがどす黒い覚悟を決めた。
「では……その前に某と決闘をして貰えませんか?」

一撃だった。
たった一撃でツキツバは女性を真っ二つにした。
それを観たセツナが歯軋りし、ノノが何かを否定するかの様に耳を塞ぎならがその場で座り込んだ。
でも、誰もツキツバを責めなかった。
こいつは村に戻ると言ってどこかで死ぬつもりだ……そう確信したから、せめて戦士らしく死なせてやろうと言う配慮だと解っていたから。
私は……爆裂魔法が存在する事に物凄く感謝した!
と言うか……早く勇者セインに向けて爆裂魔法を放ちたい!
勇者セインに向けて爆裂魔法を撃ったら、本当に物凄く気持ち良い事だろう!
ああ、楽しみだ!
この時の私は、間違いなく目がハートになっていただろう。
……多分。

月鍔ギンコperspective

何らかの方法でセインに操られていたネイ殿との決闘と介錯を終えた某達は、侍の矜持をまったく知らぬセインを討つべき敵と判断した上で、次の目的地を決める事になりましたが、
「恐らく、今から往ってもぐりじっとの王都で行われる円卓会議には間に合わないでしょう」
「円卓?」
「知らぬと?」
どうやら、フラウ殿もセツナ殿も円卓会議とやらには興味が無い様です。
「某が聞いた話だと、ぐりじっとには全国の大名が一堂に集まって今後の事について話し合う場所が在るとの事です」
「集まる?その『全国のだいみょう』とは『各国の代表者』で良いんだよな?」
なるほど……そこからですか。
やはりここは異世界。
「……ええ。大名とは、国を治める支配する者です」
「つまり、ウンコセインがグリジットに行くかもしれないって……いや、既にグリジットを出たと言う事か?」
セツナ殿は漸く理解してくれた様です。
「そこで、某はこの刀が有るおーさむを目指す事にしました」
「聖剣がオーサムに?」
「とは言え、おーさむは遥か北にあるそうです」
「北国だからな」
「で、ツキツバ様はそのオーサムに行ってどうするのです?」
某がおーさむでする事はただ1つです!
「セインと話がしたい」
無論、話の内容は既に決まっています!
皆が慕う勇者でありながら、何故侍の矜持を踏みにじるのか!
ただ……
「その前に、フラウ殿に頼みがあります」
「ツキツバ様のお役に立てるのであれば、喜んで!」
フラウ殿にそう言われた某は、座り込みながら耳を塞ぐノノ殿をチラッと見ました。
「ノノ殿を……村の者に帰したい」
「!」
「!?」
ノノ殿に関する某の意見に、フラウ殿とめぐみん殿は驚きを隠せませんでしたが、セツナ殿はいたって冷静でした。
「故郷に帰れ!……と、言う事か?」
「乱暴に言えはそうなりますな」
なにせ……某達はノノ殿の夢を壊す為におーさむに向かうのですから……
セインと共に魔王を倒すと言う夢を……
「では逆に訊きますが、この中に、セインを許している者は?」
セツナ殿は拳を握り締め、フラウ殿は悲し気に俯き、めぐみん殿は杖を握り締めておりました。
「おらぬのですな?セインを許す者は」
そう言う某も、ここまで勝つ気は有れど死ぬ覚悟が無い状態で戦地に向かうのは初めてです。
某達を死なせずにセインを討ち取りたいと!
ノノ殿がセインと共に魔王を討ち取りたいと願っている事を解っていながら……
「頼めますか……フラウ殿」 
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