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オーケストラに来た猫

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第二章

 そうしてちょこんと座ったり毛づくろいをした、それからだった。
 ステージの中を歩き回ったりしてそれから去った、これには観客達も思わず笑顔になった。それはイシル達も同じで。
「いい演出ね」
「そうだったわね」
「多分勝手に入って来たんでしょうけれど」
「周りにいる地域猫の一匹が」
「思わぬハプニングだったにしても」
「よかったわ」
 笑顔で話した、そして音楽が終わると指揮者にオーケストラだけでなく。
 猫にも拍手を送った、後日イシルが調べるとその猫はやはりホールの近くで暮らしている地域猫のうちの一匹で。
 ホールの警備員が世話をしていた、警備員はホールの方に来て事情を聞いたイシルに雌の三毛猫を見て話した。
「この娘はイマム、前にホールに入った子はメフメトといいまして」
「名前も付けていますか」
「はい、それで前は練習中にです」
 警備員はイマムを抱き上げてからさらに話した。
「ステージに入りました」
「前にもああしたことがあったんですね」
「はい、それでオーケストラの人達も」
 彼等もというのだ。
「笑顔で応対してくれました」
「それは何よりですね」
「はい、音楽の時も猫が来ると」
「自然と和みますね」
「トルコ、特にこのイスタンブールは猫が多いので」
 イスラムの教えに従い大事にされているからだ。
「こうしたこともありますが」
「いいことですね」
「全くです、しかも犬にも優しいので」
「余計にいいですね」
「トルコ、イスタンブールは」
 こう話した、そしてだった。
 イシムは警備員が抱いているイマムの頭を撫でた、そして彼女に言った。
「これからもここで音楽聴くのね」
「ニャア」 
 猫は鳴いて応えた、それはそうするという返事の様でイシムも警備員もそんな彼女を見てまた笑顔になったのだった。


オーケストラに来た猫   完


                     2024・6・24 
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