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母子家庭がどうした

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第一章

                母子家庭がどうした
 母子家庭についてだ、清原米介細く小さな好色そうな目で下卑た感じの口元を持つ如何にも卑しそうな顔立ちの男が言っていた。サラリーマンだがセクハラモラハラパワハラばかりで仕事は碌にしない出来ない嫌われ者である。黒髪にはフケが多くある。
「ったくよ、母子家庭で育った奴なんてな」
「駄目ですか」
「片親は育ちが悪いんだよ」
 汚い歯並びの口で部下の真田真央長身でスタイルがよく黒髪をポニーテールにし大きなはっきりした目で円い感じの顔と小さなピンクの唇を持つ彼女に話した。
「だからな」
「今度の取引相手のですか」
「ああ、池田運送の田代って奴は軽く扱うぞ」
「何でもかなり仕事が出来るとか」
「そんな筈あるか」
 清原は真田の言葉を即座に否定した。
「また言うが母子家庭で育ってるんだぞ」
「だからですか」
「ああ、カスに決まってるよ。だからな」
 それでとだ、真田に言うのだった。
「お前が適当に相手しろ」
「私がですか」
「新入社員で充分だ」
「あの人は営業部長ですが」
「営業部長でも母子家庭育ちだぞ」
 だからだというのだ。
「お前で充分だ、本当に適当でいいからな」
「そうですか」
「ああ、任せた」
 真田の膝までのタイトスカートのスーツからはっきりわかるスタイルをスケベそうにじろじろと見まわしつつ言った、そしてだった。
 真田は実際に田代文雄大きな四角い顔と小さな丸い目で黒髪を清潔に短くしている大柄で引き締まった体格の彼と会った、そして話を聞くと。
「あの、こんなにです」
「どうしましたか?」
「わかりやすいとは」
「私の説明がですか」
「驚いています」
「そうですか」
「しかも丁寧で」
 そうであってというのだ。
「紳士的で温厚で」
「部長はいつもこうなんです」
 田代と一緒にいる若い社員が言って来た。
「お仕事が出来て優しくて」
「そうであってですか」
「はい、そして」
 そうであってというのだ。
「紳士でして社内でも有名です」
「いやいや、褒めらると」 
 田代はその社員に困った顔で応えた。
「困るよ」
「部長は褒められるとですね」
「恥ずかしいからね」
 何処か愛嬌のある感じで言うのだった。
「だからね」
「褒めない、ですね」
「そうしてくれるかな」
「わかりました、それでは」
「はい、これで止めます」
 こう話すのだった、そしてだった。
 以後もだ、田代と仕事をするとだった。
 彼が如何に出来て人格者であることがその度にわかってきた、母子家庭ということも事実であるが親子の絆は強く。
 母親を大事にしていて家庭でも母親と彼の家族の仲は円満だった、嫁姑の問題もなく田代は妻も子供達も大事にしていた。
 そんな彼を知って真田は素直に尊敬したが。
 清原は彼をあくまで嫌って愚弄した、だが。 
 彼は仕事をせずモラハラやセクハラ、パワハラばかりでだ。それでだった。
 誰からも嫌われていた、そうした振る舞いが会社の上層部にまで伝わり。
「クビですか」
「はい、そうなりました」
 真田は仕事中に田代に話した。 
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