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シェークスピア劇を原語で

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第二章

「本当に」
「僕もですぞ、日本語は本当に時代によって違いますが」
「英語もですか」
「どの言語も時代によって変わります」
 山本は笑顔で話した。
「ましてシェークスピアの時代はです」
「四百年以上昔ですね」
「エリザベス一世の時代です」 
 イギリスの歴史の中でも特に有名な君主の一人でありバージンクイーンとも呼ばれている。思慮深く慎重な人物であったという。
「日本で言うと安土桃山時代です」
「随分昔ですね」
「その頃の英語なので」
「今とは違いますか」
「はい、ですから僕達が普通にイメージする英語ではないです」
「シェークスピアの作品は」
「そのことはご了承下さい、ただ」
 ここで山本はこうも言った。
「僕達もわかりにくいですね」
「あの、全くわからないです」 
 前田は山本に困った顔で答えた。
「今の英語も何とかなのに」
「それで古文と言っていい英語となりますと」
「全くです」
 わからないというのだ。
「本当に」
「だからです、劇自体は今の英語で行います」
「そうしますか」
「キングス=イングリッシュで」
 こちらの英語でというのだ。
「行います」
「ガーターでなくてですね」
「上品に」
「この部活で使われている英語ですね」
「そうです、楽天社内の様にスムーズにいきましょう」
「交流戦優勝は意外でしたね」
「三連敗は残念でしたぞ」 
 山本は阪神ファンなのでこう言った、広島ファンである前田はそうでもなかった。そうしたやり取りもしてだった。
 部は上演の準備に入った、衣装や舞台を準備して芝居の練習もした。そうしてキングス=イングリッシュで話してだった。
 上演すると好評だった、それで前田も喜んだが。
「いや、若し原語で上演していたら」
「こちらも大変で、でしたな」
「観るお客さん達もですね」
「わかりませんでしたな」
「そうですよね」
「昔の英語をわかる人はです」
 山本は今もポワロの様に気取った仕草で語るのだった。
「日本では流石にです」
「滅多にいないですね」
「そうですぞ、ですから僕も考えまして」
「今の英語にしましたね」
「それもアメリカやオーストラリアの英語でなく」
「イギリスの英語にして」
「キングス=イングリッシュにしたのです」
 部長の権限で決めたというのだ。
「そうしましたぞ」
「それで正解でしたね」
「そうでしたな、しかし原語に触れるのも勉強ですぞ」
 山本は前田にこうも話した。
「英語に親しむのならです」
「その歴史を知って」
「過去の形も知ることは必要ですぞ」
「そのことわかりました」
「それなら何より、では今日も部活を楽しみましょうぞ」 
 前田に笑顔で話した、すると前田も頷いてだった。
 この日も部活を楽しんだ、この日はルイス=キャロルのことを学んだが前田はこの人は若しかしなくても所謂やばい人本物のロリコンではないかと思ったがそのことは言わなかったのだった。


シェークスピア劇を原語で   完


                   2024・6・19 
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