勤め先に来た元カノ
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第二章
林は黙々と仕事をしていた、寿司も握ったがカップルものもそうした。そうして二人が帰ってもだった。
仕事を続けた、だが。
仕事の後でだ、彼は店の板前で店長でもある高木栄一きりっとした顔で一七〇位の背の白髪頭の初老の男に聞かれた。
「若いカップルが来た時な」
「お気付きでしたか」
「わかるよ」
こう返事をした。
「見ていたらな」
「何かあったとですね」
「女の人とな」
「実は高校の時クラスメイトで」
林は正直に話した。
「それで付き合ってた時もありました」
「そうだったのか」
「所謂元カノですね、ただ高校を卒業して」
そうしてというのだ。
「彼女は大学に行ってです」
「お前は専門学校か」
「それでこのお店に就職しまして」
そうなってというのだ。
「それで、です」
「違う道を歩く様になったんだな」
「別に喧嘩別れとか浮気とかじゃなくて」
「自然とか」
「別れたんで」
「進路でそうなることもあるな」
「学生時代ってそうだってわかりました」
自分がそうなってというのだ。
「卒業して暫くは付き合ってましたが」
「それぞれ行くところが違うとな」
「自然と縁が薄くなって」
そうしてというのだ。
「別れました」
「それでずっと会ってなかったか」
「はい、それがです」
「どうも結婚を前提にしてるな」
「そうですね、会話を聞いてると」
「いい人と付き合ってるみたいだな」
「そうですね、ずっと忘れていましたが」
林は店長に微笑んで話した。
「今思い出しました、幸せそうで何よりです」
「そう思うだけか」
「はい、それじゃあこれで家に帰ります」
「そうするな、それで家に帰ったらな」
「女房と生まれたばかりの子供がいますから」
今度はかなり明るい笑顔で話した。
「ですから」
「それでだな」
「早く帰ります」
「気を付けて帰れよ」
店長は彼を笑顔で送り出した、そしてだった。
林は自宅のマンションに帰ってそこで家族と慕わせな時間を過ごした、そして以後彼は彼女と店でも外でも会うことはなかったが。
同窓会で彼女が結婚して夫の仕事の関係で北海道に行ってそこで幸せに暮らしていると聞いていいことだと思った、そう思ったのだった。
勤め先に来た元カノ 完
2024・6・17
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