リュカ伝の外伝

(グランバニア王都：中央地区・それなりステーキ)
ルディーSIDE

念願だった免許(魔道車運転免許証)を取得し、お祖父様からの“甘やかし”と言う名の援助を受けて、最新鋭の魔道車(まどうしゃ)……(株)レックス製ＬＸＨ……通称Ｍ(ミニ)・Ｈ(ハンマー)を入手！

その自慢を色んな人にしたかったんだけども、と在る事がタイミングとして重なりこの国の軍務大臣をしているピピン・ハンター閣下のご子息であるピパン君を一番最初の自慢相手に選ぶ事となった。

彼(ピパン君)も言っていたが、本当は彼女(なんて居ないから、プリ・ピー(プリンセス・ピープル)の誰かとか)に自慢して、一緒にドライブに行って……もし可能なら……その後のアダルティーな状況まで行ければなって思いはあったんだけど……

まぁ妄想の域から出られない事だし、誰を一番最初の自慢ターゲットにするかなんて、そんなに重要では無いから……美味しそうなステーキのメニューを覗き込み、無限に食べ尽くそうとしている彼(ピパン君)が『僕の魔道車(まどうしゃ)の助手席初乗り人物』になっても問題ない。

一緒に免許(魔道車運転免許証)を取りに行って、幸運な事に一緒のタイミングで免許(魔道車運転免許証)を取得出来た友達のザルツ君も、自身のお父さんにお願いして魔道車(まどうしゃ)を購入したそうだ。

免許(魔道車運転免許証)取得後はお互いに別行動なので、彼(ザルツ君)が何処のメーカーの魔道車(まどうしゃ)を入手したのかは、僕にはまだ解ってないんだけど……
彼(ザルツ君)には彼女(フィアンセ)が居て、何一つトラブルが無く幸せなので、僕と違って彼(ザルツ君)の『私の魔道車(まどうしゃ)の助手席初乗り人物』は彼女(フィアンセ)さんであろう。

相手が女性である事に、“嫉妬”と言う名の羨ましさを感じてしまっている。
因みに最初はそんな事(嫉妬心？)とか考えても無かったんだけど、ピパン君に言われて何となく感じる様になってしまった。余計な事を言わないでよぉ……

当の本人は、１４歳の学生らしく部活上がりの空腹を満たすべく、これから注文する魅惑の品々に心ときめかせている。
でもそこら辺の学生(義務教育期間中の学生)とは違い、その遺伝子を羨みたくなるくらい彼はイケメンである。

さっきも言ったが彼の父親はこの国の軍務大臣で、閣下自体は正に“軍人”って感じの見た目をしている。
言い方は悪いが、口より先に手が出る性格……的な見た目。
実際はそんな事は無く、凄く理性的であり強大な軍事力を任せるのに頼りがいがある人物なのだ。

でも彼(ピパン君)のお母さんが凄い遺伝子を持っているのだ。
簡単に言えばリュカ様……
そう……誰もが羨むイケメンの遺伝子を保有する男、リュケイロム・グランバイア陛下と血が繋がっている。

そんな彼(ピパン君)は謙遜なのか鈍感なのか、自らは『モテない』と言って居るが、そんな彼に僕の大切な妹が恋をしてしまっているのだ。
彼(ピパン君)は凄く良い奴(少年)だし、彼が弟になってくれるのは凄く嬉しい事だし……

僕的に全力で二人の仲(と言うか関係性)を応援＋(プラス)協力したいと考えている。
多分、お祖父様を始め家族は反対をしないと思っているが、何分彼女(デイジー)の母親が厄介で、娘を溺愛しすぎているから“好きな男(ひと)”が出来たとか、“彼氏”が出来たとか急に言われたら半狂乱で我が儘を言って物事を面倒くさくしてしまうと予想してるので、可能な限り事前に問題事を排除しておきたいのである。

何よりも、先程言った通り彼(ピパン君)はリュカ様と血が繋がっており、数々の要因によって彼女(デイジーのお母さん)は彼(リュカ様)の事を毛嫌いしているから、ある程度二人の関係が進んで彼女(デイジーのお母さん)も我が儘を言えない状況にしておく事が重要なのだ。

僕とピパン君は雑談を交えつつ、オーダーを終わらせてステーキが来るのを待つ状態に……
「……でさぁ、さっきの話の続きなんだけど」
「デイジーさんの俺への依存……ですか？」
「うん」
「あれだけの美人ですからね……今住んでいるサラボナに、彼氏が居るのでは？」

「あの娘(こ)は極度の人見知りだ……彼氏を作るなんて無理な事だよ」
「ですが、それが俺への好意に変換されるって事にはならないでしょう？　別に構いませんけど、困った時に頼れる存在……正に“依存”する為の存在では無いのですか？」

拗ねている……と言うより悟っていると言った方が良い表情でデイジーからの感情を受け取っている……まぁ今の場合はデイジーからと言うよりも、彼女(デイジー)の気持ちを推察している僕の言葉なんだけどね。

「多分……昨日……妹(デイジー)から手紙が来てるだろ？」
「！？」
ピパン君の反応からすると手紙は来てるみたいだね。

「別に驚く事じゃ無いよ。解った理由は僕の方にも届いていたからだよ。“序(つい)で”とか“纏めて”とかじゃ無くたって、真面目な娘(こ)だから僕の方に手紙を送ればお世話になった……妹(デイジー)の事だから“迷惑をかけた”と思ってかもしれないけど、手紙くらいは送ると予測出来るんだ」

不意に部活のユニホームの上着の右ポケットを触るピパン君。
如何(どう)やらそこに仕舞って持ち歩いてるんだな。
イケメンだけど可愛いなぁ……相当妹(デイジー)の事を好きになってくれているみたいだ。

「流石に君の手紙の方に何が書いてある事は予測出来ないけど、僕の方に書いてある事は当然全て読む事が出来るから、そこから妹(デイジー)の君への気持ちを推測する事は十二分に出来るんだよ。その結論として妹(デイジー)は君の事を大好きになっているんだ」
「ほ……本当ですか！？」

「勿論……妹(デイジー)も恋をするのは初めてだし、今の自分の感情が何なのかは、まだ理解してないらしく如何(どう)して良いのかを僕に相談してきてるレベルではあるのだけど……でも間違いなく君の事が大好きなのは断言出来る」

「そ……そうなんですね！！　う、嬉しいなぁ！！」
隠すつもりは無かったのか。上着のポケットから封筒を取り出し、嬉しそうに目を細めてそれを眺めている。彼(ピパン君)は完全に妹(デイジー)を好きでいると断言して良いな！

妹(デイジー)の書いた文字入りの封筒……ピパン君は中身を取り出しこそしないが、我々の座る席のテーブル上でクルクル回して愛おしんでいた……が、そのタイミングで彼(ピパン君)が注文した料理が届き、目の前に展開される。油が跳ねて手紙に付いてほしくない彼(ピパン君)は慌ててポケットへと封筒を仕舞った。

そして気持ちを手紙から料理にシフトして、年頃の少年らしく目の前の肉に齧り付く！
僕も自分が注文した料理に手を伸ばし、彼(ピパン君)程では無い空腹感を満たす行動に出る。
僕も全然若い自覚があるし、今日もそれなりの量を注文したと思っているのだが、更に若く体育会系であり既に運動(部活)でスタミナを消費している若者には敵わない。

僕の倍は頼んでいるのに、僕の倍近いスピードで完食に向かっているのだ！
足りなきゃお替わりすれば良いのだから、そんなに慌てて食べなくても……
本人的には別に慌ててるワケでは無いのだろうけど、そう感じてしまうのは一般人の感覚だぞ。



妹(デイジー)の件で安心したのか、追加オーダー(お替わり)をしてそれを完食……そしてデザートも完食した若人……
ミタ・コーラ(Ｍｉｔａ・Ｃｏｌａ)を飲み干して、軽く口内でゲップをすると、本格的に空腹感と心が落ち着いたのか、僕の方を正視する。

「ではルディーさんのお心根を聞かせて頂きましょう」
ふぅ～……流石はリュカ様の遺伝子イケメン。
正対されて真面目な顔で迫られると、僕の様な青二才では太刀打ち出来ないカリスマオーラを放ってくるよ。ティミーさんから、よく感じる奴だ。

「別に何ら悪事を画策しているワケじゃないよ。僕は本心で……………………」

・
・
・

「……と言うワケで、二人の仲を進めたいんだ。僕は君の事が弟として好きだからね」
「そ……それは……ありがとうございます。俺も生意気を言わせてもらうと、ルディーさんの事が兄貴の様に好き……尊敬していますから、本当に嬉しいです」

「うん。じゃぁ僕等もお互い両思いだったって事だね」
「ちょっと男同士で気持ち悪い表現ですけどね」
「……そうかい？　僕の友達には男性同士の恋人達も居るけど？」
「そ、それは……知ってます。済みません……失言でした」

「いや、怒ってないけどさ」
他人(ひと)それぞれ感覚の違いはあるだろうから、この話題をこれ以上続けるのは得策とは言い難いな。

「でねぇ……今回この話題をワザワザ君に話したのには、当然ながら理由が存在するんだ」
「……それは何となく気付いてます。ルディーさんがデイジーさんの事を頻りに『妹(デイジー)』と言い続けているから」

「流石だな……遠いけどもリュカ様の血筋を感じるよ」
「ですが、何かあるなと感じ取ってる程度で、その中身までは……？」
解られては大問題だ。

「当然だよ……知られちゃ困る内容だし、知ってもらうにしても必要最小限の人にしか言えないんだから」
「何だか物々しい様にも感じます。内容が世間に広まれば、ルドマンさんが破滅してしまうかの様な……まさかね？」

「まさか！　と言いたいけども、僕もお祖父様も、そしてリュカ様も……その可能性については拭う事は無いと思う。何せ“情報”ってのは、その内容の如何に関わらず利用の仕方で威力が変わる“毒”にも“薬”にも変化するモノだからね」

「や、やばいなぁ……何か物々しすぎて俺には手に負えないのでは無いですか？」
「うん。負えないと僕も思っているよ」
「……な、なのにその話をするんですか！？」
「そりゃぁするよ……妹(デイジー)と添い遂げたいでしょ？」

「そう言う面倒事には関わらずに添い遂げたいですね」
「そうだね。そんなに心配しなくても、君はほぼそうなると思うよ。話を聞く限り、政治とかには不向きな性格だし、ウルフ閣下が……もしくはリュカ様が如何(どう)にかしてくれるはずだから」

「じゃぁ俺は聞かない方が良いのでは無いですか？　さっきも知ってる人は少ない方が良いって言ってる事ですし……」
「それは駄目」

「何故ですか！？」
「君にとって大切な……いやこれから大切になる大好きな女の家庭環境についてだから」
「そ、それは……」
「僕にとっても大切な家族の事だからね」

「責任重大ですね」

ルディーSIDE END



 

更新日２０２４年６月７日