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私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

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5-5

 後期の授業が始まっていたけど、私は鏡壱之進さんに会った時

「ねぇ マオは・・・ チャラチャラしてる?」

「なんや いきなりー 別にチャラチャラもしてへんのんちゃうかー まぁ 誰にでも 気やすいけどなー それが 真織のええとこちゃうかー 変に 美人ぶらへんもんなー」

「その 気やすいって チャラチャラしてるんやろかー」

「そらぁー ちょっと 違うと思うでー 別にチャラチャラと男 求めてんのとちゃうからなー」

「なぁ 凛としてるって どういうん? マオはしてへんのん?」

「そっ そんなこと 俺に聞かれてもなぁー 真織は自分思ったことは貫くし 誰にでも親切やし もちろん美人だ いつもスーゥッとして歩いているし・・・まぁ 凛としているかと言われれば・・・ちゃうんかもなー 俺には 親しみあるからなぁー そんなん どうでもええヤン そのままでー」 と、言っていたけど私は気になっていたので

「鏡さんは 深川翠さんって 御存じですか?」

「えっ あぁー 4年生だろう 教育のな・・・美人だ 近寄れない」

「どうして? どうして近寄れないんですか?」

「どうしてってー 学部も違うし 雰囲気がなぁー」

「凛としているから?」

「そーだなー 友達とは会館なんかでも明るく話してるのを見るんだけどなー まぁ 歩いてる時なんかは、真直ぐに前だけを見て、さっそうとしてるんだ 近寄りがたい あっ 真織 あいつを見習おうとしてんの? 無理! と いうより・・・美人度でいうと どっちとも・・・好みはあるけど・・・ あいつは入学当時からあんなだよ 地元の女子高出身なんだけど、その時からあんな風だったみたい 真織はさー 峰ちゃんクラブに入ったのが悪いんだか 構内を歩いている時でも、友達と笑い合って はしゃぐようにしてるヤン みんなのアイドルなんだよ 親しみを感じさせるんだ 男でも誰にでも それに 彼氏も真織がそんなでも平気な顔してるもんなー あいつも気持ちの大きい奴だよー」

「そらぁー マオの彼氏なんだものー」

 私は、それからは それとなく教育学部の建物の辺りを歩くようにしていた。向こうは4年生で、もう後期授業なのでそんなに授業が無いのか、なかなか会えなかったのだ。だけど、ある日の最終の講義が終わった後も、教育学部の建物に近寄るとピァノの音が聞こえていて、しばらくその場で聞いていたら、音が止んで、少し間があって、建物入口から女の人が二人並んで出てきた。

 玄関のところで、女の人がお辞儀をして別れて出てきた後、留めていたゴムを取って、髪の毛を振り払う仕草で、その時に私と眼が合って、しばらくは、真直ぐに私を見ていたみたい。肩にかかるぐらいで黒くて真っすぐな髪の毛で、裾が少しカールしている。

 その人は私の目の前を、背筋が真直ぐに伸びているようで・・・私より顔の半分ぐらい背が高いのだ。すれ違う時に、私を見て軽く会釈をして、微笑んでいるようにも思えた。ベージュのワイドパンツに同色のパンプス、紺の縦ストライブのブラウスに襟元にはキラキラする小さなブローチに、肩からはブラウンのバッグを下げて、大き目のブリーフケースを抱えていた。真直ぐに歩いて去って行ったのだ。あの人に違い無い。私は、圧倒されていた。その容姿、化粧もしてなくて端麗な顔つき・・・確かに、近寄りがたかったのだ。あまりにも、スキッとして歩いているから・・・私なんかよりも大人を感じたし、仮に、オフィスを歩いていても出来る女って感じなのだろう。私も高校の時には、ツンとしていて澄ましていたつもりなんだけど、全然違う、私はただそのつもりしていただけ・・・あの人は違う 余裕を感じさせられるのだ。声も掛けられない・・・。確かに、側に居るだけなんだけど、息も止まってしまうような・・・。

 だけど、この人が私の昔の伝説の世界に連れて行ってくれるのだ。それは、私にも 思いも掛けないことだった。
 
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