幼稚園バス
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第二章
「一人もいないな」
「そうなのね」
「そのことがわかるよ」
「バスの運転手さんもそうなのね」
「まして事故なんてな」
これはというと。
「何があってもな」
「起こせないわね」
「お子さん達預かってるからな」
それ故にというのだ。
「それでな」
「事故なんてね」
「何があってもな」
それこそというのだ。
「起こせないしな」
「幼稚園のバスの運転手さんも大変ね」
「そうだよ、だからな」
「明日もね」
「幼稚園あるからな」
それ故にというのだ。
「ちゃんとな」
「頑張るわね」
「そうするな」
こう言ってだった。
夫は次の日の朝出勤してバスを運転した、まずは子供達を幼稚園まで迎えに行って昼は送った。その中でだった。
子供達を観て彼等のことを見知ってだった。
親達の話や動き、先生達のそうしたものを見て色々考え感じるものがあった。だがそうしたことは大事は園長先生に話すが。
おおむね自分の中に収めた、そして家で妻に言うのだった。
「働ける限りな」
「働くから」
「明日もな」
「幼稚園があるなら」
「それならだよ」
穏やかな笑顔で話した。
「車を運転出来る限り」
「運転して」
「子供達を迎えてな」
「送っていくわね」
「そうするな」
こう言うのだった。
「これからも」
「頑張ってね」
「そうしてくるよ」
穏やかな顔の下に色々見知ったものを隠していた、だがそれは隠して言った。
「今の仕事も定年までの仕事も同じだな」
「そうなの?」
「ああ、色々とあることはな」
「それでそれを言わないことは」
「定年前の仕事も色々あったからな」
人を見知ったというのだ、同僚や上司に部下、仕事相手に取引先と接して観ていて。それが今の彼をかなり形成してもいる。
「それと同じでな」
「今のお仕事も」
「同じだよ、このことはな」
「変わらないのね」
「仕事だとな」
ただ生活の糧を手に入れるだけではないというのだ、妻にこのことは言うのだった。そして今も見知っていくのだった。
幼稚園バス 完
2024・5・25
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