| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

幼稚園バス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第二章

「一人もいないな」
「そうなのね」
「そのことがわかるよ」
「バスの運転手さんもそうなのね」
「まして事故なんてな」
 これはというと。
「何があってもな」
「起こせないわね」
「お子さん達預かってるからな」 
 それ故にというのだ。
「それでな」
「事故なんてね」
「何があってもな」
 それこそというのだ。
「起こせないしな」
「幼稚園のバスの運転手さんも大変ね」
「そうだよ、だからな」 
「明日もね」
「幼稚園あるからな」
 それ故にというのだ。
「ちゃんとな」
「頑張るわね」
「そうするな」
 こう言ってだった。
 夫は次の日の朝出勤してバスを運転した、まずは子供達を幼稚園まで迎えに行って昼は送った。その中でだった。
 子供達を観て彼等のことを見知ってだった。
 親達の話や動き、先生達のそうしたものを見て色々考え感じるものがあった。だがそうしたことは大事は園長先生に話すが。
 おおむね自分の中に収めた、そして家で妻に言うのだった。
「働ける限りな」
「働くから」
「明日もな」
「幼稚園があるなら」
「それならだよ」 
 穏やかな笑顔で話した。
「車を運転出来る限り」
「運転して」
「子供達を迎えてな」
「送っていくわね」
「そうするな」
 こう言うのだった。
「これからも」
「頑張ってね」
「そうしてくるよ」
 穏やかな顔の下に色々見知ったものを隠していた、だがそれは隠して言った。
「今の仕事も定年までの仕事も同じだな」
「そうなの?」
「ああ、色々とあることはな」
「それでそれを言わないことは」
「定年前の仕事も色々あったからな」
 人を見知ったというのだ、同僚や上司に部下、仕事相手に取引先と接して観ていて。それが今の彼をかなり形成してもいる。
「それと同じでな」
「今のお仕事も」
「同じだよ、このことはな」
「変わらないのね」
「仕事だとな」
 ただ生活の糧を手に入れるだけではないというのだ、妻にこのことは言うのだった。そして今も見知っていくのだった。


幼稚園バス   完


                   2024・5・25 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧