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風邪でも休めないから

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第一章

               風邪でも休めないから
 最近忙しい、それでだった。
 山本聡勤めている会社で課長を務めている彼は会社に行くことにした。黒髪をショートにしていて面長で小さな細い目と薄い口びりを持っている。背は百七十二程で痩せている。
「風邪薬飲んだから大丈夫だ」
「そんな筈ないでしょ」
 妻の紗友里百五十四程の背で胸が大きく眼鏡をかけた垂れ目で黒髪をセミロングにしている彼女は怒って言った。
「四十度近くあるのよ」
「後は栄養摂るからな」
「野菜ジュースとか豆乳飲むっていうのね」
「ああ、食欲なくてもな」
 妻に玄関で扉を開ける中で必死の顔で言った。
「飲むことは出来るんだ」
「だから飲んでなのね」
「意地でもな」
「それで出勤するのね」
「ああ、大丈夫だ」
「忙しくてもそれで大丈夫の筈ないのに」
「そうも言ってられるか、今忙しいんだ」
 こう言って強引にだった。
 山本は会社に行った、そして飲んで栄養を摂ってだった。
 必死に自分の席にしがみつく様にいて仕事をした、その彼を見て部下達は彼に直接言った。
「あの課長仕事は俺達がやりますんで」
「休まれて下さい」
「熱ありますよね」
「ですから休まれて下さい」
「後は任せて下さい」
「今忙しいんだぞ」
 だが山本はこう言うのだった、必死に書類仕事をしながら。
「だからな」
「休めないですか」
「今は」
「とても」
「そうだよ、課長の私が休んでどうするんだ」
 管理職の責任から言った。
「だからな」
「それで、ですか」
「働らかれるんですね」
「風邪でも」
「ああ、そうする」
 こう言ってだった。
 兎に角必死に栄養を摂って風邪薬も飲んで気力で仕事をした、それはこの日だけでなく次の日もであり。
 その週を乗り切った、だが。
 金曜の夜に彼は力尽きた、家に帰ると玄関で沈み込み出迎えた妻に言った。
「寝るな」
「無理し過ぎたのよ」
「食べものはいいからな」
「雑炊作ってるわよ」 
 夫の横に立って告げた。
「だからそれ食べてお薬飲んで」
「寝ることか」
「そうしてね。鶏肉に人参に玉葱入れてじっくり煮込んで」
 そうしてというのだ。
「卵も入れてお葱も大蒜も生姜もよ」
「入れてるんだな」
「熱くて栄養たっぷりだから」
 そうした雑炊だからだというのだ。 
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