| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三百四十六話 東西から南北へその十三

「両手両足が凄まじく動いてな」
「強くなるのですね」
「ほうれん草の缶詰を食べただけで」
「筋肉までが」
「それで敵をノックアウトして」
 これがいつもの展開であるのだ。
「万々歳や」
「それはほうれん草農家の宣伝では」
「流石に有り得ないです」
「ほうれん草ではないのでは」
「実は麻薬では」
「そうも思ったわ」
 オコナー自身もだ。
「子供の頃な」
「副作用があるかも知れないですね」
「そうしたほうれん草を食べますと」
「どうにも」
「ああ、実際ほうれん草食べんとな」
 その水兵はだ。
「やられっぱなしやしな」
「やはり麻薬では」
「有り得ないかと、それは」
「ほうれん草とは思えません」
「お話を聞く限り」
「そやな、しかもそれまで威勢のよかった敵が」
 髭面の大男である、如何にもアメリカの漫画の悪役といった外見だ。
「やられてお母さんに助けを求めるんや」
「それは情けないですね」
「実に」
「やられてそれは」
「母親に助けを求めるなぞ」
「そうした展開や、しかし」
 オコナーは首を傾げさせこうも言った。
「何でか敵はほうれん草を食べへん」
「いつもやられているのにですか」
「ほうれん草を食べている相手に」
「それでもですか」
「食べないのですか」
「学習せんでな」
 何度同じ様に倒されてもというのだ。
「そうやねん」
「おかしな話ですね」
「それはまた実に」
「いつも倒されているのにそれは」
「学ばないのは」
「漫画やいうたらそれまでやが」
 スパゲティを食べながら話した。
「そうした奴や」
「そうなってはいけませんね」
「学ばないというのは忌むべきことです」
「それでは進歩しません」
「戦にも勝てません」
「負けても学ぶもんはある」
 オコナーは言った。
「ほんまな、そやからな」
「この度はですね」
「ニューメキシコ州の時以上にですね」
「堅固な防衛ラインを敷きますね」
「そうしますね」
「今以上にな」
 まさにというのだ。
「堅固に出来る限りな」
「していきますね」
「これから」
「そうしていきますね」
「そうするわ」
 確かな声で言ってだった。
 オコナーは防衛ラインに地雷も敷かせた、そして機関銃も増やした。そのうえで迫り来るであろう敵に備えさせた、そのうえで。
 ほうれん草を食べてだ、将兵達に話した。
「美味いな」
「はい、そうですね」
「実に美味しいです」
「そして身体にもいい」
「実にいい野菜や、ただな」
 調理されたそれをさらに食べつつ言った。
「食べても急に強くはならんな」
「そうですね」
「それはないですね」
「流石に」
「そやな」
 笑って話した、見れば誰もほうれん草を食べても急に強くはなっていなかった。だが美味く身体にいいことは事実だった。


第三百四十六話   完


                     2024・3・15 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧