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俺のヴィジランテ合衆国

作者:連邦士官
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 タクシーを寄付してもらったが、やることが多い。手始めに組織を作ろうと思ったが、組織は作るより乗っ取ったほうが早い。個性を強化するなどという努力も何もない堕落の象徴のドラッグを売るあの売人の組織の幹部を即座にぶん殴った。

 そして、その販路と資金力を使いPMCのアメリカン・セキュリティ・ピンカートンと運送&世論IT会社サンズ・オブ・リバティを立ち上げた。そして、未だに続くアフリカや中東の紛争に介入、ドラッグの輸送網を使った困窮者に対する食品の提供、アメリカ国籍者に対する救済活動。

 富の偏りに対する訴え、個性重視によるアメリカン・ドリームの喪失、アメリカ内のアメリカ人に対する排他的政策に対する批判を背にマフィアや汚職警官をぶん殴り、社会を変革するのは簡単だった。奴らには芯がないナヨナヨした知的階級だから強いものには媚びる。ハクトウワシが愛想をつかして絶滅しかけるわけだ。奴らはリョコウバトだ。

 半年の準備期間でコロラド州知事選挙に出馬をした。

 「わかるだろう!この社会には変革が必要だ!しかし、変革には痛みを伴う!だがな!堕落して努力もないアメリカはアメリカじゃねぇ!今やアメリカの誇りはなくなった!何故、アメリカが堕落した!崩壊した?1%の富裕層が知的個性と個性婚を重ねて経済を牛耳ってやがる!?アメリカンなのに自分の祖父母が!先祖が!自由のために小賢しいヨーロッパの片田舎の島国と何をしたのか忘れたのか!個性婚が血統を意味するダービーレースのサラブレッドのようなブリティッシュを意味するならば、お前らには自由を勝ち取ってきた闘士の血が流れている!本当の自由の一票がコロラドを変える!チェンジ・アメリカ・グレート・アゲイン!アメリカに何をしてもらえるかじゃねぇ!お前がアメリカになにができるかだ!バイ、アメリカン!Made in U.S.A!俺らこそがアメリカ製品だ!アメリカ自身だ!核だろうがミサイルだろうがどんな個性だろうが怖くねぇ!思えばかのジェロニモもロボ・カランポーの王も全てアメリカだ!意志があれば個性なんか関係ねぇ!俺は無個性だがなこうやって出来る!」
 近くにあった大木を俺が掴むと一気に引き抜いた。そして、秘書官のピンカートンから斧を投げられるがそれを掴み、へし折るともう一方の木を手刀を何回も使い、切り倒す。

 「鍛えればこれぐらいできる!アメリカン・ドリーム舐めるな!アメリカにはアメリカンがいる!アメリカンにはアメリカがある!自由の意志は我々の手にある!我々こそが、この国こそがどこよりも!アメリカ(自由)だ!リバティ!グレート・リバティ・アゲイン!アメリカを再び自由で偉大で超大国で世界の中心で!パクス・アメリカーナ?モンロー主義?クソ喰らえ!アメリカこそが世界だ!世界は再びアメリカになる!アメリカン・リパブリカ党?アメリカン・デモクラシ党?奴らは個性が出た時に国民を置いて核シェルターで震えていただけじゃねぇか!国民を救えない議員に居場所なんかいらねぇ!俺に任せろ!俺がお前らの声をこの国の上院と下院に叩き込んでやる!選挙制度舐めんじゃねぇ!」
 俺の声と共に会場はUSA!USA!USA!とグレート・アメリカン・ドリーム・アゲインやら、言う声が大きいがまだ世論調査では二大政党有利だ。俺は堕落したアメリカを作り上げたあの政党たちに入る訳にはいかない。俺は本来のアメリカを取り戻す。

 3ヶ月もするとたった210人程度の集会が2万人規模に変わっていた。俺は刑務所や軍の療養施設に私的に行っていたのがパパラッチに撮られたのが大きかったのかもしれない。俺が私的に力により傷付き、力で変革を起こそうとした、また起こしたそれを止めた戦士たちを労った。腕がなくなり、個性が使えなくなったアメリカ軍の元大尉、個性の力で見た目が溶けたようになった事で迫害されのし上がるためにギャングになった少年。いろんな奴らがいた。力を制限するあまりに力に翻弄されている。

 「アームストロング候補!彼ら個性に振りまされた犯罪者や個性で戦争犯罪まがいをした兵士などに会いに行ってるらしいですが、反社会的勢力の仲間、ヴィランを支持するのですか!」
 リベラル・ペーパーズの記者がニヤニヤしながら質問してくる。俺に殴り返されないという自信と相手を痛ぶれるチャンスとばかりにやってくる。俺はこういう傍観者ぶる加害者が一番嫌いだ。

 「だからどうした!奴らは精一杯生きていた。腕がなくなった!作戦が戦争犯罪だった!個性による見た目の変化で就職ができなかった!無個性だからと迫害された!お前にはおかしく見えてそれがヴィランと言うかもしれねぇ!だがな、アイツらを歪だというがそれが俺には宝石に見えた。」
 記者は驚いている何だこいつは?本当に馬鹿なのか?大学出ているのに馬鹿なら努力が足りないってことだ。親や自分の金や奨学金をドブに捨てただけだ。その金をアメリカの孤児やスラムのいま必死に上り詰めようとするアメリカスピリッツを持つ彼らに渡したほうがマシだ。

 「個性に頼り切り個性で努力もせず、ただ毎日を個性の自慢と自分の個性の優越感で過ごす上流階級よりもだ!個性、個性いうがリベラル・ペーパーズは会社として個性重視主義や個性婚を支持してるのか?個性に振り回されてるのはリベラル・ペーパーズじゃないのか?支持政党のデモクラシが負けそうだからそうやる甘えさせてる根性がアメリカを堕落させたんだ。」
 周りにいた支持者から賛同の声が上がるアメリカもまだ捨てたもんじゃない。愛国者の作り上げたミームがないのが素晴らしい。一度、利権が精算された個性紛争のあとにまた地下に潜り金と物資を備蓄していた金持ちインテリが幅を利かせて混乱した社会や経済を支配するそのやり口が気に食わねぇ。しっかりとお前が戦っていたら、闘争をしていたら自由を求めたら、それらを考えて前に進んでいたらアメリカは偉大なるアメリカのままだったはずだ。アメリカをアメリカじゃなくしたのは富裕層と二大政党という党派性に縛られた自由の奴隷共だ。

 俺の目指す修正サンズ・オブ・リバティは違う。努力と自由へ前のめりに死ぬ。その結果アメリカをアメリカ足らしめる。開拓と自由の道こそがアメリカだ。経済や軍事なんかはあとからついてくる。偉大なるアメリカを目指すためにまた一度利権を整地する必要がある。

 「美しい手というのはな。インテリの豆一つない手じゃねぇ。爪に汚れがあって、顔に汚れを被ってそれでも何かをひたむきに作ろうとして汚れた手だ!アメリカを馬鹿にするんじゃねぇ!アメリカは世界の工場で世界の農場だったんだ!今はナヨナヨした金融やITばかりだ。生産を忘れて輸送を忘れて、地に足をつけた活動を忘れて、努力と土の味や匂いを忘れて!汚いと安いと馬鹿にしてきたのが今のアメリカに憧れずに、ジャパンのオールマイトに憧れる市民を作り出した。人間は工場でできるわけじゃねぇ!大地で出来るんだ。大地を再び作らないといけない。それには変革だ!わかったか!封建主義者野郎!お前は経済と利権が作り上げたミームだ!あそこの爺さんを見てみろ!」
 俺は近づくと無個性の年老いた爺さんたちの手を掴み、それを見てアメリカを感じる。農夫の手だ。そして工場員の手だ。これこそが、これが国家だ!アメリカの手だ。豆一つ出来ずに金を右から左に流して儲ける色白のヒョロガリでは到達できない手だ。

 イノベーションやなんやで誤魔化しているがイノベーションは良いも悪いも振れ幅がある。常に人が必要としてるのが‥‥。

 「わかるか?記者のお前に。この爺さんたちの正しさが。この手にこそアメリカが宿っている。」
 爺さんたちの手を記者の前に出す。爺さんたちは困ってるようだが嬉しそうにしてやがる。爺さんたちの努力を無視してきた社会の歪さの現れだ。

 「な、なにを!?」
 分からねぇようだな。顔を殴ってやりたいが選挙中だから勘弁してやる。俺が説明してやるよ。

 「正直者の努力をした労働者の手だ。ホワイトカラーごときには理解できない研鑽や努力が宿っている。アメリカはこの手にこそ宿るんだ。世界が駄目になったんじゃねぇ。アメリカが駄目になったから世界がおかしくなったんだ。金持ちが儲けるためにやるID登録された兵士やID登録されたヴィランやID登録されたヒーローやサイドキックと共にID登録された道具や武器を使い、ID登録された戦争を中東やアフリカでやり続けてるじゃねぇか!商業主義の戦争が幾らの血を流してやがる!儲かるのはホワイトカラーやマスコミやコングロマリットやら軍産複合体、それらだ!アメリカンにはおこぼれしか入らねぇ!鳩が人間が食ったクッキーの食いカスを突くみたいにな!それはアメリカじゃねぇ!奴隷国家だ!もはや、この国はローマ帝国だ!封建主義なんだよ!わかんねぇのか!」
 記者に詰め寄ると慌てて帰っていったが、俺が知らないところでこれを支持者が動画投稿サイトとSNSに投稿したようで、中間層の支持率が逆転し、開票前に俺の当選が決まった。

 「俺が勝つからってな。だからお前らは軟弱なんだ。」
 リパブリカとデモクラシから入党依頼書が来たが意思表明としてアームストロング公式サイトで、入党依頼書を燃やしてそれで葉巻を吸ってやる。二大政党制なんかクソ喰らえ!どちらかに考えを縛り付ける自由を阻害する行為だ。依頼書は他にも来ていて一日ヒーロー体験と言って落ち目のコロラドヒーロー協会がテキサスヒーロー協会に勝つために俺に縋りついてきた。

 金のために暴力やヒーローをやるとは商業主義で気に入らないが選挙活動中だ。それにうまくやればコロラドヒーロー協会もこちらの手に入る。形骸化したライフルや銃火器の協会を手に入れたがまだ足りねぇ。偉大なるアメリカ、星条旗の光があるアメリカはまだ遠い。アメリカはアメリカだ。

 「まぁ、ヒーローも悪くはねぇ。気に入らねぇやつをぶん殴れる。」
 行ってみたが拍子抜けだ。一日協会長として、ヒーローに勲章を渡すだけの湿気た仕事だ。

 「俺じゃなくてもいいがな。」
 裏側でヒーローを称賛する役のガキがいやがった。浮かない顔をしてやがる。どうしたんだこいつ。

 「おい、どうした?」
 俺は近づいて聞いてみたが、この讃えられるはずのヒーローは協会の売出し中で、ガキの親父の手柄を盗んだらしい。親父はヒーロー協会での立場を気にして黙ってるらしいが情けねぇな。

 「事情はわかったが俺はお前を助けはしねぇ。助かるってのはな、自力でなんとかすることだ。そんなに助かりたいなら後で俺の事務所に来い。鍛えてやる。誰かに助けてもらおうとするなんて笑い草だからな。ここはアメリカ、誰にでもチャンスはあるお前の親父にもだ。」
 俺の背に「気に入らないやつは殴ってくれるんじゃないの!」と投げかけられたが知りはしない。お前の事情やお前が気に食わないやつなのかしらねえ。

 授賞式会場は明るめの会場で綺麗だ。しかし、集まってる財界人は愛国者と同じで体が腐ったような連中ばかりで反吐が出る。あそこのクランベリージュースばかりを飲むあの上院議員は腎臓病患者なのだろうが痩せようとも体を鍛えようともしないで、若い金が無い学生から腎臓を買い付けようとするだろう。
 「集まってもらったが主役はこのヒーローだ!Mr.トマスだ。」
 
 出てきたそのヒーローは頭脳系ヒーローで様々なアイテムで体を強化してるやつだ。気に食わねぇな。
 
 「お集まりになってもらいまして私、トマスはオックスブリッジ大学を首席で卒業しました。そして、今回の難事件を解けたのは靴をすり減らす無駄な行為をしない本当のヒーローがわた‥。」
 気が付いたら、トマスの野郎をぶん殴っていた。

 「トマス!アームストロング一日協会長!なにを!」
 俺は人の成果を盗むやつが嫌いなんだよ!うざったい顔をしやがってこのクソ野郎が。

 「おめえが人の成果を自分のものと言うのは知ってるが、中でも、より俺が気に食わないのは靴の話だ。そして‥‥ヒーローは気に入らねぇ奴をぶん殴るためにいる。なら、俺はヒーローの役割を果たしたまでだ。アメリカ自信はわかるか?アメリカ・プライドだ!協会長、甥だろが知らねぇがな。地に足をつけたしっかりとしたシェリフこそがアメリカがほしいヒーローだ。わかったか?お前のヒーローはあのヨーロッパの片田舎の島国くせぇ。王族で自慰行為でもしてるんだな封建主義者が。」
 俺はスーツの上着を一発で伸びたトマスに投げて被せると葉巻を取り出して吸った。商業主義が行き過ぎると多少顔が良いからってあぁやってキャラクターグッズを売るためにクズを持ち上げる。たまったもんじゃねぇな。会場の外に出るとガキがいた。

 「やってくれた!ありがとう!」
 何を言いやがるお前のためじゃねぇ。

 「俺は俺が気に食わないやつをぶん殴っただけだ。お前が勝手に解決したと思ってやがる。俺には勝てないと思ってるからお前の親父に嫌がらせをするだろうよ。お前の親父に言っておけ。ヒーローなら自分の子供すら守れねぇのはおかしい話だろってな。これで俺はやっぱりヒーローには縁が無いのが分かった。俺が目指すのは‥‥。」

 そうアメリカ本来の自警団(ヴィジランテ)だ。アメリカ合衆国建国の理念第二条だ。

 「規律ある民兵こそは、自由な国家の安全にとって必要である。従って市民が武器を保有し、携帯する権利をこれを侵してはならない。とある。ならば俺が目指すのは西部劇に出てきたようなヴィジランテだ。お前らヒーローとは違う。」
 俺はコロラドヒーロー協会をあとにして、黒塗りのアメリカ国産車に乗ると事務所につく頃にはヒーローを殴ったとして、パパラッチが集まっていた。訴訟を起こす気なんだろうあのヒーローは。

 腹が減っていたところにちょうど運転手が昼飯に買っていたファストフードがあって、買い取るとパパラッチの前でフライドチキン、ハンバーガー、ホットドッグ、フライドピクルスにピザをコーラで流し込むとよってこようとするので無視をした。

 地元コロラドの個人店のファストフードがこの騒動で全米規模の報道になり、彼らが俺の後援会に入ったのは謎だが、昼夜を問わずにヒーローが無個性の俺に殴り飛ばされて伸びたのが面白いのかSNSや動画サイトのおもちゃにされたトマスは訴訟を取り下げた。

 無個性に個性持ちヒーローが訴訟を仕掛ける時点で醜聞だったらしく、その過程であのガキがコロラド州議会で証言したことにより、俺の支持率はバカ上がりをした。

 そして、コロラド州知事に受かった。

 俺の求めるヴィジランテにはまだ程遠い。
 
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