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帝国兵となってしまった。

作者:連邦士官
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38


 戦争の時は来た。やっとはじまる、帝国の終わりの始まりが……ダキアやイスパニアなどかなりの紆余曲折はあったが原作が始まる。ターニャ・デグレチャフは大丈夫だろうか?頭がおじさんとターニャで分裂してないだろうか?まぁ、電車で体は分裂してるだろうけど。フレンダおじさんだな。分割や分断工作による戦闘も可能だし、実質ゲッターロボだな。オープンゲッターおじさんだ。今のターニャはどうなってるかは知らないが引継いで無事に帝国を導いてやってくれ。10年早く生まれたなら変わったかもしれないと作中でウーガが言っていたから舞台は整えた、主演役者は舞台に登るわけだ。開演し幕が開くは末期戦、目指す大円団、血と砂ぼこりの道に何があるのか。

 俺は脇役の一般人なのだから、舞台から降りるしかない。少しでもこの街の人を救える限り手を取り合い助けることぐらいは出来るだろう。俺はヒーローでも英雄でもなんでもない手の届く範囲、聞こえた範囲にしか反応できないのだ。やはり、これらの脚本を作った存在Xに悪意を感じる。

 舞台の配役にないからこそ、配役にいない存在Xに届くかもしれない。人々の死の数の分だけやつには報いを与えなければいけない。人の世が始まったのならば、神は干渉すべきではないだからお前を殺す。きっと殺す。これは神に対する俺の愛でもある。お前は名誉がある内に俺が殺してやる、そうすればメアリー・スーも救われるだろう。ルーシー連邦の人々も、神の気まぐれ脚本で死ぬのは自らの選択で死ぬよりよっぽど冒涜的だ。国や世界や神のせいにするよりも俺はそれを変える。神代は終わりを告げ、人の世を始める。だから、安心して死んでくれよ存在X。俺とお前の舞台外からの殺し合いだ。生きたいとお前がいっても息の根を止めてやる。お前は俺だこの人の世に必要がない存在のはずだ。待ってろ怒りではなく哀れみで葬ってやる。脚本家を殺した舞台はどう終わるかはわからないが人の世の助けになるならば良いだろう。

 異物は異物同士だ。わかってるよな。

 「人の命を弄ぶなら、人の世の礎として切り裂かれるのも本望だよな。なぁ、神を名乗るもの。ルーシー連邦にしても、この帝国の下層にしてもどの国もだ。家畜に神は居ないのだ。神代は人を導く神がいるのだろう。神に導かれた人は牧羊犬に導かれた羊と同じだ。家畜に神は居ないのだ。神なき時代こそが神を作り出す。多くの人々のために犠牲になるべきだ。お前は神なのだから物語を作ったのはお前だ。故に死ぬんだそれでこそ人が安心して寝られて人が人として成り立つ。世界の為に誰かが犠牲にならないといけないのなら、犠牲になろう。世界がお前のために犠牲にならないといけないのは堪らなく納得いかないのだ。愛や1人のために世界を犠牲にするのは美しいかもしれないが俺は許せない。お前のやり方が、だから終わらせる。きっと終わらせるそれが俺の定めだ。」
 窓の外に浮かんだ月に向かって俺は呟いた。月に誓おう、この気持ちは正しく人類は独り立ちをする時が来た。例えばこの世界に宇宙の意志がわかる守護者や地球の守護者がいたとしよう、各地の国の守護者がいたとしよう。

 守護者が保護者として過保護に支配を続けて道を決めるのは明らかにおかしいのだ。消えるべき時は消えて、生きるべきときは生きる。それこそが自然、人間もまた大自然の一部だ。そうだろう人類には手と足がある自分の足で立てる。手でお互いの手を取り合えるのだ。その手に武器を持たなくても、人は現状と戦い続けれる。荒れた大地も切り開ける、運命ですら!それ故に俺は神を殺す。国破れて山河ありというが国破れても人が生きている限りその国は立ち上がれる。国がなくても人々が国を作る、人が人を作る。人を再生産する大地を作る、大地を耕すことを“転じて”カルチャーと呼ぶのだ。

 人々の軌跡が奇跡として作り上げた人類の畝を神が壊すというのならば、神を殺す。何度だって殺す。俺はお前を許しはしない。人間はお前の家畜ではない。ふざけるのは信仰だけにしろ。人は服を着ているだけの猿かもしれないが猿が服を着て一枚皮を被ることで人なんだ。獣ではない人間たちの軌跡の畝を、人の血や涙に汗で出来た大河をお前が壊す権利はない。人が神の家畜にされるのは許すわけにはいかない。なぜなら、俺は人間だからだ。傲慢でも高慢でも不遜とでも傲岸、倨傲、驕慢、暴慢、有頂天になったと言われても良い。俺は人間として生きて、人間として死ねる。そんな世界が良いだけなんだ。明日の飯が茶碗に入ってない不幸はある。それはまだ許せる。しかし、人が人間としてではなく家畜として扱われて営みを出来ずに人間という地上の星(色彩)が大地という宇宙(キャンパス)瞬き(デッサン)ができないのは許せない。

 こんなにも世界は輝き瞬いているのに信仰だけを欲しがるから落ちぶれるしかないのだ。信仰は単なる儀礼だ。本質的な人々の営み、息遣い、手触り、匂い、歩みを見ていないから誰にだって忘れられる。人間を愛せないのに、人間から愛されるわけもない。だから、俺が存在Xお前に愛をあげよう。愛の痛みを知り、ニンゲンを人間として見れたならお前は愛されるだろう。しかし、ニンゲンを人間として見れずに愛せないならばお前は信仰される価値はない。愛を知らない化け物を討伐するのが一般人でしかない俺の仕事だ。

 いつだって一般人が化け物を、化け物を倒したあとの化け物に落ちた英雄を、英雄だと思っている存在を倒してきた。そのサイクルでしかない。存在Xを殺して化け物になったのならば俺も一般人に殺されよう。それが運命というものだ。欲しがった結果何も手に入らないのもまた運命だ。お前の業を俺が根こそぎ刈り取ってやる。手に入らないから欲しがるのだ欲しがるから手に入らない。届かないからこそ届くんだ星空を、星を捕まえようとした手のように。

 「今日は満月か。」
 月の欠けがない空に、雲は一つもなかった。それを見て、俺は決めた。一般人の足掻きがお前を殺すんだ。市民こそがいや大衆こそがお前を殺す。神は死んだ。そんな夜だった。水底に沈んだ水晶を思い出させる。
 
 「作戦開始だ。」
 当初の計画通りに開戦前夜、これは物資や無線の数量で考察した範囲ではあるが……地盤沈下によるガス管破裂と水道の断裂を理由に国境地帯近くの街から住人を避難させる。

 「持っていけない物資はどうしますか?」
 副官のアルベルト・ガーレン少佐が聞いてきた。そんなものは最初から決まっている。

 「残る市民に配れ、使いきれなかった資金もだ。解放者を名乗るフランソワ軍は彼らに鷹揚として更には大義名分を果たすために物資を我々より使わないといけないはずだ。だからこそ、資金も物資も集めていたんだ。そして、こちらの反撃時には市民から徴発するだろう。そうすればフランソワの大義やフランソワに期待する市民が減る。」
 まぁ、略奪はしないだろう。流石に教育を受けている軍人なのだから、ルーシー連邦じゃあるまいし。

 そこから数日、フランソワ軍を引き付けながら、市民たちを帝国内部に下がらせる。特にフランソワ軍は中立宣言をした都市に対して疑いを持って軍を使って居ない帝国軍ゲリラを探し時間を潰している。ゲリラを探す過程でかなりの横暴さを出しているらしく反発がかなりあるようだ。急速に侵攻しすぎた反動で彼らの補給は滞っているらしく、何より機甲兵力の少なさがより拍車をかけてもいて、歩兵師団ばかりで突破力も低い、機動力も低いのに強行軍で土地を獲得するので圧迫に次ぐ圧迫で補給は雀の涙のようだ。

 退いていく街に最初は半島近くまで撤退したが、しつこいフランソワ軍の強行軍による追撃戦だ。そして、帝国南部までひたすら移動する。協商連合、共和国も明らかに係争地より深く進軍しているだろう。

 今頃、ターニャ・デグレチャフは銀翼突撃章を貰ってるところだろうか?それにしても援軍が遅い。バークマンは何をやってる?
 「これで50人目か。」
 開戦4日でほぼ寝ずに出撃して撃墜数が50人を超えた頃、そう言えばイスパニア内戦と合わせて100人を超えた、戦闘機も28機落としている。なんでこんな事に?迫りくるフランソワ軍の攻勢を叩き潰すが、フランソワ軍はすぐに補充をして向かってくる。俺を狙うように。なぜだろうか?

 その後も何度も迫る一緒に逃げている市民を無差別に攻撃するフランソワ軍と加速度的に増えていく避難民、フランソワ軍は『市民を盾にするな!』と騒ぐが無視をして避難を続けていた。更にはフランソワ軍は追撃戦に夢中となり俺等を追いかけ回してくる。長い長い撤退線だ。

 このフランソワ軍の侵攻とレガドニア軍の越境を元に帝国は帝国兵と国民の麦が撮影した映像や写真を論拠に両国の宣戦布告なしの戦争を公表、そして、同時に世界中の帝国大使館で批判文を記者会見を開き公表、特にレガドニア軍のたまたま国境地帯で運行していた運搬車に対する攻撃や略奪をやり玉に上げて批判文が作られ、たまたま合州国にいた国民の麦党代表兼特別帝国広報大臣のオーデンハウゼンが合州国中のメディアを集めて、国民の麦の労働者の妻子の悲痛な文章などを農村部を中心にビラをロケット砲に入れてばら撒いたらしい。

 また合州国帝国系市民協会には帝国の領土が侵略されたセンセーショナルなリーフレットを頒布し、合州国内の地方議会で夫を殺された可哀想な妻子や子供を殺された老夫婦たちを演説させる予定だそうで合州国帝国系人からも志願兵を集めており、今回の件で白眼視されつつあるレガドニア系やフランソワ系合州国人にも人を許して罪を許さず、全員に特別広報大臣として免罪を行い、現地の教会などにも侵略してきた2カ国を許し給えと祈りを捧げる姿に合州国のマスコミが食いついているようだ。合州国のマッカーシー将軍とパルトン将軍と懇意にしているとの噂もあった。

 「しかし、市民達とライン川まで撤退とは。」
 まぁ、四ヶ月半で総距離2100キロあまり。しかし、これでターニャ・デグレチャフが世に出ると思えば俺はやっと降りれると安堵するのだった。シュトックガルドまで市民を連れた帝国史上最も長い撤退戦だ。凱旋とばかりに受けるが、フランソワ軍にかなりの土地を占領された。北部はレガドニア軍にイール軍港近くまでに進軍、最前線がイールを最北にハルブルク、ハローファー、ケッセル、フランクケルト、最南端はカールズリンゲンだ。

 「やっと寝れるな。」
 と横になった途端に参謀本部から暗号が入ったらしい。副官が飛んできた。

 「少将!」
 寝ようとする邪魔をするんじゃないよ!何なんだ?

 「何だと言うんだ?」
 嫌な予感がする。休めなくなりそうな予感が。俺はこれが終わったら軍を辞めるんだよ。

 「陸軍参謀部によるとダンケルクに民間船も含めた帝国が持つ全ての艦艇にて35個師団を上陸させました!フランソワ占領軍が退こうとしたところ、100キロ近くを爆破しました!ダンケルクの35個師団と共に南部にいる帝国軍総員に攻撃命令が下るのではないでしょうか?ダンケルクの司令官はバークマン将軍のようです。こちらを。」
 現状、史上最大の上陸作戦の成功に副官は興奮している様子で、手紙の封筒を渡してくる。上質紙にこれだけ。命令書簡だなと確認できるし、実際に今週、渡されていたものだ。

 「時間確認、時計を合わせよ。壁掛け時計もだ。それで14:40に合わせよ。出来たら知らせてくれ。」
 副官が時計を用意している中、俺は眉間を揉んで、目元を押した。

 「時計合わせました!」
 俺は副官とお互いに確認してからペーパーナイフで封筒を開き、指令をみる。そこには……。

 「なるほど。」
 このまま、混乱した共和国軍の退路を絶つように背後に回り込み、敵を倒すように書いてあった。気軽に言う、気に入らんな。そして、南部に蓄えてある戦車800両と南部の6個師団の一時的な指揮権を与えると書いてある。作戦名は……。

 「バルバロッサ?」
 嫌な予感しかしないが、命令は命令である。こちらはやるしかない。7個師団による作戦だ。おそらく、ここでこちらが囮になっている内に中央と北部からの平押しをやるのだろう。包囲殲滅といったところか。しかし、帝国内に入ってきたフランソワ軍は100個師団に登ると見られている。混乱を治められたらこちらが狩られるだろう。

 「やるしかないよな。」
 早速、準備のために俺は眠たい頭を動かして立ち上がるのだった。

 会議室には援軍にリーデル(大佐に昇進)がいて、いつも通り体操をしたり騒がしいなと思いつつ、反攻作戦のために何ができるかを考えていた。

 バルバロッサって名称がすごい不吉だなと俺はそろそろターニャにバトンタッチを出来ないものかと息を大きく吸い込んだ。まだまだ空は晴れていた。
 
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