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帝国兵となってしまった。

作者:連邦士官
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25


 俺は空を飛び宙を舞う渓谷の緑を無視して碧の空に登っていく。それが合図のように彼女もついてくる。舞台が整ったとばかりに二人がこのイスパニアの空に、本来は自由なはずの空にただ舞い上がって行く。俺は当然、登り行くその一人なんだがはっきり言って辛い。空に登りながらもお互いに後ろを取ろうとクルクル回る。まるで二匹の龍がこの空を登竜門として上がりゆき、絡み合い踊るかのように。

 情報は勝利をもたらす、武器を確認する。こちらもあちらもお互いに今、持っている武器は弾道が集束する武器ではない拡散系のもの、近中距離の散弾銃とサブマシンガンだ。お互いに決め手については詰まる所が近距離による乱射、一発で決めるには厳しい。そして、一番の問題はお互いが本気で撃ち合うのはまだその時ではない。怪物と呼ばれていてもあれ程の技を使った後だ、一騎打ちをしたのも魔力を回復させる時間稼ぎだろう。同時にプロだから予備タンクは必ず持っているしかしだ、逃げれなくなるほどの大技を繰り出すわけには行かないのだろう。

 それと大技は神経を使うから隙になる。単純にこれは先に動いたほうが負ける。だから、牽制をしあい仕掛けるわけには行かない。このままではランデブーやツーリングといったような状態で、ただ二人で空を飛ぶだけなのだが、俺は目的の一つである戦車部隊を視界の端に捉えた。形でわかるあれはヘスラーの部隊だ。まるでアルデンヌの森を征くがごとく、木々の合間も無理に抜けて敵地を越えていく。踏破していく姿は陸の王者戦車とはよくいったもので俺の一騎打ちを受けたという陽動は成功だ。同時に渓谷の上にいたオルトー隊も損害なく、件のイスパニア共同体軍を捕虜にしているのを発見した。

 だが、瞬間ヒヤリとして急降下する。しまったよそ見のし過ぎだ。太陽を背に銃弾がやってくるこちらはループとターンそしてバレルロールを繰り返し回避する。頭が膨張する感覚を覚えて身体を止める回避しようとした場所を見る。そうすると弾が飛んでいた。偏差射撃だ!そんなものを繰り返されたらターニャやメアリーでもアンソンなどでもない一般兵の単なる俺は撃墜されてしまう。

 僅かな今の隙もかの怪物少佐と言われる彼女は見逃してくれなかったのだ。が、その後も蛇行させながら指切りをして精確に4点バースト射撃をして面攻撃の様に彼女は撃ってくる。脳内で背中に気配を感じながら銃声の回数から今飛んできた弾をカウントする。恐らく4回なので16発、相手のマガジンにはあと推定80発の弾しか入っていない。

 そうであるならば、危険だがあと何回か誘って無駄撃ちをさせてやる。そうじゃなければ振り回される。手足を使って無軌道な右に左と回避をし、散弾銃を構えた。散弾ではあれに勝つのは無理だ。素早く装填された6発を撃つと重力に逆らいながら急上昇、相手は着いてくるので意表を突いて逆落としをしてからターンを決めて、銃弾をかわす。そして、次の瞬間、宙返りをしながら散弾銃を肩に固定し、片手に6発のスラッグ弾を握ると手をスライドさせながら奥に押し込み動かし素早くリロードをする。アクション映画じゃないんだぞ!なんでこんなことをやらないといけないんだ!それを隙だと向こうが近付いてきた瞬間に隠していた腰につけた小物入れから小銃弾を片手に隠して持ち出し、指に挟んで相手の防殻を殴り付けて更に手刀で魔導刃を作り叩きつけるアーマード・コアでもないんだぞ!小銃弾はパンパンと音が鳴るのだが、イスパニアのエースは化け物か!?相手はまだ余裕だ。この魔導刃による追撃のお返しとばかりに向こうは弾幕を張る。しかし、俺は怪物のお相手を蹴る。これは攻撃ではなく距離を取るための足場として相手の防殻を使う為だ。このとっさの判断が功を奏したのか、俺の距離を取る戦法で全くサブマシンガンが当たらない。殺意がこれは?避けた今ので残り、40発ぐらい。つまり、まだ勝機は十分にある。

 「景気よくそんなに撃って大丈夫か?フロイライン。」
 挑発に相手が狙いを引き絞るのを合図に、俺は術式を飛行に全部入れ、バレルロールをしながら急上昇をしてループをする防風もないので風を感じる大地の風を、ガイアそのものと対話をしているようだ。暴虐の風を身に受けて寒さを感じながらも俺は気合を入れるために大声で言葉にならない言葉を叫んだ。晴れている空に響く奇声、覚悟を決めて他の術式に集中するために飛行術式を解いた。その膨大な落下する位置エネルギーを使い、相手の懐に飛び込む。ヘッドオンだ。目と目が合う気がした。悪く思うなよ前に出てきたのは君の方だ!ガンランスの突撃、竜騎兵が槍を構えて突撃する如く俺は散弾銃を前にして、その先に魔導刃を構え中世のチャージのような格好になる。

 「それは一発あれば十分。」
 さっきの挑発はよく聞こえていたようだ。ヘッドオンは正面を切った殴り合いの姿勢。それは当然だが、サブマシンガンから出る鉛の嵐は俺を狙う今度は指切りをしていないフルオートの中のフルオート。それを避けるのは無粋だ。それに動き回っては折角の落下のエネルギーを無駄に使う。俺は小刻みに揺れながら防殻術式にリソースを振り、防御を固めて攻撃となす。散弾銃をこれでもかとポンプをぶん回しながら全弾撃ち、それを遥か高く上に投げ捨ててから、勘が告げる通りにサーベルを抜くと俺は斬りかかる振りをする。相手はサーベルから来るであろう魔導刃から身を守るためにそちらにリソースを割くために射撃が遅くなる。

 「なぜだが空が悲しいな。」
 相手の、相手の防御体勢に入ったのは見えた。そのタイミングを狙っていたのだ。そのままサーベル自体はずらして、サーベルの鞘の方に魔導刃を形成させぶっ叩くと相手はしまったという顔をする。しかし、相手は怪物と言われるだけはある即座に片腕を前に出して犠牲にする勢いで防殻を展開させ厚くなった防殻で鞘を掴むと残りの腕に魔導刃を作り出し横から殴りつける。片手をマンゴーシュのように鞘を受け止めるのに使い、手刀で横から鞘を指に挟んでソードブレイカーのようにへし折る。そんな判断をするなんて、戦いの中で成長しているとでも言うのか!?俺は単なる魔導師なのにこんなのってありかよ!?

 また位置エネルギーと力の補助に割いた一撃でへし折れた鞘が残りも砕けるが問題はない。片手に持っていたサーベルをわざと相手の上に投げる。鞘の経験もあり、相手はつられてサーベルを見る。その投げられたサーベルは回転をして太陽の光を乱反射する。それをもろに見たのだろう再び、相手の動きに隙が生まれる。相手を再び蹴り、横に飛び上がる。勘が告げているもう少し横だと。

 「確かに一発あれば十分だな!」
 15mmフルサイズ弾を入れた拳銃を太もものホルスターから引き抜くと単発式のそいつが火を吹く。対戦車用決戦拳銃と名乗る馬鹿の銃だがないよりはマシだ。それに対して相手は防御を固めた。俺の狙いが別のところにあるのをまだ気付いてないようだ。

 「そんな弾、だからといって!」
 彼女の声が聞こえたが、残念ながら今の俺が撃った弾は相手を狙ったものではない。あのサーベルが銃弾で跳ね返って予想外の方向から来た刃物に驚き、気を取られているようだ。そんなことでは多分、ターニャ・デグレチャフ相手では通用しないぞ。単なるおじさんの俺の浅知恵に翻弄されるとはな。その隙で俺は隙が出来る飛行術式を難なく再起動させられた。

 そして行き過ぎた横の地点から、街道上の怪物と言われる彼女にもう一度アプローチ仕掛ける風に急接近すると魔導刃で殴ると思ったのか、だが今度は相手が拳銃を抜いた。そしてこちらを見ることに集中したのかサーベルから目を離した。横に滑ると回転のそのままに俺はサーベルを彼女に突き立て、足で蹴り込むのと同時に魔導刃をサーベルにまとわせて防殻にヒビを入れてからサーベルを足場に距離を取る。

 索敵術式により場所を見つけて、あのなんの役にもたたなかった散弾銃が落ちてきた。すかさず俺はそいつを掴む。ふたたびヘキサリロードで弾を込めて2発撃つ。全弾は撃つのではなく、体に巻いていたシェルのホルダーを散弾銃に巻き付けると魔力で散弾銃ごと弾を炸裂させる。爆発で一瞬相手が見えなくなる。

 「小細工は無駄だ!」
 その体に傷がついてない相手の怪物少佐を見る。化け物や怪物にふさわしいとはこのことだ。あの空中戦でアンソンもこんな気持ちになったのだろうかと一人笑ってしまう。まだ起きてもいないことだろうに比較になんてなるかよ!!なんだよコイツ、本当にさ俺がやっと人類の範疇でお前の相手をやってるのにお前だけはこの世界でサイヤ人か何かか?相手はサブマシンガンにリロードをしようとするが刹那。

 空から降ってきた光、これは‥‥なんだというのだ光という言葉以外に表せない光を感じる。それは遠くにある天から続いているのを感じる。コイツはもしや存在Xの力なのか?降り注ぐ光をマルフーシャ・エレイシア・チェン・ウー・メルキオットは受けた。恩寵というものなのか!

 光のさなかにサブマシンガンが手からこぼれ落ちて地面に落下していた。

 「マルフーシャ・エレイシア・チェン・ウー・メルキオット!この邪気がよく来た!」
 どうすることも出来はしない。しかし、その光を振り払いあの怪物少佐が拳銃に弾をリロードをするのが目ではなく感覚で見えた!あの神を名乗る存在の誘いを彼女はその強大な意志で振り払ったのだ。だが、同時にそれが狙い目だ!二挺の単発式拳銃を撃ち込むと俺は急降下を始める。それは相手もだ。そして、最後のやり方を始める。

 「私の名前は知っているだろうけどマルフーシャ・エレイシア・チェン・ウー・メルキオット。あなたの名前は?」
 お互いに地に足を着けていた。光を拒絶したからだろうもうろくに空を飛べるほどの魔力を相手から感じない。かく言う俺も光の余波で予備タンクまで魔力を持ってかれた。人間に干渉するのをやめろ、そして一生籠もってろよ。封神演義の聞仲や妲己が人ならざる身で好き勝手して面倒なことになっただろうが人の世は人に任せろ。

 「小官の、いや俺の名前はジシュカ。今このときは単なるジシュカだ。フロイライン、では最後と行きますか。」
 お互いに持った銃を見る。短時間で彼女がリボルバーの拳銃に装填できたのは1発、俺は15mmの単発式の拳銃。

 お互いに最後は一発、距離としては10メートル程度の距離。必中だろう。というかオルトーや下の魔導師たちはどこに行ったんだろうか?騒ぎを見て進軍を成功させたのだろうな。これは完全に陽動は果たした。戦いは時間にすると1時間以上、渓谷からマドリッドーリまでの距離は20キロ、十分に着いているだろう。

 「結局、私は通してしまったのね。」
 お互いに突きつけ合う拳銃はまるでマイクであり、インタビューをし合うがごとく気軽に向けている。これではまるでウェスタンではないといったがウェスタン映画じゃないか。

 「フロイライン、戦いは非情なのです。」
 相手から目を話さないように見据える。そして、マルフーシャは声を出した。

 「貴方は私を殺してくれるの?」
 いや、知りません。ゲキヤバ女じゃん。ガンダムWや型月じゃないんだぞ。そう言われてみれば挙動がおかしい。ゲキヤバメンヘラ系救国のゴリラ一般啓示受ける英雄とかカテゴライズとしては‥‥しまった!こいつ、メアリー・スーやドンレミのガンギマリ神の声聞こえてるオルレアンメンヘラサイン女じゃん。怖っ、殺しても死ななそうだし、逃げたらこの後に起こるかもしれないフランソワで市民を扇動して啓示を受けたとやばいほどゲリラ戦術とか使いそう。

 自分の名前だけが書ける系ドンレミ女もどきとかきっとフランソワ人の大好物だろ。絶対に捕まえなければならない相手だ。

 「貴女はジャンヌ・ダルクを知っていますか?貴女はそれに似ているその姿や行動が。だから、きっとそれは許されないだろう。殺しはしない。」
 ドンレミ系戦争女とかメアリー・スーだけでお腹いっぱいなんで、待てよ。メアリー・スーとこいつをぶつければいい感じに対消滅してくれるのでは?聖女とか讃えられそうな感じもあるし、メアリーがどのメアリーかにもよるが、ガンギマリにはガンギマリをぶつけてやる。

 「それは‥‥貴方の‥‥。」
 だから何?最後まで言えって聴力を強化してるから難聴じゃないのに聞こえないし、オルレアン系救国火炙りさんって思い込み激しそう。よく考えたらあんまりフランス農村女の話をしていたら呪われそうだから止めておこう。

 「フロイライン、これ以上言うならばちゃんと声にしていただきたい。しかし、これ以上は何がいりますか?この場所に。」
 確実に日は落ちつつある中、俺たち二人は構えていた拳銃から火を放った。

 



 その数時間後、戦火にマドリッドーリがさらされるのを恐れたイスパニア共同体大総統(内閣が消し飛んで代わりがいないために大統領などもすべて兼任している。)はマドリッドーリの無血開城をまとめ、撤退をした。

 講和会議のためにイスパニアにバークマンがやってくると言われた。

  
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