帝国兵となってしまった。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
9
長期間無理やりバークマンに拘束され、知らない間にダキア方面治安維持派遣軍コンドル軍団の総司令部に配属されていた俺は今日、1921年の初頭を以て解放された。バークマンとあのあと助かった全権大使と怪我を理由に退役をしたが中佐の推薦もあり、幹部候補生として軍大学の学生となることになった。仕事が増えたりするのは御免被るがバークマンの無茶振りから救われると思うと安堵をした。それに戦争の悲惨さを止めるなら出世をしておいても損はない。あのようなことをくり返さないために。
未回収のイルドア、コルシカを餌にイルドアを抱き込みマルタの制圧、イスパニア共同体が持っているバレアレス諸島やカナリア諸島などもできればこちらに引き込みたい。目下はイルドアとイスパニアをこちら陣営に引き込むことなどという地理的重要性を書いた地中海帝国のバスタブ化構想を適当に昨年に書いた怪文書の続きを読みたいとバークマンに延々と書かされたりした。
それは国家動員並びに今こそ皇帝の世の復活及びルメリアとの軍事同盟の締結これにより、大陸の楔が完成し、ルメリアの近代化もできればルメリアの戦力に対してルーシーにも多大なる軍事的抑制を図れるという狂気の作戦で、イルドアさえうなずけばイルドアの南方大陸植民地からエスカルゴエリアへこんにちはできるためにやるべきことはすべきであると最後にともあれ、共和国は滅ぶべきであると考える次第である。と書くとバークマンは喜び、今後全ての怪文書の締めに書くべきと命令をしてきて疲れた。
そんな中で断れない雰囲気で3人から軍大学へと推薦したと告げられると渋々受ける。そして、帝国の戦闘についての9種類の勲章とダキア救援作戦参加従軍勲章、並びに帝国=ダキア同盟記念勲章、他にもバークマンがダキアに対して“懇切丁寧な要請という名の恫喝じみた独り言”を行い、何百人以上の帝国人にダキアは何種類もの勲章を発行する羽目となり可愛そうだなと思ってみていた。特に電話口での勲章か領土の割譲かの迫り方は凄くはっきり言ってイエスかハイのどちらかで聞いていた。
同時に近代化への手引きとして各軍や警察に帝国人の派遣と帝国からの仕方ない圧力を名目に抵抗する貴族たちの排除などの方策を俺から進言するしかなく、更には炊き出しやらなんやらに新聞社への接待の他に貴族領にあった税制の決定権などを帝国軍を盾にしたやり口で手放させて中央集権化をダキア暫定政権である鉄兜団や三元帥と言われるダキアの軍事上層部共に締結させ、貴族には工業化という金がかかるが金が儲かる産業に投資をする資本家にシフトしてもらうやり方を決めて、更に帝国後背地として工業企画の統一と共にダキア通貨と帝国通貨の変動性のペッグを結び、各種技術支援として鉄道と道路の舗装などもダキア軍主導の元に推し進めてまさに陸軍主導国家のような有様になっていた。
バークマンは「これは試験だ。」とかつぶやいていたがよくわからないがこんなことを怪文書で書いた気もする。日本の戦後処理のあとの発展などを書いた敗戦革命論及び敗戦同盟の杭、そして陸軍主導社会主義についてだっけ?まぁ、あんな与太話は誰も読んでるわけがないから偶然だろう。
バークマンは戦傷章などの他にもこちらを上級大尉にするために反乱軍残党がいそうな場所の気球偵察や航空機偵察に至るまで、兵科を無視して俺に直接やれと使い倒してきて、果ては爆撃の機銃手や狙撃手なども砲兵訓練が出来たならやれると言い放ちそれが終わったときには戦車やバイクに乗せられたりなど無茶苦茶が過ぎていた。
通信手や各種整備までやらされて流石に多忙で、いかれてるよバークマンと思ったが派兵軍団のときの一時的な人事だが、お付きの副官(本物)のあのロメール中佐が言うには「バークマン閣下は若手の将校に様々な経験をさせて、来たるべき終末的な戦争を勝ち抜く総合戦闘団の指揮官になれる人材を作ろうとしているようだ。小官も歩兵の専門なのに降下作戦に参加させられた。それに今更、残党相手に馬に乗って騎馬突撃もさせられている。あの人のやることは高度なのだ。」
いや、ロメールですら分けのわからないことをやってるとか意味がないのでは?それに訓練兵に至るまで、行軍練習と無理を言わせて派兵させて、憲兵も来たるべき駐留軍の狼藉対策訓練などと称して送らせているし、国家百年の計!とか言いながら補給を無理に引っ張ってきてるのを見るとあのおっさんやばいやつでは?
しかも、すぐにこの派兵軍団に受勲者増やしたがるし、勲章を送れないような功績には即座に感状を発行するし、待てよ後半はいい上司なのでは?頭おかしいけど。
「兵と同じものを食べるねぇ。」
そう考えると毎食がバークマンは塩と気持ち程度のベーコンとザワークラウトのスープにふかした芋に戦争になったら香辛料が民間人に手に入らなくなると帝国でも手に入るハーブと塩で味付けをして食べていたり、カブのステーキとかぼちゃの塩のみのシュトゥルーデルやら必ず水は湯冷まししか飲まなかったり、コーヒーや紅茶の代用品になるものを探していたりと戦争を意識していたなと思った。
それに、極めつけは兵士たちの中から農家出身のものを集めて、なにもない郊外に畑をつくり、ハーブやら食料を自活できる永久駐屯地なるものを作ろうと言って、自らも開墾を行っていたことも大きい。
鶏だって飼っていたしな。あのバークマンのやる気は何なのだろうか?現地人と交流して食べれる野草分布図なども作成していたし、ダキア軍に内緒で勝手に井戸を掘ったり、野戦陣地や塹壕を構築したりと派手にいろんなことをして、各所に怒られるが茶目っ気なのかあまりにもあまりに過ぎて毒気を抜かれて呆気にとられるからかなのか許されていたし、その集まったものを研究成果と称した資料をつくり、それをモチーフに怪文書を書いて中央参謀本部に送れと無茶言ってくるし何なんだろうなあの人。
二度とバークマンとは直接の上司部下の関係は嫌だな。まぁ、近衛軍団には所属にならないだろうし、まぁいいかなどと思っていた矢先に軍大学への推薦ですべての勲章をつけていけと言われて渋々付けていくことになった。
そんなことを思い出すぐらいには、軍大学の教室の中で浮き倒していた。周りを見るとほとんどが勲章や微章などをこんなにジャラジャラつけてる存在はいない。勲章や徽章を誇る自慢する系の痛いやつに見えてるんじゃないのか?と恥ずかしくなった。
そして、なにより軍学校ではダキアでの世界初の師団規模による空挺降下作戦や狂ってるようなバークマンの司令部突撃戦法による古き良き時代のまるで戦列歩兵を率いる先頭に立つ指揮官のような勇猛果敢な戦いぶりというプロパガンダのことを授業に取り入れており、各々が思う國體の永久保持を為せる国家百年の計などというフレーズで文をかけとか無茶苦茶を言われている。
更に学生たちの間でもダキア軍を近代化させるにはなどほぼダキア騒動へのトークが占めており、学生や講師に振られてこちらが答えるという一人負担システムの確立が起きていた。これがイノベーションというやつか!?
そして塹壕で寝る訓練の際には汚物用の塹壕穴を掘り、お互いに足に異変がないか定期的に調べるバディを組み、ベビーパウダーを塗り、ときには医療術式を使って、足に血の気を戻すやり方をしていると教官にそれは何だ?と聞かれて塹壕足の予防ですという答えを言うと論文にするようにとむちゃを言われる。
そしてたまに見る新聞では世界中が赤狩りがブームであり、特に連合王国ではオックスブリッジ大学を出た7人の高官がスパイ疑惑で罷免されて軍内にも赤狩りが進んでいるらしく、更には合衆国ではマッケンローなる議員が各地で赤狩り演説を行い人気を博し、合州国民主党が選挙で大敗し、実際にルーシーのスパイと見られるホワイト一派が捜査されると世論は大加熱を起こしているらしく、ルーシーからの防波堤として反共資本家は秋津洲や帝国にありあまる投資を行い、資本家たちの主導で反共経済同盟構想が巻き起こっていた。
同時にバークマンから送られてきた手紙ではルーシー内において、粛清されたテロスキーがまだ生きていて、軍の粛清されたはずのトゥハチェフスキーと共にロマノフスキー王朝復権のために活動をしていると噂されて、内部では帝政復権派なる革命活動が見られるとか。
そして、帝政復権派についての活用案をまとめろとか、テロスキーやトゥハチェフスキーが生きているかわかるかとか、ルーシーは土台が腐った納屋だとか、帝国内で起こっているイェーガーなる組織が赤を物理的に狩ってるのをすばらしいといっていたりだとかエキセントリックすぎる言動に見ないことにした。
イェーガーとかなんだよ。イェーガーなんて名前帝国ならそこら辺にいくらだっているぞ。俺は赤じゃないしそれに本当にいるのかわからないイェーガーを支持するイェーガー派なる反共団体もあるが、知ったことか。というか復権派やイェーガー派ってなんだよ。これから人類の8割をお遊びサークルと青年将校が皆殺しにするのか?そんなことは無理だろうがせいぜい、アンソンがスーパーアンソンになったり、メアリー・スーがスーパーになったりするぐらいだろ。個人にしか恩寵や奇跡を与えれない個人偏重主義の存在Xが子育て以外は何でもできる男やネタバレ地ならし男なんか作れるわけ無いだろう。
親子二代と兄弟で築いた神すら超えた狂気の行為だぞ。もし、エレン・イェーガーみたいなのが目の前に現れたら覚悟を決めたが即、合衆国に逃げるわ。頭自由の自由に縛り付けられた自由の操り磔人形なんか相手にできないわ。個人対世界で戦争するやつとか無理です。
そして、そんな辛いが割と楽な軍大学は卒業できた。1921年には、怪文書を書いている記憶だけしかないが仕方がないよな。そして、少佐としてイスパニア共同体大使館に送られることになる。
大使館専門の武官か何かか俺は?と思いながらも楽な大使館職務に思いを馳せていた。このまま、大使館付き武官で過ごせば大戦に負けたとしても大したことはないよな。1922年の夏はイスパニアで過ごすことになり、軍大学の多くは中央か何故かダキア志願するものが多いのであった。それとは対象的にイスパニアに行く俺は将来を期待されてないのだろう。
「はぁ、楽だな。」
すっかりと楽になった肩の荷を下ろそうとするがコレクリウスのあの顔が脳裏に再びよぎる。そして、空のもとに俺は硬いビスケットをかじると何にせよ、まだ行くまでは時期があるので、ならばレルゲン探そうと思った。同じ少佐なのだからそこそこ話も合うだろう。出世をするレルゲンにあっても損はない。
ここまで暮らしているのだからそれ相応の恩返しをしなくてはならない。手に持ったビスケットを砕くと鳥たちに撒いた。そして、レルゲンに話をすることにした。バークマンに電話をかけた。
「忙しいところを申し訳ありません。ジシュカ少佐です。昇格の報告と本題としましては中央参謀本部についてどんな場所か気になったものでご助力頂きたく。」
『中央を見てみたいか。あんなヤニ臭く飯がまずい場所に行きたいとは珍しいことをいう。なに、名目はダキア処分についての中間報告と言っておけばいい。中央には言っておくから1時間後に向かえ。しょうもないことを聞かれたら御公儀の秘密や軍機ですとか言っておけ。アイツらがよく使って現場を喜ばせる魔法の言葉だ。なら、多少こちらが使っても構わないだろう?なぁ、ジシュカ少佐。何にせよダキアを見た貴官にはつまらないだろう場所だ。硬直した天才や秀才しかいない。やつは食堂と同じくらい硬い仕上がりだ。だから存分に暴れるといい。困ったらわたしの名前を出せ。わかったな。』
許可や名目を貰ったところで、辻タクシーに乗った。
「お客さん。軍人だね。いや、スカッとしたね。あんな共産主義者を倒すなんてさ。アイツらは人間じゃないって書いてあった。それに帝国に逃げてきたロマノフスキー貴族たちや市民もみんな、奴らがどれだけ野蛮で人から物を奪うのが趣味なのかも書いてた。あんな奴ら、地上には必要ありませんよ。ねぇ、軍人さん。」
その後も運転手の饒舌なトークは続き、次に車から降りると不満が溜まってそうなので多めにチップを渡す。そして、中央参謀本部に名前を伝えるとあっさりと入れた。
その中は確かに質実剛健といった感じで飾り気が少なく無機質を少しだけ感じるものだった。
そして、レルゲンを探すために色々と歩き回ることに決めたのだった。
ページ上へ戻る