| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

偽マフティーとなってしまった。

作者:連邦士官
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

外伝 SEED


 こうして大地に立っている。ただの大地ではない。宇宙の大地、プラントの造られた大地というものに立っている。宇宙に浮かぶ砂時計、それは大きな砂時計、砂の代わりに人々を乗せる鉄のゆりかご。ゆりかごの中の人々は未だに子供のようにナチュラルに対する優越を訴えるが、能力が低くコーディネーターであることしか自慢がなく、自己肯定感も低い人々が支持をしているだけだ。コーディネーター神話を信じているだけだ。国家の建設には国家神話と思想が必要だが、それらのために造られた物語、ナラティブをヒストリーとストーリーだとそのまま信じてしまった。いや、信じたかっただけなんだ。

 ただ人より少し弱い人間はナチュラルやコーディネーターにも存在する。彼らは大多数である弱者だ。弱者は強者に憧れて自分の下に階級を作りたがる。コーディネーターであればナチュラル。ナチュラルであれば遺伝子をいじることでしか強者になれないコーディネーター。互いに似たもの同志であるから同族嫌悪で殺し合う。信じるものや権威もなく、力もなければ思いも無いものだから異端認定で寛容さがなく殺し合うのだ。

 ナラティブは必要だが、ナラティブを信じすぎると狂信的になる。このコズミック・イラは宗教という基盤やナラティブ、国家という概念などがバラバラになり、どっちが先かは分からないがカオスとアノミーが産んだ社会の動きが、この世界から宗教や国家、民族というナラティブを失わさせて、代わりに台頭してきた科学から派生されたナチュラルかコーディネーターの人種の軛が、レイシズムを加速させた。その代わりに肌の色や宗教、民族のカテゴライズからくるものは減った。ナチュラルとコーディネーターが人種のカテゴリーになり、レイシズムがそこに集約されたに過ぎないのだろうが、ある意味では進歩だったのかもしれない。縛りは次の局地に行ったのだろう。しかし、ナチュラルもコーディネーターも忘れている。

 ナチュラルの基礎能力を上げるだけなのがコーディネーターであって、コーディネーターはナチュラルの元々の能力範疇に収まっているに過ぎないということを。小さい時にコーディネーターに劣等感を抱いたあのアズラエルに、商人として勝てるコーディネーターはいたか?コーディネーターは忘れている、自分も人間だということを。ナチュラルも忘れている、コーディネーターもまた人間だということを。お互いに忘れている。所詮、人間は逆立ちしても神様になれないし、なれたところで神様になる必要はない。人間はニンゲンだ。ナチュラルだろうがコーディネーターだろうが、人であることには変わりがない。宇宙空間の冷たさで忘れるのかもしれないが、まだ開発できる広大な宇宙は広がっている。

 フロンティアは有限だが無限にある。怒りと悲しみの混ざったナチュラルとコーディネーターの対立に使う感情のリソースなどを新たな星を目指すのに使えば、人々はナチュラルもコーディネーターもまた星だと気付くはずだ。コズミック・イラには人間の土地が、人間の大地が足りないのかもしれない。精神の風が止まり、地は枯れて海は腐り始めたのかもしれないが、まだ間に合うはずだ。なぜなら同じ人類だからだ。人なのだ。なら、手を取り合えるはずだ。

 こうして宇宙空間にあって体と精神は土から離れたように見えているだけで、見せかけでしかない。人は地球がなくては生きてはいけない。あの蒼きコバルトの星は、人類種の母なる大地であるのだ。この冷たい宇宙空間の闇に輝く蒼はあまりにも鮮烈に見えて、コーディネーターは劣等感を感じてナチュラルを叩くのだろう。そしてナチュラルは地の呪縛から放たれたコーディネーターを見て羨ましいとなる。しかし、誰も望んでいない。皆辛いのだ。辛い現実を紛らわせるために過激なナラティブに走った、世界全体がおかしくなった。それだけの話かもしれない。

 傷を庇うために痛み止めを使ったら、痛み止めに依存しだしたと言えば正しいのかもしれない。コーディネーターは別にナチュラルと変わらない。血が出て死にもする、病気にだってなる。なる確率がナチュラルよりひどいだけだが、結局のところコーディネーター純血主義は遺伝子の交換で失敗するだろう。ハリー・ポッターの純血主義と同じで、ナチュラル側からコーディネーターの供給がなくなれば終わるのだ。コーディネーターが作られるのはナチュラル自身がナチュラルの可能性を信じれないのと、コーディネーターがナチュラルの可能性を信じれないからだ。どんなコーディネーターも最初はナチュラルから生まれているんだ。木の股から生まれたわけではないのだ。

 美しい星の瞬きも人が願って欲しがればやがては手に入るこの時代になっても、人々の意識は改革されなかったのだろう。しかし、少しずつではあるが良くなっている部分もある。人々には手がある、その手は取り合えるのだ、ナチュラルもコーディネーターも。…だけどバリー・ホー、お前は別枠だ。キャプテンG.G、お前も許さないからな。…ともかく、この地に満ちた憎悪は裏を返せば嫉妬や羨望だろうから、それらをぶっ壊せば良い。ナチュラルだってやればできるのを見せれば、彼らも認めざる得ない。ラウ・ル・クルーゼやムウ・ラ・フラガが居たじゃないか。彼らのような特殊な空間把握能力が見せる戦い方を多くの人が見れば、ナチュラルも捨てたもんじゃないとわかるだろう。

 コーディネーターも血が流れた人間だと分かれば無意味な戦いを止めるだろう。知らないからお互いに恐怖する。コーディネーターもナチュラルも知り合えば人間だとわかる。プラントに閉じ込められたがゆえに、皮肉にもあまりコーディネーターと会わなかったからコーディネーターへの過度な恐怖を煽り、ナチュラルに会わなかったから、コーディネーターは過度な優越感を感じているに過ぎない。個の優秀さは集団の優秀さの証明にはならないのだ。コーディネーターはチームワークがない、我が強すぎる。ナチュラルが集団戦闘と一撃離脱戦法をやれば、突出して個人で戦うしか能がないザフトは瞬く間に撃墜されてしまうだろう。背中に目をつけれるような人員は少ないし、背中に目はつかないのだ。かくいう俺も背中に目はつかないのだ。一般人なのだから仕方がない。


 狂ったコズミック・イラにあって俺はと言えば、気がついて意識が俺になった時には、ザフトの独立の理想に憧れて乗っかって亡命してきた落ちこぼれのナチュラルパイロットとして、戦車部隊に配置されていた。

 「おい、ナチュラル!戦車を動かしてみろよ。」
 若いコーディネーター、ミゲルはそう言う。ナチュラルとは言ってくるが他意はない。アイツは割と単純だ。ジンはこのモーターカノンを持つ戦車に勝てるかはわからないだろうに、俺は「あぁ。ミゲル、そろそろロベルト・レーとよんでほしいがね。」と答えて模擬マシーンで開始する。

 弾薬にあるものを混ぜておく、これがあるとジンはどうなるのだろう。やらないといけないことがあるからな。戦車は起動する、距離は十分にある。地上戦ではバクゥでもない限りは戦車で負けることはないだろう。

 「戦車ぐらいじゃなぁ!一発あれば十分なんだよ!」
相手のジンが退避行動も取らずに棒立ちで戦車に向かって76mm重突撃機銃を撃つ。あえて狙わない面攻撃なのだろう。しかし、動き回っていれば……。

「当たりはしないな。ここだ!」
 戦車のブレーキとアクセルを操り、耳の奥が、鼓膜が膨張する感覚を感じ、この瞬間だ、と一気にドリフトをしながらも砲塔を回転させて、ジンに主砲を向けて撃つ。ジンは当然避ける。一発撃ったならば、次弾装填の時間がかかる。一気にジンは重斬刀を手にやってくる。俺はあえて前に進むように指示を出し、キューポラから身を乗り出して携行式対MSミサイルを構える。

 巨人に対してこんなもので立ち向かう、まるでダビデにでもなった気分ではあるが、なんで俺は模擬戦でこんな事をしてるのだろうか?ジオニックフロントか?あのアムロを1分もあれば俺は無傷で倒せたが、何故本当のMS戦闘を俺がしてるんだろうか?迫るジンを十二分に引き付けてから撃つふりをする。

 時間は十二分に稼いだ。金属音と装填される音が聞こえる、ジンが回避行動を取るが……。

 「捉えた!」
 明後日の方向に携行式対MSミサイルを撃つ、同時に再装填された主砲を撃つ。

 『何処を狙っている!なっ!?』
 主砲を避けようとするが、携行式対MSミサイルが避けようとした地点に迫るのを感じたのだろう。一瞬の迷いは戦場では死につながる。主砲もミサイルも避けきれずに当たる。ブザーが鳴る。こちらの勝利だ、戦車も侮れはしない。

 「待ち伏せをされたらどんな兵器も弱いもんな。」
 ゲーマーとしての二段攻撃だったが、このMSの経験が少ない時代では筐体やゲームで鍛え上げた腕には勝てないのだろう。それにしても……。

 「機体が重すぎる。もっと反応が良くないと、何だこれは?」
 ともかくとしてこの模擬マシーンは重すぎる。反応の数値がトリプルスコアで書いてある。が、しかし、どちらにせよ数を揃えられていないのがザフトだ。こんな模擬マシーンでしか経験を積めない。ラウ・ル・クルーゼが居ないと、なにかのバタフライ・エフェクトでメビウスやメビウス・ゼロが強くなっていたら死ぬかもしれない。一撃離脱戦法で来られてトップスピードで叩き落とすやり方をされたら、MSの推進剤ではかなりきついだろう。

 俺は戦車部隊だから関係はないが……。




 「私がMSパイロットにですか?」
 上官に呼ばれて部屋に入ると、衝撃的な転属を言われた。

 「あぁ、君はとんでもない反応速度などがある。同時にナチュラルへの広告塔にもなる。私は別に使えるならコーディネーターでもナチュラルでも関係はないと思っているのさ。贅沢は言えない、これも戦争さ。上層部はプロパガンダがお好きだ。君の活躍がナチュラルに与えるダメージを考え給えよ。そして、簡単な話だろう。我らがザフトは正規軍の訓練を受けた存在が少ない。その中で大尉としてやり方を知ってる君は重要なのさ。あと、若い跳ねっ返りは全部実力で払えるだろう。キミならできる。出来なかったら出来なかったでいい。上からのご意向だよ。なに、ミゲルとハイネをつけるから心配することはない。」
 そんな事を言われても知らんがな。なんでパイロットにならないといけないんだ? MSの扱い方なんか知らんぞ。それに同じ声に挟まれるとか何なんだよ。ミゲル! ハイネ! とか叫ぶ羽目になりそうだな。ニコル! もよく聞くがラスティは存在ごとなくなってないか?ラスティって一体?出るたびに顔が良くなっていってるのは知ってるが……。

 「とは言え、どうすれば良いんですか?」
 これを聞いておかないと駄目だよな。

 「別働隊の隊長として月の部隊に対する牽制をしてくれ、近々戦争になる。わかってるよな、俺もお前もそうなってるからこうなったからな。」
 存外としんみりするが何で戦う羽目に?確か、コイツと俺はコペルニクスの悲劇に反対したから殺されそうになってプラントに亡命したんだったよな、日記によると。スナック感覚虐殺が多発するこんな世界だ、全身宇宙世紀まみれになってもこの世界のほうが業が多そう。というかブルーコスモスって結局なんだよ、どうせアズラエル派じゃなくてジブリール派が勝手にやったんだろ?変な口紅をつけているし違いないよな。

 「あぁ、しかし、月から核が持ち出されてるとはな。」
 本当に何であんなに…。

 「まて、その話は本当か?それが本当なら……。」
 口を滑らせてしまった。そこから何時間か問い詰められたが誤魔化せたと思う。ハルバートン派から提供されたと主張し、ハルバートンもブルーコスモスを嫌っている、また派閥争いだと言ったら納得してくれたと思うが。




 「えっ?」
 俺に任されたのは……モラシムを司令官とした独立艦隊とともに核兵器を積んだブルーコスモス艦の排除、並びに証拠の確保をしろと書かれたプラント最高評議会の命令書がそこにはあった。更に、出来るだけ糾弾できる手筈は整ったとハルバートンに伝えろとまである。ハルバートンの連絡先なんか知らないけど。どうなるのだろうか?













 あれから数ヶ月が矢の様に過ぎた。
 『知れば誰だって君のようにやりたいと思うだろう!!君は厄介なやつだよロベルト!かき乱すだけかき乱して!そうやって傍観者として私を止めるのか!』
 今すぐ帰りたいが……。

 「ラウ・ル・クルーゼ、君は何もしてないだろう。この世は狂ってるかもしれないが、プラントへの核攻撃も、ニュートロンジャマーも防げた。それはお互いに良心があったからだ。もう終わりにしよう。今頃、月とプラントの中間地点でハルバートンとジュール議員が調印をしている!戦う意味が何処にある?」
 ラウ・ル・クルーゼ、お前も止めるのを手伝ってくれただろ。声が裏切りそうな髪型が軟弱ラインハルトみたいなワカメヘアーの陰謀論プラントおじさんと一緒に。

 『それで終えられるわけがないだろう!戦う意味は私が生きているからだ!光があったら闇もできる!それは誰にも止められぬさ、終わらぬさ!戦争で流れた血の数は数え切れぬさ!今頃その調印場所はジェネシスで焼かれている!お前が頑張りすぎた結果だよロベルト!今更、ハイやめますと納得するわけもない!サトーらがやる筈さ、ジブリールも向かっている!これは人類の愚かしさだよ!止める事ができるのか!』
 何してくれてんだお前!初期の協力は何だったんだよこのエセ仮面!ふざけんなよ!

 「お前をここで止めてからそうしてやるさ!ビットの数が減ってきたが、おしゃべりはまだするのか!ラウ・ル・クルーゼ!」
 何故来ない!キラ・ヤマト!裏切りヅラ!


 ビームのネオンの中で踊り続ける。俺たちはどこ迄も不自由で不器用な世界で、今が一番の“自由”を味わっているのかも知れなかった。何でこんな目に合うんだよ!!

 
  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧