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魔王の友を持つ魔王

作者:千夜
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§72 これだから陽の者は……

 
前書き
修正ようやっと終わりました。
なんかダヴィド君ダヴィデになってる所多すぎ問題(白目
すまんかった……
そして原作読んで気付く衝撃の事実。ダヴィド君再登場してたんかお前…!!(今更
いや最初書いたとき(数年前)再登場するとは思ってなかったんですよ……(笑
 

 
「お前もそんなことあるんだな……」

 ドニに斬られて権能が復活したのもつかの間の話。時間経過で封印が復活してしまい子供化した黎斗。アパートへ帰る道中で彼と情報共有をした護堂の第一声がコレである。キレていいだろうか? 人をなんだと思っているのだか。

「いやだってお前……今まで窮地らしい窮地もなく、なんだかんだ飄々とここまできてただろ?」

 だからそんな厄介なことになってるとは思わなかったんだよ、と続けた護堂。なんだそれ評価が高すぎる。他人を評価できるもの……それ即ち陽の者。自虐とネタしか出来ぬ陰キャ(じぶん)の遥か高みに位置するもの。

「くっ……イケメンで運動出来てモテて強いとか化け物かよ。せめて性格くらいは悪くあれよ!!僕が惨めだろ!!」

「何言ってんだおまえ」

「貴方卑屈すぎない???」

「前半は兎も角、お前が強いと言っても皮肉か謙遜にしか感じないぞ」

 半眼の護堂とエリカとリリアナ。

「解せぬ」

「そこは解せよ」

 呆れ顔のイケメンが腹立たしい。顔にパイ投げつけてやろうか。残念ながら投げつけたところでパイは届かないのだけれど。呪力がみそっかすで子供状態なのが恨めしい。

「そういえばドニのやつに封印斬ってもらったんだろ? なんで封印復活してるんだ」

「僕が知りたい」

 少しずつ封印が復活してきている感覚があった。ということは封印の権能が再生したということだろうか。どういうことだ。

「権能切れないとか……所詮この程度か」

 ドニには感謝しかないが、それはそれこれはこれだ。理不尽の権化がカンピオーネなら権能くらい斬っていただきたい。剣の王の名が泣くぞ。

「じゃあお前出来るのかよ」

 テンポ良い護堂の返しにぐうの音も出ない。

「ごめんなさい調子に乗りました。そうだよね! 剣で斬られる程度の能力だったら権能なんて呼べないもんね!」

「うわ……」

 即座に意見を翻したのが予想外だったのか、護堂の顔が引き攣った。

「お茶持ってきたよー。……れーとさん、情けない真似やめない?」

 来客用のお茶を出しに来てくれた恵那が微妙な顔で追撃。エリカとリリアナも困り顔なのが申し訳ない。

「てゆーかさ。もしかしてカグヅチの権能使えば焼き切れたんじゃなかろうか」

 分断する権能だ。ワンチャンどころか普通に行けたのではないだろうか。しかも自前の権能なので封印が再生始めたらまた分断すれば良い、というか再生という概念ごとぶった切ればいいではないか。

「試して無かったのかよ!!!!!! お前は馬鹿か!!!」

「ホントだよ!!!!」

 護堂と二人合わせて叫ぶ。まるでコント。

「あなた達仲良いわねぇ」

「こうも五月蠅いと日常に戻ってきた気がしますねぇ」

 呆れたエリカに同調するかのように。ベッド脇の籠の中で、迷惑そうな顔のキツネが毛づくろいをしていた。





「で、重要な話って?」

 お茶を飲んで一息ついて。真面目な顔をした三人と向き合う。

「天之逆鉾って知ってるか?」

「ゲームで出てくるやつ……じゃないよね。聞いたことあったかなぁ……」

 アニメやマンガならいざ知らず。日常で聞くことなどまずない単語だ。聞いたとすれば、幽世にいた時。

「んー……ごめんわかんない」

「……いや、大丈夫だ」

 苦い顔をする護堂と「まぁ知ってたら貴方が持ってる筈だものね」なんて諦め顔をするエリカ達。こちらとしてはさっぱりだ。

「何かあったの?」

 聞きたくないが聞いておかないと不味いことになりそうな、そんな予感。

「天之逆鉾っていうヤバい呪具がアレクに奪われた」

 とびきり深刻そうな表情で護堂が事態を教えてくれる。

「……それってヤバいんじゃないの?」

「あぁ。滅茶苦茶ヤバい」

「なんてこった、ヤバいのか……」

「……あなた達、その会話聞いてるこっちも馬鹿になりそうだから辞めてくれない?」

「「ごめんなさい」」

 流石にふざけすぎた。周りの視線が痛い。しかし適当に言ったのに瞬時に理解してノってくる辺りやっぱりコミュ力高いなこいつ、などと思っていたらそれがバレたのかエリカの視線が冷え冷えだ。気を取り直して天之逆鉾の騒動について改めて聞く。だがしかし、須佐之男命から聞いた記憶はやっぱり無い。

「でもおかしくないか? 天之逆鉾を護れという指令が古老の方々から来てるなら、黎斗が何故知らない?」

 実は黙っているだけなのでは?と懐疑的な目を向けてくるリリアナ。

「いやそう言われても……知らんもんは知らんとしか……」

「黎斗は腹芸が出来るタイプではないわリリィ、おそらく真実よ」

 溜息をつくエリカ。なんだか申し訳ございません。

「褒められてるんだか貶されてるんだかわからねぇ……」

「黎斗さんが囮なのではないでしょうか。天之逆鉾を保護しておくなら、一番安全なのはおそらく黎斗さんです。奪おうとする相手もそれは恐らく織り込み済みの筈」

 「その可能性が高いでしょうね。普通は黎斗が持っていると判断するわ。だから、逆に黎斗に持たせないことで奪われる可能性を減らし、奪いにくる敵を返り討ちにする。そんな所かしらね」

 「なるほど。一理ある」

 祐理の発言をエリカが補強し、リリアナが納得する。

「なんだか知らんが許された……のかな? でも盗んだ本人が分かっているなら返してもらえばいいのでは?」

 至極当然の疑問を述べた筈なのに、返ってきたのは呆れた視線とため息と小言。

「……相手はカンピオーネだぞ? そんな常識が通用するわけないだろう」

「待て!! 勝手に俺達を巻き込むな!!」

 心外だとばかりに叫ぶ護堂を見て納得。法で縛れず、己が心の儘に振る舞う輩はこれだから……と自分を棚に上げつつ愚痴る。己も若干その気がある気がするのであまり強くは言えないのだけれど。でもせめて良心に従えと言いたい。従ったうえで強奪なのか。そうだとしたら世も末だ。

「そうだね……護堂みたいなやつだもんなぁ……じゃあ返さないか……」

 力尽くで返してもらうか、とも思うがその結果想像されるのは怪獣大決戦。こちらが被害を出したくない、とバレているだろうし、戦場を都市部にされたら勝ち目が無い。相手が変な権能使って被害が出たらそれまでだ。そしてカンピオーネは勝利の為なら手段を選ばない。つまり、絶対にやる。そしてこっちが手を出さなければ~だのなんだの言いだすのだ。間違いない。

「護堂のお陰でシミュレーション出来たわ。逆鉾奪還無理だ」

 よしんば奪い返せたとしても、また奪いに来るだろう。イタチごっこだ。再強奪を防ぐためには殺すしかないだろう。アレクは死なない限りなんどでもやろうとする。間違いなく。そして黎斗は、そのために殺しをするほど人間辞めてはいない。

「そうよねぇ……無理よねぇ……」

「不本意だ!!」

 護堂先生が喚いていらっしゃるが今までの自分の所業を是非とも振り返っていただきたい。

「れーとさん、自分も同類なの忘れてない……?」

「いや僕は大量破壊もしないし盗みもしないし……」

「引きこもってますからね」

 破壊とかしない代わりに人間として終わってますよ。と宣うエル。

「あの……もうちょっとなんというか……手心というか……」

 キツネさまァアアアア、と言いかけた所で鳩が一匹。こんこんこん、と窓を叩く。

----来た

「エル、通訳お願い。申し訳ないけど、今の僕では役に立たないので色んなゴタゴタは護堂に任せた。僕は、ちょっと力を取り戻してくるわ」

 立ち上がって、壁に掛けてある道具を身に着ける。大したものはかかっていないけれど、無いよりマシだ。

「いいけどお前、勝算はあるのか? 俺の方は後回しでも問題ないし。お前が復活するなら、そっちの方が勝ちの目が増えて良い」

 必要ならば手を貸すぞ、と言わんばかりの護堂。頼もしいが、ランスロット達がいつ来るかわからないのがネックすぎる。最悪同時に襲来しても、なんら不思議ではない。裏でつながっていない保証がないのだから。

「へーきへーき……とは言わないけれど。ランランがこっちに来て、アレクもこっちに来るならそっちをなんとかしてほしいかなぁ。エル、恵那。ダヴィドに連絡して護堂と協力ヨロ」

 仮にランスロットが来るならばグィネヴィアも来るだろう。先ほどの会話からしてアレクの参戦も確定だろう。そうなれば大惨事は免れない。力を割くべきはこちらだ。

「ダヴィド……って貴方、彼と知り合いなの!?」

 まさかの名前に驚くエリカ。その様子に黎斗もちょっぴり驚く。彼はエリカの知り合いだったのか。
知り合いだからカンピオーネの偉大さを知っていたのか。

「それで拗らせちゃったのか……護堂……罪な男……」

 護堂に性癖を狂わされてしまったのか。男も攻略するとは恐ろしいやつだ、などと苦笑して。

「おい勝手に胡乱な事言い始めるなお前!!」

 慌てて文句を言い始めた護堂はスルーして。

「待ってれーとさん、恵那もそっちに」

 一緒に行くよ、と続けようとした恵那を静止する。

「気持ちは嬉しいけど、僕一人で十分……というか一人でしか行けないんだ。権能で転移するから」

「はぁ!?」

 義母(パンドラ)も性格が悪い。こんな便利な権能もあったなら一言教えてくれればいいのに、と苦笑して。さっき目覚めた権能を発動。大体の場所を教えてもらえば、それで十分。瞳を閉じて、その周囲を見る(・・)

「……見ぃーつけた。じゃ、留守はよろしくね」

 その言葉を最後に、景色が歪む。

「僕は見つけた。故に存在を肯定する」

 怠惰の魔王、ベルフェゴール。世界中を巡り巡って存在しないものを証明した悪魔。故に、世界の移動も、存在の証明も、お手の物----!!

「と、いう訳で。はいどーーん!!!!」

「ガッーー!!??」

 相手の頭に転移し、剣を叩きこむ。一瞬で剣が砕けるも構うことはない。次の剣を取り出し再び叩き込む。幸いなことに前回と違い相手の身長は数m程度。まだ本調子ではないようだ。間に合った。

「重畳重畳。借りを返しに来たよ。ここで決着をつけようか」

 飛び降りるついでにもう一閃。首を斬り飛ばす。

「貴様ッ……何故、此処にッ……!?」

 いきなり首を切断され、再生するも動揺を隠せない魚神。こちらは一柱の権能しか持たない身。なれど、二度目だ。油断などない。

「----今度は、ここで仕留める」

 ワイヤーが宙を舞い、魚人の身体を斬り刻む。怒りに顔を歪める神と、相対するのは嗤う魔王。 
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