フルスクラッチプラモデルは高価
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第一章
フルスクラッチプラモデルは高価
サラリーマンの滝川福嗣、一八〇以上の背の太った身体を持ち丸眼鏡と鳥の巣の様なパーマをかけた彼の趣味はアニメにゲームに読書それにプラモデルである。
それで会社でもよくそういったもののことを仕事の合間に考えてだ。
話の合う面々と話していた、だが。
その彼にだ、妹夫婦の子供即ち彼から見て甥にあたる落合友孝にある日こんなことを言われたのだった。
「叔父ちゃんプラモデル好きだよね」
「好きだよ」
滝川は甥、あどけない顔で黒髪をショートにしている小学二年の彼に答えた。
「時間があれば作ってるよ」
「そうだよね」
「うん、それがどうしたのかな」
「作り方教えて」
こう叔父に言うのだった。
「塗ったり凄く上手に作るやり方をね」
「ああ、それじゃあね」
滝川は甥に笑顔で応えた。
「僕でよかったわ」
「宜しくね」
こうしてだった。
滝川は友孝にプラモデルを教える様になった、甥はもの覚えがよくしかも手先が器用なのですぐに上達した、しかもだ。
お互いに実家暮らしなので教える機会は多く余計に上達が早かった、だが彼が高校生になってだった。
滝川も結婚して独立してからだ、自分並に背が高くなっている甥に真顔で言われた。
「叔父さん、プラモデルだけれど」
「今も作ってるんだったね」
「うん」
子供の頃の面影が残る顔での返事だった。
「そうだけれど」
「そうだけれどって」
「あのね」
一呼吸置いての返事だった。
「僕今度フルスクラッチ作るけれど」
「えっ、凄いね」
甥の言葉にだ、滝川は驚いて言った。
「それはまた」
「部活でね」
「ああ、友孝君八条学園の」
「プラモ部でね」
「それでなんだ」
「今度部活で作るけれど」
「やるね、フルスクラッチは」
滝川は今の自分の家に来て話す甥に笑顔を向けてこうも言った。
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