色々と間違ってる異世界サムライ
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第19話:エクスプロージョン!
ノノ・メイタperspective
……さて、この人を何処へ避難させよう。
とは言ってみたものの……とてもじゃないが避難場所が在る様には視えない!
……寧ろ……地獄だ……無慈悲な……地獄!
……これが戦い……これが敗北か!?
勇者セイン様が率いる白ノ牙は……地獄を阻止する為に……
「……力が……力が欲しいいぃーーーーー!」
月鍔ギンコperspective
宙に浮かべて操っていた巨大な手の様なからくりがからくり甲冑と再び合体した……なるほどな、これは構えだ!その一撃に全てを賭けると言った感じなのだろう!
ならばと思い某も本差を鞘に納める。すると、でるべんぶろと呼ばれるからくり甲冑が不思議そうに某を視ている様に見えた。
「ん?……降伏か?」
どうやら、でるべんぶろをどこか遠くで操っている者にとって、居合と言うものが物珍しい様で、刀を鞘に納めた事で少し油断しているご様子。
しかし、
「生憎……某に降伏と言う選択肢はございませぬ」
この合戦の本当の黒幕の混乱は更に増した様です。この世界には居合と言うものは無い様ですな。刀を納めた時点で降伏を意味すると言う訳ですか。
……本来なら、これは意表を突くのに効果的かもしれませんが、肝心の某が本当の敵の居場所を知らぬのが惜しいと言えま―――
「駄目だツキツバぁー!そいつに剣での攻撃は通用しない!」
おー!神仏の助け!
「セツナ殿!よく来てくださった!頼みがあり申す!」
と……思ったのですが、肝心のセツナ殿が某の話も聞かずにからくり甲冑に突進していきました。
「ちょっと待たれよ!そのからくり甲冑に攻撃は無意味ですぞ!戻られよ!」
ですが、某のその声も聞いてくれませんでした。
「解っている!こいつにお前の攻撃が通用しないんだろ!」
「ですから!セツナ殿に頼みがあり申す!」
「だが!私の氷の爪なら!氷属性として―――」
「そーではござらぁーん!」
……駄目ですな……
恐らく、黒幕は間違いなく今のセツナ殿を嘲笑っておるであろう……
……と、思ったのですが、どうやらフラウ殿の言い分は違った様です。
「ツキツバ様は、あの狼女の攻撃もあいつには通用しないと思ってません?」
「ですから!セツナ殿にはあの甲冑を他の場所で操ってる」
「そうじゃないんです!アレは……ただ単に物理攻撃が通用しないだけで、魔法は普通に通用するんです」
は?ま、魔法?
「えーと……つまり妖術で攻撃すれば……と言う事ですかな?」
んー……流石異世界!某はまだまだこの世界の事を知らぬ様です。
セツナperspective
何だこのバカデカい手は!?あれで殴られたら、どんなにレベル差が大きくてもめっちゃ痛いわ!
正直に言って食らいたくない!
でも、私達の要であるツキツバではデルベンブロには絶対に倒せない!しかも、私達の中に魔法を使える人が1人もいない!
ツキツバが既にレベル300だった事もあってか、圧倒的なレベル差に惑わされたが故の盲点!
とは言え、ツキツバのあの性格だと撤退と言う選択肢は無い!あと、この町の被害状況的にも!これで勝利や戦死ではなく撤退や逃走を選んだら、それはもう……戦士じゃない!
なら、頼れるのは私達氷狼族のこの氷の爪!
聖武具の力も加われば……頼むぞ!聖武具よ!
……しかし……
デルベンブロの方もツキツバのしぶとさに追い詰められているのか、「この攻撃に全てを賭ける!」的な態度でツキツバの奴の方を視る。
抜かせるか!
運良く私の氷の爪が奴の左手に刺さった!これで―――
……あれ?……今、こいつの左手がスポッと抜けなかった?
と言うより、デルベンブロの肘から先は杭のような形になっていて、左手の形をした別のモンスターにぶっ刺して、固定していた様だった。
だ……騙されたぁーーーーー!
しかも、その隙を衝かれてデルベンブロの奴が俺の横をすり抜けやがった!
ヤバい!
「フィストショックぅー!」
巨大な右手……いや、右手に化けたモンスターを取り付けた状態のままツキツバをぶん殴る魂胆の様だ。しかも、あの様子だとかなりの渾身の一撃の様だぞ……不味い!
しかし、ツキツバも然る者!鞘から剣を抜きながらその右手に化けたモンスターを斬った。
……ツキツバの斬撃とデルベンブロの渾身パンチの激突は……双方が吹き飛ばされる形となり、双方とも壁に激突してめり込んだ。
……不味いぞ……この場合だと、物理攻撃無効スキルを持つデルベンブロの方がダメージが少ない!
糞!やはり私がもっと早くにこの事に気付いていたら……と言うか、この紛らわしい左手型モンスターはいつまで私の爪に刺さっている心算だ!?邪魔なんだよ!
でも……やはり天は私達を見放してはいなかった!
「誰か!誰かマインドアップを持ってる方はいませんか!?」
マインドアップと言えば、魔力を少し回復する薬だ。て事は!?
「ノノ!アンタが担いでいる女性って、魔法使いなの!?」
ノノが私の声に怯え驚きつつ答える。
「え……えぇ……」
「で!そいつはアンタの近くで戦闘をした!?」
「う、うん。僕を襲った魔族を数人爆裂魔法で―――」
「でかした!今日はアンタが神様に見えるわ!」
一方のノノの奴は、私の言い分の意味が解らず困惑していた。
「……どうなってんの?」
月鍔ギンコperspective
本来なら、これは“窮地”と呼ぶべきなのでしょうが……白状すると、某は内心喜んでおりました!怒涛の如く押し寄せる敵兵相手に一騎当千に斬りまくり、そして討たれて死ぬ。それが某の望みであった。
我ながら不謹慎だと思うし、でるべんぶろに襲撃されたこの町を救う事にはなりもうさんが、それでも……某は侍!侍が生き!侍が死ぬべきは!地獄の浮世が相応しい!
「こい!でるべんぶろ!敵大将を討たねば、合戦は終わりませぬぞ!」
でも……某の死に場所はここではない様です。
「離れろ!ツキツバ!」
セツナ殿の声が聞こえたと思うと、
「黒より黒く、闇より暗き漆黒に。我が深紅の金光を望み給う。覚醒の時来たれり、無謬の境界に落ちし理。無業の歪みとなりて、現出せよ!踊れ、踊れ、踊れ!我が力の奔流に臨むは崩壊なり!並ぶものなき崩壊なり!万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段!これこそが究極の攻撃魔法!爆裂魔法!」
「何!?」
某との戦いに夢中になり過ぎたでるべんぶろがセツナ殿の方を向いた時には、でるべんぶろは既に大爆発しておりました。
で、唯一討ち漏らした巨大な手も、
「こら!何時まで私にくっついてるんだ!デルベンブロは吹き飛んだんだ、お前もくたばれ!」
セツナ殿に斬られて粉々に砕け散りました。
「あー……」
某は何と言ったら良いのか……
「やったぁーーーーー!」
「うおーーーーー!」
周りにいた者達は大喜びの様ですが―――
「わああ!やったよツキツバさん!」
「ノノ殿」
「みんなでこの町を取り戻したね!」
ノノ殿が喜びのあまり、某に抱き付いてきました。
「そうですな。我らの勝ち戦です!」
「そう言うお前は珍しく苦戦していたけどな」
「セツナ、一言多い。ツキツバ様がせっかく勝ったんですから」
「やはり爆裂魔法は最高なのです」
ん?何か増えてませんか?
「この者はいったい?」
「ああ、こいつが―――」
セツナ殿の説明を遮り、異様な姿をした女子が自己紹介を始めました。
「ふっふっふ…この邂逅は世界が選択せし運命。私はあなた方のような者達の出現を待ち望んでいた!我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし最強の攻撃魔法・爆裂魔法を操る者!」
「ん?……つまり、先程でるべんぶろを爆破したのは……」
「そう……この人」
後書き
月鍔ギンコ対デルベンブロも今回が最後ですが……
結局、最後はめぐみんの爆裂魔法でごり押しと言う力技になりました。
デルベンブロさんもお疲れ様です。
ま、【「攻略本」を駆使する最強の魔法使い】ではデルベンブロ殿はもっと凄い魔法をガンガン食らいまくっていましたがね(汗)。
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