イベリス
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第百二十五話 品選びその十
「一人でも反対したらな」
「しない、ですか」
「そうも言ったんだよ」
「皆賛成しないとですか」
「そうだよ、こんなこと言ったらな」
それこそとだ、マスターは話した。
「わかるだろ」
「意地悪とか邪魔しようとしてですね」
「わざと反対する奴だってな」
「世の中いますよね」
「あと自分の立場だと都合が悪いからな」
「反対する人もいますね」
「世の中どんなことでも賛成する人と反対する人がいるんだよ」
そうしたものだというのだ。
「だからな」
「皆賛成しないとしないって言うと」
「何も動かなくなるんだよ」
「そうなりますね」
「水道だって堤防だってな」
「何も出来なくて」
「多数の人が賛成していてしてくれって言っていても」
それでもというのだ。
「少数の、最悪我儘とか意地悪で言ってる奴のせいでな」
「皆が困りますね」
「だから全員賛成でないとしないって言ったらな」
政治はというのだ。
「動かないんだよ」
「そうなりますね」
「それをな」
「あの人はですね」
「言ったんだよ、民主主義って違うだろ」
このシステムはというのだ。
「多数決だからな」
「多くの人のことを考えることですね」
「全体のな、だからな」
「一人でも反対するとしないっていのは」
「とんでもない間違いなんだよ」
「政治でも民主主義でもですね」
「何でも反対とかいつも人と逆のことしたいとかな」
そうしたというのだ。
「ひねくれ者とか自分のことしか考えないな」
「そうした人の意見を尊重して」
「皆が困るなんてな」
こうしたことはというのだ。
「今だってあるだろ」
「公園で遊ぶ子供の声が五月蠅いって一人が言って」
咲はネットで聞いた話を思い出して言った。
「それで、ですね」
「公園閉鎖とかなってるだろ」
「除夜の鐘も五月蠅いとか言って」
「こんなことになってるしな」
実際にというのだ。
「一人のおかしな奴の意見なんてな」
「聞いたら駄目ですね」
「それをあの人はな」
「言ったんですね」
「一人でも反対したらしないとか言ってな」
「その時点で間違ってますよね」
「それでこんな人がな」
マスターは苦い顔で言った。
「ずっとな」
「東京の知事さんだったんですね」
「それでだよ」
まさにその為にというのだ。
「酷いことになって今もな」
「変な政治家さん多いですね」
「東京が選挙区の人でもな」
「国会議員でも」
「都内でなくてもな」
東京は都以外にも多くの市がある、行政として考えると非常に巨大な場所であるのだ。このことは江戸からのことだ。
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